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ほんの些細なことだが、里に帰る楽しみが出来て、嬉しかった。 ただ黙々と殺していた日々が変わる。
うみのイルカは里に居たり、居なかったりで、なかなかにそのお茶は、貴重な一品となった。
残念ながら、オレもあれからまだお茶を入れてもらってない。記憶の中で、味は不味いままだ。
中忍になり任務が増えたのだろう、お茶くみの回数が目に見えて減って来たころ、それは起こった。
部下が気配をやや乱し、報告に来た。 暗部とは思えないあせりかただ。

「部隊長、お茶くんが重傷を負って、木の葉病院に担ぎこまれたそうです!!」
「!!!」
「やだ、ほんと?! 大丈夫なの?!」

一緒にいた部下に動揺が走る。
オレは奴らを安心させる為、様子を見て来ると言い、瞬身移動をした。
何も部隊長自らが、そんな事で動かなくていいのに。
実はオレが一番、動揺していたのかもしれない。

そこにいたのは、全身を包帯でぐるぐる巻きにされたミイラ男だった。顔だけがみえている。
そして、三代目火影。 ・・・いや、違う。子供の寝顔を見守る、一人の老人の姿があった。
三代目はオレが居ると知って、わざと聞かせるように、長い独り言を呟き始めた。


「上忍の命令を無視し、傷を負って動けなかった仲間を、自力で連れ帰ってきおった。
 その為に隊の全員を危険にさらしたと、上忍からせめられたが、この馬鹿は逆に、
 怪我人を餌に使わないと退却できないほど、木の葉の上忍は弱いのかと、恫喝しおっての・・・
 この怪我は戦って出来たものじゃなく、その連中に袋叩きにされて、負わされたものじゃ。

 上忍の判断は、その時の最善の策だったのだろう、間違ってはいない。
 じゃが、こ奴のいう事も間違いではない。ワシは聞かん坊の、このお茶係を気に入っとる。
 上の連中とは、なるべく衝突は、避けてもらいたいんじゃがの・・・
 本人が、いっこうに反省しとらん。自分はあくまで正しい事をしたと言い張っておる。」


オレの父さんは任務違反をして仲間を助け、周りから攻められ自害して果てた。
ただ一度の命令違反で、木の葉の恥さらし、裏切り者と罵られた。
伝説の三忍をも凌ぐといわれていた英雄『木の葉の白い牙』サクモ。

うちはの中で、写輪眼を覚醒できない落ちこぼれ。いつも遅刻ばかりで、くだらない言い訳をして。
『命令を無視するやつはクズだ。けど、仲間を見捨てる奴はそれ以上のクズだ!』
そういって、オレの目を覚ましてくれたオビト。

オレはいつも、失ってから気付く。この中忍はまだ・・・生きている。
むちゃくちゃ弱いくせに。戦場ですぐに死んでしまいそうなのに。
その火の意志の強さは、出遅れたオレより、はるかに強かった。
頬に涙がつたう。 静かに・・・声を殺して、オレは泣いた。

「・・・・おぬしが泣けるようになって、ワシも安心したワイ。 こ奴のお茶は、美味しかろう?」
「・・・オレ・・・は、まだ・・・不味い玉露しか、入れて・・・もらってません・・・」
「なんじゃ、玉露の味がわからんのか? まだまだじゃの。」
「・・・あれは、年寄り向きです。若者にはあいません。」
「わはは。ぬかしおるわ。こわっぱが。」

うみのイルカはアカデミー教師になりたいらしい。 三代目はその夢を叶えてやるだろう。
もし、2〜3年のうちに教員試験に合格したら、異例の若さでアカデミー教師が誕生することになる。
あの火の意志を、次代の玉<ギョク>に伝える役目・・・うみの、イルカ先生か・・・ぴったりだ。

「火影屋敷のお茶くみ係は、そろそろ卒業させようと思おておる。」
「それは残念。部下もがっかりするでしょう。 オレまだ、美味しいの飲んでないのに・・・」
「暗部の任期を終えたら、たくさん入れてもらえ。」
「・・・そうですね。楽しみは、後に取って置くことにします。」

決めた。うみのイルカをオレの半身にする。あの魂を独り占め出来るなら、どんなことでもやる。
さっそく戻ったら、部下たちにも伝えよう。激しいブーイングが起きるだろうな・・・
ま、そこは部隊長特権ってことで、嫌でも了承させよう。
病室を出ようしたオレの背中に、三代目が声を投げかけた。

「先は長い・・・ 必ず生きて・・・任期を終えるんじゃぞ?」
「・・・大丈夫です。 オレは、四代目火影 波風ミナトの愛弟子ですから。」