狛犬さんの事情 4   @AB DEF GHI




イルカ君がこの建物の中に連れ込まれたのは分かった。 中で何やら怪しい展開になっている事も。
てか、カカシ先輩、加勢しなくていいですから! 危うく同胞殺しをしそうになったじゃないですか!
ボクはもうほぼ完ぺきに木遁を操れるんですよ! ボクの支配下にないモノを、生やさないで下さいっ!
・・・・・え? 使う機会がないだろう術だから、一回試したかった?? ・・・・・哀れ中忍ズ。

そうそう、カカシ先輩は昔から探究心旺盛でしたよね。 イルカ君にしても、迷子癖はいまだ健在だし。
・・・・は? ボクのノリツッコミも、ですか?? ・・・・そりゃどうも。 部隊長補佐、ですから一応。
部隊長の独走を諌めるのも、それに乗っかるのも。 どちらも補佐としてボクの役目だと自負しています。

なんだかんだで、人の根本的なところは何も変わらない、という事ですよね。 ボクと先輩はさて置き。
問題はイルカ君だ。 美味しそうに育っちゃったから、迷子になるキッカケの内容が変わってしまった。
昔は、話しかけ易そうオーラを放ち、頼まれ事をされては迷子になっていたイルカ君。 でも今は・・・・
従順そうオーラが加わり、騙し易そうな雰囲気を醸し出している。 騙す側としてはまさに理想のカモ。

「取り合えずオレ達も、さっきの中忍ズが覗いていた天窓から、様子を窺ってみる?」
「あの場所からだと、中が一望できるんでしょうね。 どことなく嬉しそうだったし。」
「・・・・・・ねぇ、テンゾウ。 これもやっぱりな展開だと思う? オレ、暴れちゃってイイ?」
「・・・・・・そうですね、多分。 そうなったらボクも乗っかります。 一緒に暴れますから。」

中忍ズは、忍び崩れが二人ほど混ざっていると言った。 忍び崩れとは、忍者アカデミーの退学者だ。
隠れ里で額当てをもらえなかった者の総称。 こういうくだらない犯罪には、そういうのが混ざってる。
今回もやっぱりそうらしい。 ちょっとばかり人と違う力があるからと忍者を目指したが、所詮はこうだ。
情けない話だけど、忍びの力の源であるチャクラ質を悪用する馬鹿は、この世の中に腐るほどいる。

世間さまにバレたらマズイだろうと、そんな脅しのネタにされる様な写真なんて、容易に想像がつく。
ただ脱がされて恥部の写真を撮られているだけなら、まあ大目に見て瞬殺だ。 けどもし・・・・・
もし必要以上にイルカ君に触れていたら・・・・ 楽に殺してやらない。 先輩と一緒に暴れるよ?

忍び崩れが混ざっていたからか。 なかなか頭がいいからね、イルカ君も騙されちゃったんだろうな。
建物のあちこちに出来の悪い札が貼ってあったりしてる。 でもまあ、本物の忍びには意味ないけど。
任務の最終目的は、悪質詐欺集団全員の暗殺。 けれど先に、イルカ君を助け出さなきゃならない。







ペタリと天窓に貼り付いて確認してみた窓の下。 ざっと六人の男達が、イルカ君をとり囲んでいる。
どこかの工場の跡なんだろう、古ぼけた何かの部品が隅に積み上げられ、真ん中に空間が出来ていた。
悪質詐欺集団は全部で六人らしい。 忍び崩れの二人も入れて、全員がこの建物の中に居るという事だ。
撮影の為だろう、カメラはもちろん、大きな丸いベッドと照明器具も。 そして玩具道具一式。

「・・・・・ねぇ、テンゾウ。 オレ、あまりに予想通りで声も出ないんだケド。」
「・・・・・ガイさんに援護任務を依頼した日々の記憶が・・・・ 甦りますね・・・・・。」
「よく、ちょっと胸の病で・・・・ とか。 抱きつかれてたりしたよネー。」
「どっちかと言うと、押し倒されていましたが、“大丈夫ですか?!”って親身になって・・・」

「小隊行動だからと安心していたオレ達にこそ、雷切りかましたくなってくるヨ。」
「感電するならカカシ先輩だけにして下さい。 ボクは蔓で窒息にしておきます。」
「チョット。 そこは死なばもろとも、ご一緒します部隊長・・・・ でショ?」
「イヤですよ。 黒焦げになるより、草木に囲まれて逝きたいですから。」

イルカ君はベッドの上に転がされ剥かれている。 忍び崩れの二人がイルカ君を言いくるめてるっぽい。
一応木の葉の中忍・・・・ になったばかりだけど、それなりのスキルは積んでいるのにもかかわらず。
ちょっとはチャクラコントロール出来る忍び崩れの様だ。 でもね、こっちは治まりそうもない。
ボク達の元気な息子は、年頃の青少年事情によりとんでもない事になっている。 今にも発射しそう。

「では、どっちもかましましょう。」
「ンー、いいヨ? 暴れちゃおう。」
「木遁っ! 樹海降誕っっ!!」
「雷遁っ! 特大雷切っっ!!」

こんな雑魚どもに、ボク達のスペシャルな技をお見舞いするのはチャクラの無駄遣いだって、分かってる。
瞬殺してやるつもりはなかったけど。 じっくりジワジワ弄り殺してやろうかと思ってたけど。
イルカ君のイヤーンな姿を見たら、息子を鎮める時間すら惜しい。 とっとと絞殺、死体は丸焦げ決定だ。