一目あったその日から 2
@BC
DEF
GHI
カカシ先輩が言ったこと、ホントなのかなぁ。 コウ部隊長が、暗部のキューピットって・・・・・。
考えたくないけど、もしそうなら、きっとボクの私生活に関与してくる。 片思いって言っちゃったし。
ボクの気になるイルカ君は、実はボクと同じ男性。 おもしろがって、遊ぶに決まってるよ。
イルカ君はボクにとっては特別。 だから絶対、嫌われるようなことはしたくない。
「許さん、却下じゃ。」
「う・・・・。」
「だいたいなんじゃ、そんな理由で。 根性なしめ!」
「ボ、ボクにだって、プライベートを楽しむ時間があっても、いいじゃないですか・・・」
大切な人に迷惑がかかるので、暗部を辞めさせて下さい、正直にそう火影様に言ったらコレだ。
おまけに“暗部は下剋上、悔しければ、お主が部隊長になれば良いだけじゃろ”ときた。
全くその通り、正論だ。 それはボクも賛成だけど、悔しいかな今のボクじゃ無駄な事も知ってる。
猫部隊のコウ部隊長には・・・・ 意表をついて隙は作れても、実力じゃかなわない。
「木の葉で唯一の木遁使いが、聞いて呆れるわ! シャキッとせんか、シャキッと!」
「・・・・・あのペテン師の部隊長達に、かなう訳ないじゃありませんか・・・・。」
「ほほほ。 ペテン師とは良く言ったもんじゃ。 あ奴らは隊員の扱いに、長けておるからの?」
「昨日、始めて気付きました。 戌、猫の両部隊は、仲が良いって。」
「うむ。 学ぶべきところは、しっかりと学べ。 強くなれテンゾウ。 下剋上じゃ。」
「ははは、一応、頑張ります、やれるだけは。 無駄に終わるかもしれませんが・・・。」
そもそも部隊長が、入隊祝いに廓につれて行ってやるなんて、ボクに言うからだ。
女はもういいんです、今のボクには必要ないですって断った途端、目の色が変わり、質問攻め。
心に決めた子がいるのか、どんな子だ、年は・・・・・ 部隊長が問い詰めだしたから、ボクは逃げた。
そこへすかさず、ボクのイジメセンサーが付いている、カカシ先輩の登場だ。 ふたりに挟み撃ちされた。
昨日はなんとか振りきったけど、今日またふたりで来られたら、もう逃げられない・・・・。
「・・・・はぁ。 なんとか回避するコトできないかな・・・・。」
「テンゾウさん、今、落ち込んでる?」
「!!! イルカ君?! いや、あの、そんなことない、全然ないよ、元気、元気!」
「えへへ、じゃ、つくし摘みに行く? じっちゃんに、ゴマあえ作ってあげるんだ。」
「い、行くっ!! ・・・・・でも、ツクシって・・・ ボク、分からないんだけど、何?」
「大丈夫、見ればすぐ、コレかってわかるよ? 堤防に生えてるから。 行こ?」
ブルーになって、トボトボ火影室を出た・・・・ら、部隊長達から遠ざけたい張本人が目の前にいた。
心配そうな瞳は瞬きもせず、じーっとボクを覗きこんでいる。 やめてほしい、心臓に悪いから。
ボクが元気だと言ったら、やっとその直視を止めてくれた。 イルカ君は真っ直ぐに人の目を見る。
この瞳の前で、嘘はついちゃいけないと、ボクが思ったのはもう二年も前のこと。
「これって、食べモノだったの? 雑草の一種かと思ってた・・・・。」
「あははは、これはカサが開いちゃってるから、あんまり美味しくないヤツ。」
「じゃあ、コレは駄目だね? こっちのも。」
「こういう、ちょっと土から顔を出しててカサが閉じてるヤツを、いっぱい探して?」
「わかった! ・・・・・なんかこういうのイイよね、 その・・・・
デ、デートみたい ・・・・ じゃ、ない? 」
「じっちゃんオモシロいんだよ“くぅ、苦いのぉ”って、美味しそうに食べるの。 変だよねぇ?」
「・・・・・ 見事なスルーだね ・・・ そ、そうなんだ? はははは・・・。」
イルカ君はもの凄ーく鈍感。 人の事には敏感なくせに、自分の事には超激ニブイ。
普通、ボク達の年頃で、気にいった相手とふたりきりで出かけたら、意識するよね? ちょっとぐらい。
確かに、食料をタダで調達に来た、と言ったらそれまでだけど? しかも火影様の為に、だし。
でも・・・ 暗部に入ってもこうやって、変わらず声をかけてくれるのは、嬉しい。
暗部はエリート集団だと遠慮されたり、殺人集団だと怖がられたりしたら、きっとすごく悲しかった。
「そうなんだ〜、こういうの探せばいいんだね〜。」
「んー、火影様、チョッとクセあるのが好きだからねぇ。」
「 ぎゃっ!! ぶ、部隊長! カカ、カカシ先輩!! 」
「あ、コウさん、カカシさん、おはようございます!」
「イ、イルカ君?! な、なんで・・・」
「相変わらず、ほのぼのオーラ出しまくってるね、イルカちゃん。」
「また三代目に貢物してるの? イルカ、オレにも後で味見させて?」
「そうだなぁ、手伝ってくれたら・・・ いいよ?」
「・・・・・・なんで?! なんでぇーーーーっ!! 」