一目あったその日から 10   @AB CDE FGH




「くぅ、苦いのぉ・・・ この苦さがたまらんのじゃ。 美味い、美味い、ほほほほ。」
「あははは、やっぱり、ヘン! じっちゃん、いっつもそのリアクションだね?」
「おお? このほろ苦さは、なかなか・・・ イルカちゃん、相変わらずイイ仕事するね〜」
「えへへ、ありがとう、コウさん。 でも、三代目と同じ味覚? ヘンなの。 クスクス。」

ボク達は、侵入者が持ち込んだ謎の物体Xの死骸を、情報分析部に持っていって、三代目に報告した。
しかし昨日は、本当に不思議な体験をした。 あんな生き物を開発しただなんて・・・ どこの里だ?
まだあの侵入者は口を割ってはいないが、ウチの拷問部にかかれば、一週間で明らかにされるだろう。
昨日の功績のお駄賃として、ボク達は火影室で“つくしのゴマあえ”を、味見させてもらっている。

「・・・・・・テンゾウ、コレさ。 美味しいって思う?」
「・・・・・・イルカ君には嘘はつけません。 まずいです。」
「やっぱ、三代目の好みは・・・・  ナゾだねぇ。 コウもとうとう、ジジイの仲間入りか。」
「ボク達も、もうちょっと年取ったら、美味しいと思えるんでしょうか?」

「もしもし? 暗部のキューピットをジジイ呼ばわりして、タダですむと思ってるのかな〜?」
「この味がわからんお主たちは、まだヒヨコじゃな。 はやく育ってタマゴを量産して欲しいのぉ。」
「ムチャ言わないで下さいよ、オスはタマゴを産みません。」
「オスは食用ですよ、ひたすら働けってコトですか?」
「あははは、なにそれ、俺達ニワトリなの?! あははは!」


あの生き物が、なんであんな風に見えたかというと、アレを触った時のボク達の感情が混ざったから。
赤い色は、ほら、よく言うでしょ、運命の赤い糸って。 先っぽがツクシだったのは、ごく単純な理由。
ツクシの入った袋を見て“あ、ツクシだ”って、ボクが思ったから。 二本だったのは、先輩とボク。
絡みついて縛りつけたり、後ろの穴を犯したりしたのは、言わずもがな、ボク達の抑えてた強い願望だ。
今思ったけど、カサの開いていないツクシって・・・・ 男のブツの先に似てると思わない?


「じっちゃん、アイツ腹立つんだよ? 俺、浣腸されたんだからっ!」
「あ・・・ イ、イルカちゃん、それオフレコ・・・・」
「カカシさんとテンゾウさんが助けてくれたんだ! カッコよかったー!  まじアイツ危険っ!」
「イルカや・・・・・ それは、まことか?  カカシと、テンゾウがの・・・・ ほぉ。」

「え、あ、あの・・・・こ、この展開は・・・」
「んー、ちょっと、マズイ・・・よネ・・・」

謎の物体Xは、実際かなり危険だ。 人の感情を読んで実体化し、それを実行するのだから。
もし、アレに触る時に恐れてしまったら、恐怖の感情を読まれる。 尾獣九尾の記憶はまだ新しい。
恐怖から連想されるのは妖孤九尾。 この里のほとんどの人が、九尾を真っ先に思い浮かべるはずだ。

霧状のアイツは、九尾になる。 少なくとも触った本人の目にはそう見える。 そうなると最悪だ。
“九尾が出た!”と、そいつは逃げる。 恐怖にかられた人々は、その声に皆、尾獣九尾を思い出す。
人々の恐れが産んだ九尾に里は再び襲われる。 今度は自分達の恐怖心に喰い殺される事になるんだ。


「・・・・ アレに触ったんじゃな? ワシは注意しろと、書いたはずじゃぞ?」
「えっと・・・・ ま、結果オーライじゃないですか、秘密裏に始末するコト出来たんだし?」
「そ、そうです! 使いこんだイチモツみたいになってましたが、九尾の死骸になるよりは・・・」

