それなら簡単 4   @AB DEF GH




オレは火影様から直々に、お前を頼むと暗部で預かった時を思い出す・・・
まあ、その頃のオレは既に信頼厚く、暗部部隊長として、ブイブイいわせてた。
がむしゃらに、泥水すすって生き抜いた。どんなになってもあきらめなかった。
オレのイルカ先生に、生きてもう一度逢う為に。

ガラにもなく余計な事をしたと思う。でも、オレはオレなりに必死だった。
テンゾウが過去ばかりを見て、死に急ぐさまは、まるで少し前の自分を見ている様だったから。
お前にも、好きな人が生きて里にいる事の素晴らしさを、教えてやりたかった。

「じゃぁ、アタシたちに相談て言うのは・・・」
「オレらが良く知ってる奴・・・ってことだわな」
「・・・ええ。 その通りです。」
「よし任せろ、お前を一人前の男にしてやる!」

忍びが戒名するのはよくあることだ。もし【アヤネ】がいたら、真っ先にテンゾウが動いただろう。
オレ達知り合いのくのいちに【アヤネ】という名前の女はいない。
あいつかも・・・いや、それとも、あいつか・・・オレの頭の中に知り合いのくのいちが浮かぶ、
黒眼で黒髪、長髪でボンボリが好きそうな、でも、どれもあんなイイ気質じゃない。
あんなに焦れていた女にじゃなく、オレ達に相談とはこれいかに。

「・・・ねえ、まさかもう結婚してたとか?」
「いえ、独身です。」
「亭主と死に別れ、未婚の母で子持ちとか?」
「子供もいません。・・・ていうか、何で既婚前提なんですか!?」
「そりゃ、お前、そんなイイ女ほっとく訳ないだろう、同じ忍びの男なら。」
「・・・・そうなんです・・・そこなんです。ボクが皆さんに相談したいこと。」

オレ達の世界は性に関してはリベラルだが、ルールはある。暗黙のルールだ。
既婚者くのいちには手を出すべからず。子供がいるくのいちには決して無理強いしてはならない。
母体から玉を産む可能性のある、もしくは産んだくのいちは、それだけで大役を果たしている。

体全てを、任務の道具として使用するくのいちが、その子宮に玉を宿すだけでも奇跡だ。
ほとんどが、医療忍術で体外受精。文字通り体を張って、里に貢献しているからだ。
オレ達男も、それは変わらない。けれど、それでもその体で玉を宿す事を選択したくのいちは、
皆から敬われ、尊重される。もう里の為に十分働いた・・・そういう事だ。

「なんじゃそりゃ、わけがわからん。独身で子持ちでもないなら、さっさと掻っ攫ってこいや。」
「この腰ぬけ! あんた、暗部部隊長襲名したんでしょう? 何ぐずぐずしてるのよ!!」
「お前の中に【アヤネ】しかいないのは、オレが痛いほど知ってる・・・ 訳を話してみろ。」
「先輩・・・。 はい。 実は・・・彼女ではなく彼。つまり、男性だったんです・・・」

オレは情けなくなった。こんなにコイツが馬鹿だったなんて。
お前の【アヤネ】に対する思いは、そんな事位でどうにかなってしまうものだったのか?!
男でも女でも、生きてそこにいるだけで・・・それだけでいいと、何でわからない?!
あまりの不甲斐なさに、一発入れようと思ったその時、テンゾウがオレに向かって吹っ飛んで来た。

そしてオレもろとも、壁まで一緒に吹き飛ばされる。 全く避け切れなかった・・・というか、髭!!
おまえ、テメーの女ぐらい、躾とけ!! すかしてヤニ吹かしてんじゃねえぞ、コラ!!

「ばかー!! 少しは先輩のカカシを、見習ったらどうなの?! カカシは来る日も来る日も
 イルカにスルーされ続けて、それでもあきらめないのよ?! この男のどこがいいのか謎だけど、
 木の葉一のモテ男が、プライドも何もかもなげうって、アピールしてる様子を見てごらんなさい!」

ゴフッ! 畜生、口の中が切れた。・・・く、紅・・・お前ってイイ女だったのな。
さすがアスマ。あいつは見る目がある、こんな女、なかなかそうはいない・・・ってか、
加減しろ!このウワバミ女! かわいそうに、テンゾウが横の壁にめり込んで、出てこねーじゃねーか!

どこからともなく座敷に入って来た店員が、テンゾウを壁から掘り出し、修理までして出て行った。
んー、さすがは居酒屋『THE☆上忍』至れり尽くせりだ。

「でもよ、ほんとだぜ? 相手が女だろうと男だろうと・・・穴がありゃ、一緒じゃねーか。」

髭・・・本音過ぎるからソレ。 もっと、オブラートで包もうヨ。 それじゃダメでショ?
ココいい場面だヨ? 盛り上りだヨ? オレは壁から出てきたテンゾウに言った。

「童貞とオサラバする日が実現できるんだ。 えり好みしてる場合か? 」

今度は髭と俺が、仲良く壁にめり込んだ。 さっきより数段上のウワバミの蹴りだ。
遠くで『THE☆上忍』店員の足音が聞こえる。 こちらに駆けて来た。 早く助けーてー。