内部監査忍 7   @AB CDE GHI




思った通りアズサはバックレようとしてた。 そんなに細工モノがいいのかっ! どSの根暗鳥頭女め!!
コレも思った通り、アズサが逆上して追いかけてきた。 自分を囮におびき出すなんて、オレって天才。
たまに空から急降下してくるから、地上はダメ。 瞬身移動でみっちゃんまでご案内だ、ついてこいよ?

「よ、お待たせ! や〜 早いね、みんな。 アズサ陽動して来たヨ!」
「カカシ!! もう一度言ってみな? 写輪眼をえぐり取ってやるっ!!」
「もう、何言ったんですか、先輩! 二階の窓から飛び込んでこないで下さいよ!」
「アズサが外飲みか、珍しい。 変化解いた方が良いぞ、女将さんが心配する。」

あ、あのっ! こ、ここは美智子さんのお店ですからっ! さ、三代目が黙ってませんよっ?!
(よし! よく言った俺!! 酒飲んでて良かった!! でも・・・・ こ、怖いよ、じっちゃんっ!)


「ちっ! だから外飲みは嫌なんだ。 色々、うるさいからね。 酉班のアズサだ。  解っ!!」
「声裏返して机に怒ってるのはイルカ先生。 オレの弟子の元担任教員。」
「・・・・女将さん、気付いてるよな、カカシ達が今来たことを。」
「多分。 忍術センサーがついてるから、そのうち見にくると思います。」

先生、机に向かって言ってるケド。 それは本音だネ? 三代目と繋がってるんだ、この店も、先生も。
監査忍のイルカ先生。 あ、そうか。 テンゾウ達が面を取ってるから、一応気遣ってるつもりなんだネ?
・・・・きっと本来はイイ先生なんだろうネ。 仲間を売るような、こんな任務はしたくないはずだ。
片手に持ってるのは、水筒?? ・・・・でも酒のニオイがする。 ちょっと貸しなさい、ソレ。

「あ!! か、返して下さい!!」
「コレ酒でショ。 そんなに嫌な事なら引き受けなきゃイイのに。」
「先輩、そんな訳にはいきませんよ、勅命なら。」
「さっき女将さんが、禁酒にしたって言ってたぞ?」
「別に良いじゃないか、酒ぐらい。 好きに飲ませてやりなよ。」

いや、でも・・・・ そうか、女将さん禁酒にしてたんだ? 素面で査定しろっていうコトだーネ。
でも本人は、酒の力を借りてまで言いたくないコトを言おうとしてる。 なんか可哀想になって来たヨ。
アズサの言う通り、酒ぐらい気の済むように飲ませてあげたい。 嫌でも何でも、任務は任務だからネ。
それに仮にも中忍なんだから、酒に呑まれるようなコトはないと思うし。 はい先生、コレ返すから。

「・・・・・酒飲みながら聞いてネ? オレはさ・・・・・・。」


「アタシはワイン、色も銘柄もなんでも良いよ?」
「ボクは焼酎、んーっと “千年の孤独”ロックをシングルで。」
「おれはバーボンならなんでもいい、ダブルのロック。」

「「「ハイッ!」」」

チョット! ヒトがせっかくカッコよく・・・・ オレ? 日本酒でいいや。 辛口ならなんでも、冷でネ。
お、ウチの下忍だ。 美智子さんに頼まれて手伝ってるんだ? んじゃ、軽く幻術でもかけとくか。
暗部の、それも部隊長の顔を覚えてたら、ナニかと後々面倒に巻き込まれると思うからネ。 写輪眼っ!
はい、これでOK。 ココにいる人達は全員仕事帰りの、ただのアカデミーの先生だから。 ネ?

「う・・・・ すみません。 俺、酒飲まないと勇気が出なくて・・・・。」
「まあまあ、この際だからサ、オレ達になんでも疑問に思うコト聞いてヨ。」
「  思ったより気さくな方達だ。 言いくるめられない様にしなくちゃ・・・・  」

「「「「・・・・・・。(しっかり聞こえてるから。)」」」」


水筒のお酒をゴクリと飲み、小さく呟くイルカ先生。 相手の階級が遥かに上でも、頑張らなくちゃネ?
丸聞こえだケド、ちょっとはリラックスできたかナ? イルカ先生の視線は手の中の水筒のコップへ。
ナンかのキャラが描かれている水筒のコップを時折なでては、ウン、ウンと大げさに頷いていた。
オレはどうして遅れるのか、その理由をイルカ先生に聞かせた。 忍耐力と連帯感を持たせる為だと。


「・・・・イルカ先生だったな? カカシは、まあおれ達もだが。 弟子が欲しい。」
「アタシ達のいる所はさ、部下が進んで命を投げ出しちまうのさ。 勝手なヤツらだよ。」
「自分も、仲間の命も大切にする下忍を育てたいんです。 里の上忍は皆、そうですよ。」
「でも子供ってどう接してイイのか。 エロ本読んだりして、リラックスさせたり、ネ。」

まあ嘘じゃないヨ、弟子の指導なんて影分身でもいいぐらい。 あんまりヒマだから、つい。 ネ?
それに上忍師がフレンドリーに接してあげると、アイツらだってノビノビ出来るじゃない。 ミナト班も。
四代目火影が上忍師だった頃の、オレ達みたいにサ。 ははは、でも、ひとりでつっぱってたけどネ。

なんかサ、似てるんだよネ。 うちは一族なのに落ちこぼれのオビトとナルト。 エリートなオレとサスケ。
医療忍者の資質があったリンと同じくサクラも。 んで、ナルトは四代目の息子で、サスケはうちは一族。
全員が、仲間を大切にするコトを知っていた。 オレが違えた道をちゃんと進むかもしれない。
だからオレの下忍認定試験は、上忍の命令より仲間を取れるか、なんだヨ。 突破した卒業生は初めて。


「うぅ・・・・ うぅぅぅ・・・ わぁ〜〜〜ん!! ガガジ上忍っっ!!
「イ、イルカ先生?! ナ、ナニも泣かなくても・・・・。」
「ち、ちょいと! アンタ! なんだい、なんだいっ!!」
「えっと・・・・・ あ、タ、タオルどうぞ・・・・・。」
「・・・・・つけ込め、カカシ。 情にもろそうだぞ?」

あ、カオルもやっぱそう思う? オレもネ、この流れは、お涙チョウダイでイケると思う。

そう言えば三人が、イルカ先生は女の裸体で鼻血吹いた、とか言ってたっけ。 ノリのイイ先生なんだよネ。
アカデミー生の悪戯には引っかかってあげましょう。 これは三代目からの辞令。 オレも例にもれず。
黒板消し落としに引っかかってあげた。 でも、体力は使わなかったヨ? 体張って指導してるんだネ?

机に突っ伏してワンワン泣いてるイルカ先生のチョンマゲがブルブルしてて、無性に引っ張りたくなった。