Lucky Day 1
ABC
DEF
G
おれ達は猫班。 部隊長のテンゾウさんは木遁使いなので、日をまたぐ任務で野宿しなくていい。
まあ、部隊長と行動を共にする時だけなんだけど。 木遁でボコリと建物を造ってくれるから。
おれ達だけなら、森の中で結界を張る。 今回は部隊長と一緒だから、そのラッキーデーだ。
猫班は、暗殺戦術特殊部隊の四つに分かれている部隊のひとつ。 火影様の直接命令でのみ行動をする。
ただし部隊長命令も、各班にのみ火影命令同様の権限を持つ。 だから各班の隊員は、部隊長命令に従う。
面をとって、各自正規の忍びに戻れば、部隊長命令に従う必要はない。 でも・・・・ ね?
隊員はそれぞれの部隊長達を、メチャメチャ尊敬してる。 その強さと言ったらもう・・・・。
「ア゛ーーーーーーッ!!!!」
「な、なんなんですか、ビックリするじゃないですかイキナリ・・・・」
「あ、珍しいッスね、部隊長がベストを切られるなんて。」
「ホントだわ、真ん中の下のトコがスッパリいかれちゃってますね。」
今は部隊長が造ってくれた小屋の中で、みんなして汚れた得物を砥いでいた最中。
アブねー、暗部専用の刀は殺傷力がハンパない。 おれもビックリして、手元が狂いそうになったよ。
見れば、部隊長のベストの中央下部が口を開けてた。 相手の武器がかすったんだろう、ほんと珍しい。
普段冷静な人物の突然の叫び。 なんだろう? キョロキョロして、ナニかを探してるみたいだ。
「ない、ないっ! そんなっ!! ・・・・・・ どうしよう・・・・。」
「部隊長、なにか失くしちゃったんですか?」
「?? おれ達も探しますよ、なんです?」
「そうッスよ、後はどうせ、帰還するだけじゃないッスか。」
「カカシ先輩が・・・・ キレるかも・・・・。」
「「「え゛−−−−−!!!!」」」
部隊長が言う、カカシ先輩とは戌班の部隊長。 あの人に限っては面がいらない。 ていうか、意味ない。
写輪眼を持ってるから面があると邪魔なので、戦いの最中は頭の後ろに面を回してる。 すんげーイイ男。
何人か特殊な目を持ってる奴がいるけど、写輪眼は別格。 しかもあの人は、うちは一族じゃない。
片目だけが写輪眼。 ハッキリ言って、面を後ろに回すしぐさをしただけでおれ達はビビる、マジで。
「マジっすか?! 戌部隊長のモノなんスか?!」
「間違いなく、あたしたちの連帯責任ね。」
「や、やばいですよ、早く探しに戻りましょう!」
「・・・・・・いや、お前達は先に里に帰還しろ。 わかったね?」
あの写輪眼のカカシの持ち物を失くしたなんて・・・・ ウチの部隊長はなんてついてないんだ。
戌部隊長が使ってるチャクラ刀は伸縮自在、白い牙と呼ばれた父親の形見。 その時の話は有名だ。
前にあの刀に触ろうとしたヤツがいた。 小さくして腰にぶら下げてたから、アクセサリーですか、って。
そいつの腕はその場で落ちた。 即冷凍で持って帰って、医療班にくっつけてもらったらしいけど。
「これは、部隊長だけの問題じゃないですよ?」
「そ、そうですよ! あの切断話は有名じゃないですかっ!!」
「やっぱ全員で探しましょう、そのほうが・・・・」
「同じ事は二度言わないよ? 敵忍全滅の報告書を、先に帰って提出しろ。」
・・・・戌部隊長も怖いけど、ウチの部隊長も恐ろしい。 これは・・・・ 部隊長命令なんだ・・・・。
おれ達は顔を見合わせた。 うん、一度帰還して、上忍として戻ったら。 部隊長命令は無効だもんな?
よし、そうと決まれば即行動しよう。 部隊長に挨拶をして、おれ達は里に向かって駆け出した。
「部隊長・・・・ あたしたちを部外者にしたのね・・・・。」
「うん。 おれ達を遠ざけて、ひとりで責任を負う気だ。」
「もしも見つからなかった時の事を、考えたんッスね。」
きっとそう。 戌部隊長の怒りの矛先を、自分ひとりに向けるつもりだ。 でも、テンゾウさんは忘れてる。
おれ達は猫班で、部隊長のテンゾウさんの為に、全隊員がその命を懸けてる事を。 甘くみられたもんだ。
火影様に選んでもらったおれ達が、三代目の手足とも言われている部隊長を、信頼するのは当たり前。
おれ達が間違えそうになった時、必ずあの人達が道を開いてくれる。 だったらおれ達だって同じだ。
「・・・・ハスナさんもきっと、同じ事をするわよね?」
「そおッスよ! “ふふ、上忍に部隊長命令は、無効よ?”とかって笑いながら!」
「あははは、ハスナさんが、ココにいたらそう言うね!」
てっきりハスナさんが、次の猫班の部隊長かなって思ってたんだけど。 新部隊長について行きます、と。
猫班のくのいちで、ただひとり兎の面をつけてる実力者・・・・ あのハスナさんが片膝をついた。
おれ達はおれ達の意思で、部隊長を尊敬してついて行ってる。 ・・・・・連帯責任がどうした、上等だ!!
「見つければ失くしてないのと一緒ッスよ!」
「そうよ、あたしたちは追跡は大得意!!」
「よし! なにがなんでも見つけてやる!」
「「「おーーーっ!!」」」