※ Dランク任務最終報告

ははは! 遅咲きの初恋とはよく言ったもんだ。 なんだかんだ迷ったけど行ってよかったな。
暗部の長たちの個人的な事情、普通なら絶対に耳に入ってこないぞ? 唯でさえ結束が固そうだし。

トンチンカンな行動か・・・・。 お化けより怖いのは生身の人間、面白いのももちろんそうだ。
生きているからこそ、生き地獄を経験したりするものだし、驚くぐらい謎の失敗も一杯する。
・・・・・全部、今を生きているからだ。 生身の人間は空想上のモノより数段面白い、だろ?





今朝と同じく、任務受付所には海野中忍が座っていた。 迷わず彼に任務報告書を提出する。
アカデミー教員も兼任してるからこそ、きっとこの任務をこの中の誰よりも気にかけているだろう。

「今朝請け負った、Dランク任務、完了しました。」
「お疲れ様です! お帰りなさい!」




アカデミーの怪談の真相は、足音をさせず移動していた忍びを、人かどうか怪しんだ為の誤解。


“肝試し” と銘打った催し物だったからか、多少なりとも恐怖心が見え隠れしていたのでしょう。
何の音もしなかったが今見た人影は本物か? いや、そんな訳がない、きっと肝試しの出し物だ。
そう思い込む事で、“結構真に迫っていて怖かった” との感想に繋がったのだと思われます。


    ※ 生徒たちには調査中話を聞いたので、お化け説をハッキリ否定しておきました。
      後日、改めてアカデミーの先生方から説明してあげた方が宜しいでしょう。


    以上を、Dランク任務 “アカデミーの怪談の真相を解明せよ” の最終報告と致します。





「・・・・・・なるほど、そうか。 まずったなぁ・・・ 来年は足音を立てて巡回しなきゃ。」
「一般人にしてみたら、音もさせず人が出たり入ったり、の方が怖かったみたいですよ?」
「あははは! ですよね? つい、周辺を見回らなきゃ、と思ったら・・・・ ね?」
「アカデミーの先生だって里が誇る中忍なんだから、そんなの当然ですよ。」


真相は単純明快。 アカデミーの怪談に出てくるお化けは生身の人間、里の忍びだったんです。
怖い怖いと思っていると、なんでもオドロオドロしく見えてしまうモノなんですよね。

くすっ! 自分に言わせればこんなのでビビる方がおかしいんですよ。 ・・・・まあ、一般人だし?
催し物が催し物だっただけに、心のどこかで“肝試し”なんだから、というのがあったんでしょうね。




・・・・世間話はこれぐらいでいいな。 確か隊員さんたちは、ストーカーみたいだって言ってた。
これはあくまでも勘なんだけど、今もどこからか見てるんじゃなかろうか。 誰がって・・・・
暗部の長。 ビンゴブック級の忍び、コピー忍者のカカシさん・木遁使いのテンゾウさん、この二人。

普段、腹を空かせた野生の狼でも、今は牧場で迷ってる小羊、接点を探して右往左往だなんて。
他里が恐れる忍びたちが。 彼の前ではどうしてだか謎の行動をしてしまう、臆病な恋をしてる。

かなり前から頑張っているらしいけど成果はいまひとつ。 仕方ない、接点なるものを作ってやろう。
こういうのも、やっぱり生きているからこその楽しみだ。 暗部の長たちに恩を売れるなんてな?

「海野中忍、Dランク任務の報告書とは別に、お話があります。」
「へ?  あ、これ・・・・ とりあえず、任務報酬をお確かめ下さい、三代目からです。」
「どうも! やった! 実は甘栗甘屋の冷やし抹茶、大好きなんですよ!」
「あははは! そっちが本命?! くすくす! で、お話とは??」





えー こほん! カカシさん! テンゾウさん! いらっしゃるんでしょう?! 出てきて下さい!
・・・・・・やっぱりな。 さっきまで全くしなかった気配が二つ、突如として現れた。
え? なんで? なんなの?! っていう感じのアワアワした雰囲気が漂ってる。 ・・・くすっ!


実はですね、このお二人が自主的にアカデミー付近を警備して下さってたんですよ、知ってました?
更にいうと、“校舎でドッキリ肝試し” の出し物だと思われて、一般人が同じくビビッちゃったり。
警備で巡回中のアカデミーの先生やこの暗部お二人が、実はアカデミーの怪談の元凶なんです。


「ヤ、あの・・・・ ソレは・・・ んーと・・・・・ ごめーんネ?」
「そんな騒ぎになってたとは・・・・・ すみませんでした・・・・」

「こちらこそ、暗部が見回ってくれてたなんて知らずに。 お礼の一つも言えず終いで・・・・」
「お二人はボランティアで生徒を守ろうとしただけ。 それなのに三代目に言えます?」
「そんなの言える訳ありませんよ。 ぶっ! あはは! じゃぁ、お化け仲間なんですね? ふふ!」

「ェ? ・・・・アー ウン。 そうなるのネ? お化け仲間か! フフフ!」
「ボク達だけなら分かるけど、アカデミーの先生まで。 酷い誤解ですよね・・・・」


「全く! お化けなんかよりよっぽど怖いのに! ・・・・・ですよね?」
「ぶっ!! あはははは!! そんな事ないですよ! とは簡単に言えない所がミソです。」
「ねー? お二人ともウチの里が誇る暗部の長たちなんですから。 しかもとっても優しいし!」
「そうですよ! わざわざ生徒たちの為に見回って下さってたんですもんね?」

「「ア、アカデミーの生徒は非力だし、先生方は忙しそうだったから・・・・」」
「ありがとうございました。 でもお化けデビューですが。 ・・・・ぷっ!」
「「・・・うん、お化け仲間同士、これからよろしくね?」」
「こちらこそ。 ふふふ!」


「で、思った訳です。 報告書はこのまま、真相は皆の秘密・・・・ なんてのは如何です?」
「賛成です! 受付所の面々は口が堅いから。  な? 皆、何も聞いてないだろ?」

任務受付所の至る所で“見ざる言わざる聞かざる!”と声が上がった。 やっぱ皆もそう思うだろ?
一日一善、忍びになったら一善どころか悪行三昧だったけど。 チャラに出来る機会があれば活用!
奪って来たたくさんの命の代わりとはいかないけど、小さな善行が出来た事にちょっぴり満足だ。

「「・・・・ははは・・・ いやー まいったな・・・・ ははは・・・・」」

カカシさんとテンゾウさんが海野中忍に見えない様に指文字を送って来た。【ありがとう】 だって!
くすくす! カカシさんとテンゾウさんとイルカ先生か・・・・・ 案外お似合いですよ?
・・・・ボケ具合が。 とまではさすがに言えないけどな! さ、冷やし抹茶飲んで帰ーえろっと!





後日あなたは、暗部の面々に頼りにされる中忍となります。 暗部の顧問という通り名がついたとか。(爆)