あなたな生活 4   @AB DEF GHI JK




いくらヨチヨチの仔犬に変化していたとはいえ、ウルシは先輩の忍犬。 そうやすやすと攫われるか?
・・・・ストラップ? よくよく聞いてみると、イルカに術をかけられて解けなかっただけらしい。
イルカはウルシに術をかけ、小さな犬のストラップにして、それを自分の腰に素早くぶら下げた。
バラ赤とパン白の格闘は無駄じゃなかったんだ、その間に即席ウルシストラップを作れたんだから。


三人で育てた防犯用のあなたな花が苦戦してる、自分では敵わないと瞬時に判断したんだろうね・・・・
今、攫われたとしても。 ウルシを身につけておけば後で必ず口寄せする、助けが来る、と信じて。
こんな時に何だけど嬉しい。 イルカが一般人でなくて良かった。 涙もろくてもさすが中忍!

ウルシは忍犬、しっかりとイルカが監禁されてる場所を覚えてる。 連れて行かれた場所を明確に。
人の恋路を邪魔する奴は、馬に蹴られて死んじまえ! って言うけど。 馬じゃなくて暗部だから。
鎖に繋がれた狂人から暗部四天王へ、スーパー成長を遂げたボク達だから。 蹴るだけじゃ済まさないよ?


脇目もふらず駆け出した。 走る度にフリフリして可愛いウルシの尻尾を見ながら、ボク達も駆けた。
ストラップにされてイルカの腰でプラプラしてたのか・・・・ それもなんだか可愛いな、と思いながら。
動物をストラップにする術? 変化の応用? 可愛いだけで、何の役にも立たなさそうな術が役に立った。

・・・・・・ナルトフェチのイルカ。 もしかしたらこの術は子供を・・・・ ナルトを喜ばそうと??

戦場では食料の動物を捕まえても、わざわざストラップにしないけど。 お子チャマ達なら大喜びだ。
ひょっとして術のアレンジ、得意なんですかね? むちゃくちゃアカデミー教師向きじゃないですか。
なんか。 アカデミー教師になったらなったで、その他大勢の坊やにヤキモキしそうですよね、ボク達。

「カカシ、テンゾウ! この先の森の中にある隠れ家にいる!」
「・・・・・・・・どこからどう見ても、里の外れにある迷いの森ですが。」
「・・・・・・・・この森の中に隠れ家持ってる上忍って、結構多いよネ。」
「「まさか、木の葉の同胞??」」
「分からない。 ストラップにされてたから視界はイルカの腰から下だけだったし・・・」


その名の通り、迷いの森では迷って餓死する恐れがある。 けれど、意外に足を踏み入れる者が多い。
ここでしか採れない草花・山菜・薬草がたくさん自生してるからね。 でも、遭難対策もバッチリ。
一般人や下忍になりたての忍び、医療忍者の卵など。 迷った人の為に森中央には“森の宿”がある。

もし森の中で迷ってもこの宿で休んで待っていれば、里の情報分析部に連絡がいくから何の心配もない。
でも森に迷い込んだ他里の忍びは別。 里方面から森に入った者だけ、宿にたどり着ける様になってる。

つまり里外方面からこの森に入ったら最後。 宿も発見できず永遠に森の中を彷徨い続ける事になる。
ボクにも人工的に流れている血。 ご意見番のご老人達が心酔してる初代様が、そう造ったらしい。
ウルシが足を止めた所は、木の葉の里外れにあるここ、迷いの森。 他里の忍びには墓場も同然だ。

てっきりボク達の首を狙った賞金稼ぎの連中か、報復目的の他里の上忍か。 そう思ってたのに・・・・
どうやら同じ木の葉の忍びの様だ。 肉食系植物のバラ赤とパン白を倒した実力からみても上忍だな。

「そう言えば。 “生きていたんだな”とかなんとか・・・・ 言ってたような・・・・・」
「「・・・・・・・・・・。」」

「イルカは三年の潜入任務を終えて休暇中。 家では忍服じゃなかったよネ?」
「私服姿で・・・ 髪も・・・ 店で働いてた時と同じ様に緩めに束ねてます・・・・」
「「・・・・・・・木の実の常連客だ!! 」」
「??? 木の実?? 何の??」
「「食い物じゃないっ!! 店の名前っ!」」



しまった。 敵は長期で里を離れていた独身男や、育児放棄型の海千山千クノイチだけじゃなかった。
木の実は火の国の花街の中のカウンタースナック。 忍びにだけ反応する結界が張られた草寄せ場。
ボク達はあの店ではただの上忍として接してもらってた。 それが居心地よくて通う様になったんだ。

マスターは言ってた、木の葉の上忍はダイヤモンドだと。 ボクとカカシ先輩だけが客なはずはないっ!
同じくホッコリしに行ってた上忍も・・・・ きっといたはず! 草寄せ場と草狩り忍は極秘情報。
暗殺するから放火犯を探してくれと言ったボク達だから知り得た情報。 正規の上忍が知る訳がない!

それとは知らずに、里で私服のイルカを見かけたら? 木の実のイルカちゃんが生きていたと・・・・
これは奇跡だとか運命だとか、天啓にも似た衝撃が走っただろう。 今手に入れずどうするんだ、と。
前方の敵を警戒するより、後方に潜んでる敵を警戒すべきだった。 こんな初歩的なミスを犯すなんて!
短期受付嬢対策より、坊やが増える心配より、木の実の顧客対策が必要だったんだ! なんてこったっ!


「・・・・ウルシ、その上忍の隠れ家の場所も分かるでショ?」
「もちろん。 見えてなくてもおれたちには鼻がある。 さっき通った道のニオイは忘れない!」
「さすがカカシ忍犬チームの一員、頼りになる存在だね、ウルシ。」
「へへへ! なあ、カカシ、テンゾウ。 あの凶暴なバラとパンジーは・・・・・」

「・・・・残念だケド、首チョンパだったヨ。 そうとう頑張ったみたいだったけどネ・・・・」
「大丈夫、バラ赤ジュニアとパン白ジュニアを植えるから。 今度はもっと凶暴な奴にする!」
「で、できれば肉食じゃないヤツがいいな・・・・ 例えばほら・・・ 捕縛型、とかさ?」
「「なるほど捕縛型か。 それはそれでいいかも。」」
「・・・・・ほっ!」

なんだかんだ言っても忍犬もワンコ、褒められると喜ぶんだよね。 ウルシは尻尾まで嬉しそうだ。
ボク達に褒められたせいか、駆けだす足取りが妙に軽くなったウルシの後を、慎重について行く。

迷いの森に隠れ家を持つ上忍。 きっとイルカをそこに囲ってあなたな生活をするつもりだろうけど。
残念ながらもうイルカはボク達と婚約したんだ。 そこのところをしっかりくっきり話をつけなくちゃね。