緋の記憶 3
@AC
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「は〜い、追いかけっこはここまで。ちょっと、ストップ。ね?」
「ハスナさん。このままでは、里抜けと同じですよ?」
「・・・!! 部隊長?! なぜ、ここに!!」
ジンから式を受け取ったこと、事情は全てジンから聞いていること、
火牢から力ずくで出たジンが重傷で、木の葉病院へ運んで来たこと、
けっして、私を、止めに来たのではないということ。
任期未定の長期任務扱いとする事の了承を、火影様から得たことを伝えに来たと教えてくれた。
「そういう事ですから。 あと、火影様から伝言です。『必ず戻れ』以上です。」
「あ、そうだ! オレ達、重婚したのヨー、イルカと! ねー、テンゾウ?」
「ええ、火影様からも認めてもらっています。 新婚ホヤホヤです。」
「・・・・そ、そうですか・・・それは、オメデトウございます・・・」
部隊長達の予想外の登場で、力が抜けた。血が上った頭に水をかけられたように、冷静になれた。
どんな苦しめ方で殺してやろうか、そればかりを考えていた。 ことは私だけでは済まない。
他国の大名の首を取るのだ、もし木の葉が係わっている事がばれたら国交問題に発展する。
火影様に・・・皆に迷惑がかかる・・・。
「イルカはね、気持ちいいチャクラしてるから、どこ触ってもイイ気持ちなの。」
「ですよねー、寄り添ってるだけで、落ち着きますもん。」
「あ・・・ それは、なんとなくわかるわ。 ふふ、あのヒトもそうだった・・・」
まったく・・・部隊長達にはかなわない。 ただ力があるというだけじゃなくて、
ほしいものには、すぐ手を伸ばせる強さ、それを、勝ち取り、守り通せるという自信がある。
私もあの時、すぐに諦めなければ良かったのだ。 追いかけて、嫌がられても捕まえるべきだった。
私は息子のチャクラ量が増して喜んだけど、あのヒトなら息子ではないと気付いたかもしれない。
やっぱり、決着をつけなくてはならない。そうでないと、何時まで経っても前に進めない。
「木の葉の忍びが絡んでいるという証拠は、何一つ残さないわ。その分、時間はかかるけど。」
「さすがです。 ボク達の知ってる、いつものあなたに戻りましたね。」
「ジンのことは気にしなくてイイヨ? あいつ働き過ぎだから、休暇がてら入院させとく。」
「・・・それでも、同胞を傷つけた事に変りはないわ・・・。処罰は帰ったら・・・」
「あ〜、ジンが言ってた。待てば消えるのを承知で、自分が勝手に負った傷だから気にするな、って。」
「あ、でも、アラシがしょげてました。情報収集せずに殺したから、ハスナさんを怒らせたって。」
なんてすばらしい家族なんだろう。 私が守る木の葉の里は、こんな人間がたくさんいる。
『いつも僕達を守って戦ってくれているんだね兎さん? ありがとう。 実は君のこと大好きなんだ。
僕は無力だけど、君を思う心は君よりも強いよ? ・・・とかいったら、僕にオチテくれる?』
あのヒトは任務帰りの返り血を浴びた私を、こう言って口説いた。
任務帰りの暗部に声をかけるなんて、殺されたって文句は言えない。まさに、命懸けの告白。
「ふふ。 ジンにも、アラシ君にも 戻ったらご馳走するからって、伝えて頂戴。」
「了解です!」
「里で・・・ 待ってるよ? オレら全員。」
「暗部、猫部隊ハスナ、大名水望の首、取りに行ってまいります。」
「部隊長猫、テンゾウ容認。健闘を祈る。」
「部隊長戌、カカシ立会、認可。健闘を祈る。」
「「散!!」」
彼の子をこの手で殺したのだ。 私はあの子を殺してしまった自分が許せないでいた。
でもあの子は『人喰いジュウザ』に記憶を上書きされ、既に殺されていたのだ。
『自分の子の変化に気付かないなんて、人殺し以外は全然、ダメだね? 君は。
でもやっぱり悔しいから、あの子の為に、仇はしっかり取ってあげて? 君は強いんだから。』
そういって、あのヒトが笑った気がした。
―――― 先に逝って待っているよ。 君だけを、ずっと愛している ―――――
ねえ、まだそっちに逝けないわ。 私を待ってるんですって、みんなが・・・
でも精一杯生きたら・・・ その時は必ず、ふたりで私を迎えに来てね?