内部監査忍 3
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そうか。 イルカ先生は、内部監査忍だったのか・・・・。 複雑でナゾな視線だとは思っていたケド。
コレは下手に報告される前に、本当のコトを伝えておいた方がイイかな。 オレの考えをネ。
頭でっかちのガキには、実戦で教えるのが一番。 忍耐力を鍛える為に“待て”を教えてる。
だから毎朝の遅刻はワザとなんだヨ? 仲間を置いて個別に行動したら、その時点でお仕置き決定なワケ。
「あー イルカ先生?」
「〈ギョ!〉 は、はい、なんでしょう、カカシ上忍。」
「今日、飲みに行きましょうか。 七班のコトでハッキリさせておかないと。 ネ?」
「は?! いえ、あの! 望むところです! じゃなくて、ぜひご一緒させて下さいっ!」
掃除してるフリして監査視線を飛ばしていたイルカ先生が、いきなり声をかけられてビックリしてる。
イヤ、あんだけ窓ガラスを覗いておいて、その驚き方はないでショ。 はは、目が真ん丸で仔犬みたい。
オレ忍犬使いだから、自慢じゃないけど犬大好き。 危うく、おいでおいでをしそうになったじゃないの。
もうばれちゃったのに・・・・ しぶとく窓ガラスに映ったオレに向かって話すイルカ先生。
「・・・・カカシ先輩、イルカ先生って・・・・ なんでこっち向いて話さないんですか?」
「んー もともと、こういう仲間の揚げ足取りみたいなの、得意じゃないんだろうネ。」
「そっか・・・・ アカデミーの先生ですもんね。 三代目も酷な事させてますね。」
「でもこんな監査忍、油断しちゃうヨ。 オレ達ぐらい疑り深くなかったら、騙されちゃうって。」
あ、ゴミ箱から紙を拾って、シワを伸ばしてなんか書いてる・・・・ さっき先生が判断して捨ててたヤツ。
いつもゴチャゴチャと山盛りになってる机周りが、小奇麗に整頓されていて見やすくなった、それは。
イルカ先生が三代目から信頼を得てる証拠だ。 三代目の机周りに何があるのか、全部把握してるんだネ?
こんなバレバレで鈍くさい忍びなら・・・・・ 相手が油断するに決まってる。 さすがは三代目火影。
「ナニ言ってくるのか楽しみにしてたんだケド、そうも言ってられなくなった。」
「先輩、上忍師になるの、夢でしたもんね。 不利な報告されたら嫌でしょう。」
「うん。 せっかくマシな下忍が出てきたのに。 取り上げられたくない。」
「ボクもいつか上忍師になりたいです。 まあ、ほとんどの上忍がそう思ってますが。」
オレはミナト班の唯一の生き残り。 四代目火影の夢を、オビト・リンの人生を代わりに生きると決めた。
木の葉の里を愛し、自分の出せる力で火の国の民を守ろうとした。 ミナト班の遺志を受け継いだんだ。
あの三人がシゴキに耐え、一人前になったら。 逝ったヤツらによくやったな、って褒めてもらえる気がする。
木の葉の上忍は、忍界大戦や九尾襲来を体験してるから、上忍師になるのは上忍の夢なんだーヨ。
「コレ。 ぜひそのお仲間もご一緒に。 ココでの飲食は三代目の負担ですから御気になさらずに。」
「あ、《みっちゃん》か、良く知ってる、ココ。 三代目の情人のひとり、美智子さんの小料理屋。」
「・・・・・・さっきから一緒にいらっしゃる暗部 猫班 部隊長さん、あなたも。」
「え、ボクも、ですか!? ・・・・・・先輩、どうすれば・・・・??」
「まあ、ご指名を受けたんだから、晩酌につき合ったらどう?」
「はあ。 カカシ先輩がそう言うなら・・・・。 ボクはやましい事ありませんから。」
おい、テンゾウ。 やましいコトがないってナニ? この前任務の時、大蛇丸関連でからかわれて、
その場にいた上忍 4〜5人、木遁で吊るしてたよネ? 二度と口にするなとか何とか言ってたよネ??
ソイツら三代目にチクったんじゃ? あと特上のアンコの呪印見たら、えぐりたくなるとか言ってたし。
エライことになったヨ。 カオルとアズサになんて言うかナ。 オレとテンゾウ監査対象だヨ、とか?
「それと、ご都合がついたら・・・ その、他の二名も。 四部隊長全員で、いらして下さい。」
「は? 酉班と猿班も?? イイけど・・・・・。 (アイツらなんかやったの!?)」
「・・・・それはつまり・・・・・ ゴクリ。 (暗部 部隊長の内部監査?!)」
イルカ先生がこっち向いて渡したしわくちゃの紙には、みっちゃんの地図と待ち合わせ時間が書いてあった。
明日の7時か・・・・。 オレはアズサに知らせるから、お前カオルを見つけて話しつけてこい。
監査忍を納得させるだけの理由を、ちゃんと考えておけと伝えるんだぞ? お前もだヨ、いいな?
アズサは家飲み派だから、この紙を渡してやろう。 外で飲まないからネ、みっちゃん知らないだろうし。
「では明日。 か、必ず皆さんでいらして下さいっ!! 失礼しますっ!」
「あ、ウン、明日ネ・・・・。」
「み、みっちゃんで・・・・。」
イルカ先生はいつも通り尻を押さえながら出て行った。 今日は両手で押さえて更にヘンな格好になってる。
パッとみは、垂直のお辞儀みたいに見えるケド、尻こっち向けてたらお辞儀の意味ないし。 腹ゆるいの?
ホント監査忍には見えないよネ。 ついポロリと、本音を言ってしまいそうになる。 怖いなー、もう。
飲みに誘われた。 これは四天王の陰謀を暴くチャンスだ。 みっちゃんなら三代目に話が筒抜けだし。
誰と一緒に来ただとかを、じっちゃんに美智子さんが報告するから。 俺が殺られても足はつく。
じっちゃんが、飲みに行く時はみっちゃんしか駄目だと言ったのは、こういう事を想定してたんだ、きっと。
金の事は気にするな、美智子の店の売上だからと。 そうか、コレが最後の晩餐かもな、ひょっとして。
ふたりもいたから、一体どこ見ていいのかわからなかった。 思わず場所を紙に書いちゃったよ・・・・。
しかし危なかった・・・・。 もうちょっとでまともに目を合わせるとこだった。 恐るべし暗部の眼光。
でも尻は大丈夫! 二重チェックは教師の基本、ダブルの効果でダブルの視線もシャットアウトだ!