変わらないもの 3   @AC DEF




「せっかく上忍試験に受かったのに、お主からミナトを取り上げるようで悪いんじゃが・・・」

三代目はオレにそう切り出した。 火影の座を四代目に譲り、引退をするという。
現役最後の任務に、上忍のお前も入れたから、久しぶりのミナト班で任務に行って来い、そう言った。
ミナト先生、上忍のオレ、中忍のオビト、リン。 寝ていても任務を遂行できそうだ。

まさか先生が救援に呼ばれ、オレが隊長となって任務にあたる事になるなんて・・・
そしてその後、オレの隊に起こる事を、一体誰が、予想できただろう。





「カカシ兄ちゃん!!」
「カカシ先輩!!」
「よお。」
「イルカ、テンゾウ、アスマ・・・」

隠居したての三代目の家で出迎えてくれたのは、オレの義兄弟たち、三人だった。
イルカは突進してくるし、テンゾウは死にそうな顔してる。アスマが全部、話して聞かせたんだろう。

任務仲間のオビトを失った。 オレは左目も失った。今左目に入っているのは、オビトの写輪眼だ。
ルールを無視する奴はクズだと言った俺に、仲間を見捨てる奴はそれ以上のクズだと、反論したオビト。
オレは自論が絶対だと過信した為に、リンを危険にさらし、オビトを失った。

『木の葉の白い牙は、本当の英雄だ!』オビトのゆるぎない視線が、オレを射抜く。
『上忍試験の合格祝いに、この俺の目をやるよ・・・』そう言って写輪眼をオレに残した。
まだ息のあるオビトから、その場で移植してくれたのは、医療忍者見習いのリンだ。
先生は火影に。リンは医療班に。オビトは慰霊碑に。オレは暗部に。・・・ミナト班は解散した。

「かか・・・ う〜えっ、えっ〜ん!! お帰り!! お帰りー!!!」
「イルカ、・・・くるしいよ。」
「カカシ先輩・・・お帰りなさい。」
「心配かけやがって。コイツ!」

アスマ達は何も聞かない。 イルカに至っては泣いてしがみついて、離れようとしない。
オレは自分の不甲斐なさを嘆くより、イルカの将来が心配になった。
イルカは親父のような忍びを目指すと言っていた。こんな甘えたで、本当に忍びになれるのか?
テンゾウは心配していない。 アイツの持っている木遁チャクラは増幅し続けている。

「テンゾウ、行くぞ、ふたりだけにしてやれ。」
「はい、アスマ先輩。」
「お前、すっかりその呼び方が板についたな。」
「ずっと前にアスマ兄さんが言ったんですよ? 先輩と呼べって。」
「ははは、そうだった! 好きに呼んでかまわねーよ。」
「じゃ、先輩のままで。 気にいってるんです。」
「変なとこ頑固だなぁ、オメエ。」



オレの父さんは慰霊碑にはいない。木の葉の恥は慰霊碑に必要はないと、上層部が判断したから。
オビトはオレの父さんの事を、本当の英雄だと言った。 オビトからの上忍祝いは、この左目。
イルカは“サクモ伝説”が大好きだ。 義兄弟たちからの上忍祝いは、父さんの墓石だった。
発案者はイルカ。あの時は、自分が行きたいだけだろう、そう思っていたが、違った。

慰霊碑にオビトの名が刻まれたのを確認して、それから父さんの墓石とやらに始めて行ってみた。
真新しい墓石は白水晶で出来てる。 墓石の斜め後ろには、大きめの白い石と、古い木の板があった。
どちらも白水晶に隠れるようにして置かれている。それらは父さんの墓石の歴史だった。



「オレさ、お前達が作った父さんの墓に寄って来た。」
「うっ、うぅ。カッチョよかったでしょ、ひっく。 おれの、うっく、ニューデザイン、ぐずっ。」
「・・・・うん。 凄く・・・カッチョよかった。」
「サクモさんに、うぅ、カカシ兄ちゃんを守ってって、う〜、今日もお願いしてきた、ひっく。」
「・・・父さんは・・・ちゃんと、守ってくれたよ。 ・・・ありがとう。」

木の板には『しろいばきのおはか』裏には『せいしゃくしょいるか』と、つたない字で書いてある。
間違いなく、イルカの字だろう。『白い牙のお墓』『制作者いるか』そう書きたかったんだ。
その手前の石には『はたけサクモ ここに眠る』『作 海野イルカ』ちゃんと読める字で書いてある。
一番新しい白水晶には『英雄 はたけサクモ 永遠に木の葉を見守る』そう刻まれていた。
後ろには、  カカシ・アスマ・テンゾウ・イルカより敬愛をこめて  と彫ってある。

そして気付く。墓石を囲む花は、皆地面から生えている。どの花もこの付近に群生地はない。
花が枯れ落ち、種が植わり、新たに芽吹く。誰かがよそから持ってきた花を、ここに置いた。
イルカだけじゃだけない。こんなにたくさん増えているのは、沢山の人がここに来たという事だ。
里は、小さな子供が書いた木の板こそ、サクモが望んだ墓標だと判断したんだ。

イルカにサクモ伝説を語って聞かせていた海野上忍。そんな大人たちの方が多かったのではないか?
裏切者、恥さらしと罵る奴はいただろう。そんな奴は多分、少数・・・この花畑をみれば一目瞭然だ。
オレが泣いているんじゃない、オビトが・・・泣き虫のうちはオビトが泣いているんだ、
そう言い訳をして、初めて声を上げて泣いた。 父さん、父さん! あなたはオレの誇りです、と。