内部監査忍 8   @AB CDE FHI




・・・・・これはチャンスかも。 心当たりありません、とか強気に出たけど。 ボクも実は危ない。
監査忍がこれだけ情にもろかったら、ボクにだって同情してくれるはずだ。 大蛇丸の生体実験の産物。
だからボクは、あの女言葉を話す蛇野郎が大嫌いだ。 ついでに言うと酉部隊の大五郎もムカつく。
あのサイコ野郎をいまだに師匠と呼ぶ、みたらしアンコの呪印を見ただけで、首に木を生やしたくなる。

「アタシはさ、物心ついた時から虐待を受けてたんだ、殴る時は愛情を込めるようにしてる。」
「おれの一族は危険だと滅ぼされ、木の葉だけが救援に来てくれた忍びの里だ。 恩は返す。」
「イルカ先生、ボクの蛇嫌いには訳があるんです、聞いてもらえますか。 実は・・・・・。」

ボクと同じように、それぞれが感じたらしく、一斉に暗い過去を語り始めた。 イルカ先生はもう号泣だ。
ひょっとしたら査定報告書には、これ以上素晴らしい人材はいません、とかなんとか書いてくれるかも。
大事そうに抱えていた水筒のお酒も飲みほし、どこに隠し持っていたのか、鬼殺し1.8Lから注いでいる。
いや、別に水筒のコップににこだわる必要ないじゃないですか、湯呑で飲めば? とか思うけど。

「・・・・その水筒、気に入ってるの? コップに顔が描いてあるケド。」
「はい、ナルトのナイトキャップのキャラ、キャッツフィッシュ君です。」

「・・・・・ナマズだろ? キャットフィッシュってたしか・・・・。」
「キャッツフィッシュ君です! サスケはリストバンド、サクラは靴下をあげました。 お揃いです。」
「ナマズでも何でもいいからさ、いい加減泣きやみな。 男が泣き上戸だとはね、呆れるよ!」

「うぅ・・・・ すみません。 でも、でも皆さんに対して俺・・・・・ うぅぅ わぁ〜〜〜ん!
「ア、アズサさんっ! せっかくおさまってたのに、もうっ! はい先生、タオル!」


ボク達四人は顔を見合わせて親指を立てた。 よし、手ごたえ十分だ。 印象はバッチリ、逸材で決まり!
忍界大戦・九尾襲来と経験してるから、皆似たり寄ったりの暗い思い出はある。 きっとこの先生にも。
でもここまで激しく号泣されるなんて、ボク達どんだけ不幸なんだ、とか再確認しちゃうんだけど?
イルカ先生は誤解してて済みませんでした、とひたすらに泣いている。 どんな顔してるのかな、今。

・・・いや、ボクも思わず引っ張ろうとしたけど。 アズサさんがイルカ先生の髪の毛をムンズとつかんだ。
それでも頑なに机に顔を突っ伏してるイルカ先生。 髪をビヨーンと引っ張って左右に振るアズサさん。
つられて顔が左右に振られるけど、頑張ってボクの貸してあげたタオルで顔を押さえ続けている。
痺れが切れたらしく、ヒョットコみたいに頬を掴んで、グイッと先生の顔を上げさせた、ブラボー!


「え゛っく、え゛っく、うぅ・・・・。 世界征服とか、うっく、陰謀とか、ひっく、 わぁ〜〜〜ん!
「「「世界征服? 陰謀??」」」

「イ、イルカ先生! 世界征服って?!」
「ちょいと! どこの誰の陰謀だい?!」
「人柱力のナルト、写輪眼持ってるサスケ、うっく、利用されたら・・・・ 思うだけで・・・ひっく!」
「ナルトとサスケが?! ホントなの、イルカ先生っ!!」
「・・・・コレを打ち明けたかったんじゃないのか?」

「俺、馬鹿ヤローです・・・ うっ、もっと早くに話せばよかった、うぅうぅ〜・・・・・。」
「マズイね・・・・・ 親父様に報告した方がいいんじゃないかい?」
「・・・・・内部監査忍ではなく、“極秘情報を聞いてしまった先生”だったのか。」
「ボク達、暗部の部隊長を集めたのは、信じてもらいたかったからなんですね?」
「どこの誰の情報なの? ネ、イルカ先生、教えて。 信じてあげるカラ。」

イルカ先生の口から衝撃的な言葉が出た。 そう言えば組織がどうの、ってボクとカオルさんに・・・・。
組織? 暗部の部隊長を集めた?? 元暗部で、いや、厳密には今も在籍中のヤツがいる。 まさか?!
傭兵組織 暁に内部潜入しているイタチからの情報なのか!! イタチめ、弟の担任を繋ぎに使ったな?
イルカ先生は監査忍じゃなかったのか。 でもこんな話を誰にして良いのかどうか、迷いに迷っただろうな。


「イルカ先生、悶々としてたからネ。 でもイタチの情報は確実。」
「さすがは、うちはイタチ。 まさかの人選じゃないか、あはは!」
「お前の蜂面はそのままにしてある。 早く帰って来い、イタチ。」
「そう言えばイタチ、猿部隊でしたね。 いないから忘れてたけど。」

こんな大役を任され、暗部の誰に言って良いかさえ迷って。 カカシ先輩に視線を飛ばしていたんだね?
ふふ、イルカ先生はナゼかタオルを吸っている。 チューチューと。 子供が指しゃぶりするみたいに。
泣き疲れて眠ってしまったのか・・・・。 極度の緊張と安心感で子供返りしてしまったのかも。

・・・・・なんか。 無償このタオルを引っ張り出してみたくなった。 ・・・・・えいっ!

口からタオルを引っ張り出してみたんだけど、イルカ先生は起きない。 口は虚しく空吸い状態だ。
吸っていたタオルがないから、チュッチュッ、チュッチュッと、実に可愛らしい音をさせている。
つい、指を突っ込んでしまった。 おもわず指を吸わせてみたくなったのは、ボクだけじゃないはず!