変わらないもの 4   @AB DEF




オレの毎朝のパターンが出来た。 オビトに会いに、慰霊碑へ。 父さんに会いに白水晶の丘へ。
今、父さんの眠るところは、たくさんの花が年中見られることから、白水晶の丘の花畑と呼ばれている。
そして任務後は必ず、オレの義兄弟たちに会いに、猿飛家へ行く。 オレ達のたまり場だ。

「ねえ、イルカ、気になってたんだけど、それ。 鼻どうしたの?」
「言ってなかったっか? イルカとテンゾウは、今週からアカデミーに通い始めたんだ。」
「自己紹介でクラスの子と大喧嘩。 窓ガラスに突っ込んでこのザマです。」
「見てみる? へへ、この傷ちょっと、カカシ兄ちゃんみたいで、カッチョいいと思わない?」

イルカは鼻の上の傷バンをとってみせてくれた。鼻を真っ直ぐに横切る傷。オレのは左目の縦傷だ。
うちは一族でもないのに写輪眼を持っているから、写輪眼泥棒なんて言う馬鹿がいる。
知らない奴らは好き勝手に言えばいい。 知ってる奴は、ちゃんと知っている。それでいい。
少なくとも、オレの前にいるこいつらは、全部知っているから。

「・・・『尊敬している人は白い牙!』とか、何とか言ったんでしょ?」
「おー、イイ読みしてやがる、ほぼ正解に近い。」
「正しくは、『尊敬している人は、はたけ親子!』です。・・・あれ、カカシ先輩どうしたんですか?」
「・・・いや、別に。 あー、イルカ? おまえを天然口説きマシーンと命名する!」
「ははっ、ははは!!! ちげーねーや!! うまい事言うな、カカシ!!」
「てん・・・? どういうこと?」
「さあ、ボクには何が面白いのかさっぱり・・・」





里にいる時は猿飛家に集まり、階級もナニも関係なく、ワイワイやるのがオレ達の日課だった。
そしてそんなオレ達にとって、最悪な日が訪れる。 妖孤 尾獣九尾の、木の葉襲来事件だ。
四代目が九尾を封印する間、マンセル仲間の海野夫妻をはじめ、多くの暗部、上忍が九尾を足止めする。
九尾を木の葉の里から外へ出さない様に、三代目が里全体に結界を張り巡らせた。

「おい、小僧、待つんだ!!」
「はなせ、父ちゃんと母ちゃんがまだ戦ってるんだ!!」
「ここからは誰も入れない。オレ達が一番つらい。分かってくれ。」
「っ!! なんで・・・」

イルカを止めたその男の言うことは本当だ。三代目の結界は、九尾を里に閉じ込めるだけでなく、
九尾封印の円陣の周り、一キロ四方、誰も近づけさせない。円陣の中には四代目と、クシナさん、リン。
円陣のすぐ外側には海野夫妻。 暗部、上忍の選ばれた者が、さらにそれらをとり囲んでいる。
残された忍びは、戦いに参加したくても、見ている事しか出来ない。

「イルカ、おいで。 火影岩へ登ろう。」
「・・・親父が・・・次代の忍びは残すと言った。 カカシもおれも結界には近づけねえ。」
「四代目と三代目、イルカのお父さんお母さんを信じよう?」
「・・・・・うん。 わかった、信じる・・・」

オレ達は火影岩の上から、その光景を見ていた。 並んで手をつなぎ、ただ見ていた。
九尾は、里選りすぐりの忍びたちを、ものともせず暴れまくる。 森や建物がなくなった。
つぎつぎと九尾に喰われ殺されていく仲間たち。 つないでいる手をギュッと握り締める。
九尾が封印円陣の手前まで迫る。 円陣の中ではクシナさんが赤ん坊を産み、リンが取り上げていた。

「ミナト先・・・四代目!! 男の子よ、凄く元気!!」
「よくやったクシナ、リン! おれ達の子供だ! クシナ!!」
「えへへ・・・頑張ったでしょ・・・ これで・・・九尾も抑え込めるってばね・・・」

クシナさんは、尾獣を体内に抑え込めるほどの生命力を誇る、渦巻の民の生き残りだ。
同じく渦巻の国出身の初代様の奥方から、九尾の監視を受け継ぎ、その体内に九尾の魂を抑え込んでいた。
妊娠するとその力は弱まる。 生命力の半分を、赤ん坊に与えるためだ。
これは人災だ。それを知っている誰かが、クシナさんの体から、九尾を無理やり引きずり出したんだ。
尾獣の尾が鞭のようにうなり、海野夫妻を何度も貫くが、彼らは円陣を守り、決して倒れない。

「・・・・ぐう、 やったな・・・ 男の・・・子か、でかした、ぞ・・・・」
「ミナトも、クシナも・・・やっと・・・父ちゃん・・・と・・・母ちゃん・・・ね ・・・くっ!!」
「おれ達は・・・先に・・いってるぞ・・・ミナ・・ト、ク・・シナ・・・」
「ああ、俺達もすぐに行く。    ・・・・尾獣九尾、封印!!!!」

先生が・・・四代目が九尾を生まれたばかりの赤ん坊に封印した。 渦巻の民の血を引く赤子に。
封印術が発動した時、クシナさんもリンも先生も・・・・九尾の尾に貫かれていた。
木の葉の里は救われた。オレ達はこの事を目に焼き付け、未来に伝えていかなければならない。





『カカシはアタシがいなくても平気でしょ? でも、オビトはアタシがいなくちゃダメなの。』

医療忍者だから仕方がないと分かっていても、なんでリンだけ連れて行くんだと抗議した。
覚悟を決めているリンが、そう言って綺麗に笑ったから、もう何も言えなくなった。