「・・・・・イルカが中忍になったら、しかるべき場所に、ワシが連れていく予定をしておった・・・。」
「じっちゃん、どっか行きたいの? でも里が落ち着くまでは、俺達、まだ贅沢しちゃダメだ。」
「うむうむ、イルカや・・・ なんと里思いな子じゃ・・・・」

三代目は、昨日イルカ君に何が起きたか、おおまかな事を推測したらしい。 多分、当たってる。
カカシ先輩とボクの、イルカ君に対する昨日の行為も、悪戯じゃないと気付いたかもしれない。
筆下ろしもまだの激ニブな下忍。 そんなイルカ君に、並々ならぬ執着をみせているボク達ふたり。

火影様は、許してくれるかな、どうだろう? 三代目も、特に可愛がってるみたいだし・・・・

「・・・・・・イルカの尻に破廉恥な事をしおって・・・・ この、たわけ者が!!」
「じっちゃんっ!!  カカシさんとテンゾウさんは、たわけ者じゃないよっ!!」
「うぅ・・・・ イルカ君には嘘がつけな・・・・・  いでっででっで!!!」
「男には秘密のひとつやふたつ、あるもんなんだヨ。 ・・・・耳、引きちぎるヨ?」

本気だ! カカシ先輩、今、本気だったっ!!  でも・・・・ 確かに先輩の言う通りかも。
イルカ君に幻滅されて嫌われるぐらいなら、今はあえて嘘をつき通して、惚れてもらう方がまし。
コレは死ぬまでつき通す嘘じゃない。 ラブラブの恋人同士になったら、笑って種明しできる様な嘘。
“このエロ暗部っ!”って、2、3回ブッ飛ばされればイイだけだ。 イルカ君なら、きっとそうする。


「まあ、まあ、三代目。 今回ふたりの感情が、里をパニックになる前に救ったんですよ〜?」
「うむむむむむ・・・・・・ そう言われてしまえば、罰する事も出来んの・・・・。」
「そ、そうですよ、恐怖心なんか、ちっとも起きませんでしたよ、イルカ君を前にしてっ!」

「カカシさんも、テンゾウさんも、すっっっごく、カッコよかったんだよ? じっちゃん!!」
「・・・うむむ。 今回は、イルカの鈍さに免じて見逃してやる。 ・・・・じゃが、次はないぞ?」
「肝に銘じマス!  オレ達の願望がピンチを救った! 欲望は里を救う!! ・・・デショ?」

この鈍さもイルカ君の魅力のひとつ。 中忍になったらボク達が筆下ろしをする、これはもう決定!


ボクもカカシ先輩も、一目あったその日から、あの弱っちい下忍が気にいった。 真っ直ぐな目。
弱いのに・・・・ きっと、誰よりも強い。 料理も小料理屋の台所を貸してもらえるくらい上手。
男のくせに、泣き顔が可愛いし温かい。 コレを手に入れなきゃ、死んでも死にきれないよ。

「イルカ、次はいよいよ中忍だーヨ?」
「もちろん! 中忍試験が開催されたら受けるよ!」
「頑張って、イルカ君! 応援してるから!」

「・・・・・・まあ、あそこまで待つ覚悟でおるなら、よかろうて。」
「さすが、三代目っ! そうこなくっちゃ!」


ボク、あのイルカ君を見て、すんごーーーーーく、欲情しちゃったんだ。 だから改めて思いました。
カカシ先輩、ほんとに頑張って耐えていたんですね、この渦巻く欲望に。 心の底から尊敬します。
でも、耳はガードしよう。 いつかもがれそうな気がするよ・・・・ 特注の額宛てでも作ろうかな?




はい、懐かしの某TV番組のフレーズです。(笑)  隊長の額宛てが耳ガードに見えて仕方ありません。   聖