それなら簡単 1   ABC DEF GH




ここは、上忍ご用達の居酒屋『THE☆上忍』。
なんたって、マスターが元上忍。そりゃ〜もう、かゆい所に手が届く上忍の憩いの場。
全卓個室・完全防音・リクライニング座椅子・仮眠室完備・医療班待機室有り・式無料サービス有りだ。


「おう、テンゾウ、しばらくぶりだな、・・・ところでおれ達に相談って、何だ?」
「アタシはテンゾウのおごりって聞いてきただけよ? ・・・何か悩み事?」
「お前、また【恋人のふたり】の話だったら怒るヨ?」
「え、いやあの、・・・そうなんですが、その・・・。」
「だぁーっっ! やっぱり、それもあんのか! オレは帰る。耳タコだ!」

「まあまあカカシ、ちょっと、おちつけや。」
「そうよ!可愛い後輩の相談を、聞きもしないなんて、元暗部部隊長の名がなくわよ?!」
「はいはい、オレが悪かったですよぉーだ。 話でも何でも聞きますぅーだ。」
「うわっ、感じわる! 何でこんな男がもてんのか、信じらんないっ!! 世の中、間違ってる!」
「紅・・・おまえも、いちいちカッカすんな。おちつけ。」


木の葉の里きってのモテ男。元暗部部隊長。写輪眼の使い手。千の技をコピーした男。次代火影候補。
クールビューティー上忍、オレの名は、はたけカカシ。イルカ先生の恋人 になる予定だ。

オレの向かいに座ってるのは三代目のドラ息子、猿飛アスマ。熊。ウワバミ女の旦那。ヤニ中毒。髭。
こいつはダークホースだ。なんせ、オレのイルカ先生が「アスマ兄ちゃん」と、なついている。
アスマの横、キーキー煩いのが上忍、夕日 紅。女狐。幻術使いの魔女。ザル。ワク。ウワバミ。
こいつもプチ注意だ。髭の女とゆうだけで、オレのイルカ先生が「紅姉さん」と、やっぱりなついている。

オレの横にいて、さっきからモジモジしているのが、現暗部部隊長、木遁チャクラ保持者、テンゾウ。
初恋を今でも忘れられない、現実逃避のイタイ男。だから童貞街道をまっしぐらで、現在も進行中だ。
確かに、こいつの初恋は強烈だ、忘れないだろうと思う。 だが・・・相手は既に死んでいる。

自分が生きていく上で、その思いを支えにするのならいい。 オレだってそうだ。
でもこいつは、初恋のその子と、相手を平気で比べてものをいう。
オレがせっかく宛がった女を、木遁でスマキにして放り出したり、毒舌吐いて打ちのめしたり。

「魅力の欠片もない。」「薄っぺらい面の皮。」あげくは、「そんなんじゃ、起たない。」
百戦錬磨のクノイチや、花魁レベルの遊女が、そんなことを言われようものなら、プライドは粉々だ。
死人と比べられたら、生きている人間は皆、たまったもんじゃない。

お前が、モジモジしても可愛くないっつーの! まぁ、オレのイルカ先生だったら、可愛いかもしれない。
かもしれない・・・というのは、男に言っていいセリフかどうか迷うからだ。
そう、オレの恋人になるはずのイルカ先生は、オレと同じ男性だ。

オレ達忍者は、性に関してはリベラルだ。変化の術で、どちらにもなれるから。
勝手に濡れてくれるから手間がいらず、柔らかい肉の感触から、女を選ぶ奴が多いというだけ。
でもオレは、イルカ先生そのままがいい。 オレのイルカ先生は・・・・・・

「カカシ! あんた、なんか知ってんでしょ?! 教えなさい!」
「あ〜 なんだ。その、【恋人のふたり】ってやつは。」

テンゾウの初恋は強烈だけど、オレとイルカ先生の出会いは、温かくてちょっとイイよ?
イルカ先生との出会いを回想しようとしたら、アスマと紅に茶々を入れられた。
モジモジして、なかなか話し出さないテンゾウにしびれを切らし、
髭とウワバミが、オレを睨んでいる。 なんだよ、オレのせいか? わかったよ、もう!!

【恋人のふたり】はオレがつけたタイトル。テンゾウの初恋物語だ。仕方がない話してやろう。嫌だけど。
暗部で面倒見てた時から、暇が出来たらその話。 もう耳タコすぎて、奴の言い回しまで丸暗記している。
朗読だってできるし、脚本だって書ける。映画を作って本も出せる。悲恋の純情初恋物語。
せっかくだから、テンゾウになりきって話してやろう。 オレの耳タコ度合いを思い知るがいい。


『聞いて下さい。ボクは、一度だって忘れたことがありません・・・あの子の事を・・・』