譲れない忍道 1  




俺がアカデミー教員になったのは二十歳。 まだ早いと反対意見が多かった。 結構、四面楚歌だったな。
もともと根性だけはあったから、周りが批判すればするほど、俺の雑草魂は燃え上がり・・・・
そして、半年で担任を勝ち取った。 もう誰にも早いなんて言わせないと、俺はビシッと言ってやったんだ。
これから、その当時の俺を知っている元教え子とのツーマンセル任務。 嬉しくて早く来過ぎちゃった。

「よう、イルカ、単独か? 珍しいな。」
「いや、実は、元教え子とのツーマンセルだ。」
「ははは、嬉しそうに守秘義務を破ってるなぁ、イルカ先生。 顔がにやけてんぞ?」
「そりゃ、嬉しいよ。 なんてったって、俺が始めて担任した時の生徒なんだよ。」

先生だからって、学校にずっといる訳じゃない。 任命されれば、里の為にしっかり働くのが忍び。
任務が優先であること、それは子供たちも理解している。 忍者アカデミーなんだから当たり前だ。
でもまぁ、俺達教員に回って来る任務は、他の忍びより、比較的短期間で済むものが多い。
学校が休みの時とか、授業が終わってからとか。そのあたりは、ちゃんと考慮されている。
今、アカデミーは春休み中だ。 任務はCランクで、一泊二日の護送任務。 中忍ふたりで十分だ。

「うわっ! イルカ先生! なんでいるの?! 集合時間より30分も前だよ?!」
「イルカは嬉しくてしょうがないんだ、立派になった生徒と一緒に任務に就けるのが。 な!」
「ははは、いてもたってもいられなくてな。 気合い入れて来た。」
「絶対、僕の方が早いと思ったのに・・・」

「同窓会かよ! お前ら任務のコト忘れてるだろ。 集合したなら、はやく出発しろってんだ!」
「はいはい、門番のシラスくんは、厳しいなぁ。  ・・・アイツの娘、 反抗期に入っててさ、羨ましいんだよ、こういう関係が。
あはは、そうなんですね? ナルホド。      それではシラス中忍、行ってまいります!!」
「コラ、聞こえてんぞ! ははは、このプチ同窓会コンビめ!  気を付けていけよー!!」

俺が最初に受け持ったクラスにいた真田ヒカルは、生徒の中でも群を抜いていた。
あの年の下忍試験に合格したのは、コイツがいたスリーマンセルだけだ。 そして先日、中忍になった。
残念ながら他の二人は、その中忍試験で死亡し、生き残ったヒカルだけが、合格という結果だった。
里は力をつけた下忍を多数参加させたが、実にその三分の一が命を落とした。 ルールは開催国主導だ。
先の中忍試験は、土の国で開催された。 岩隠れの忍びを身内びいきした卑怯なルールだった。

「昨日は、遅くなって、すまなかったな。 この任務の説明を聞いていたんだ。」
「へへ、・・・思い切って、先生の家を訪ねて、良かったです。 誘ってもらえた。」
「・・・・そうか。  あー、 怖かったろう? うちの番犬ハンパないから。」
「ぷっ! イルカ先生、酷いや! 番犬だなんて・・・ あはははは!!」
「甘い! 番犬はおとなしい時。 いきなり飢えた猛獣になるんだぞ?! 恐ろしいのなんのって・・・」

中忍試験とは開催国にとって、他国の力を削ぐ絶好の場だ。 他里の有力な下忍を、伸びる前に潰せる。
反面、その中で合格する事は、無二の実力を備えている忍びだと、国内外に知らしめるチャンスでもある。
里は、あまりに無謀な場合を除いて、基本的に上忍師の判断と、下忍達の参加意志を尊重する。
誰が悪い訳じゃない。 あのアウェイでの中忍試験参加は、ヒカル達が望んだ事でもあったのだ。

「ふ~ん・・・ なにが恐ろしいって?」
「聞き捨てなりませんね。」
「・・・あなた達以外に いる訳ないでしょう。」
「あ!! あの・・・ 昨日はご助言、ありがとうございました!」

俺が番犬と呼んだこのふたりは、暗殺戦術特殊部隊の、部隊長と補佐。 ズバリ、暗部の司令塔だ。
なんでそんな雲の上の人物が俺の家に居るかというと、俺がふたりの情人だから。
始めは色のなんたるかをわからなかった俺だが、最近やっと体が慣れて来た。
俺が慣れて来たのでふたりも加減を度々忘れる。 普通の女だったら、抱き殺されているだろう。

忍びの隠れ里のほとんどが、性的志向に関して特に規制を設けていない。一夫多妻や一妻多夫もありだ。
里が唯一義務付けているのは、精子・卵子の提供だけ。それさえ守れば、後の生き方は個人の自由だ。
もちろん、このふたりも、俺も、里に精子は提供済みで、何の問題もない・・・のが、大問題だが。
暗部ふたりの体力、中忍ひとりの体力を比較してみて欲しい。 失神する事なんてザラだ。