人生の楽しみ 1   ABC DEF GHI




「火影様、ボク達の蜜月を、また邪魔するんですか?」
「やかましい!! 出来る事なら、ずーーーーーと邪魔したいわ!」
「そんな怒ってばっかりいると、ますますハゲますよ?」
「ワ、ワシはまだハゲとらん!! ちょっびっと気になるお年頃じゃ!!」

せっかくイルカちゃんに、猫のキグルミを着せて遊ぼうと思ってたのに・・・。
この前先輩が、イルカに着せてみる、と犬のキグルミを買って帰って来た。 特注したらしい。
キャバリアキングチャールズスパニエルとかいう、難しい名前の犬種のキグルミだ。

無理やり着せて、食事の用意をさせてみた。 パタパタ揺れるシッポとペタペタはねる耳。
まだ着てなきゃダメ? と、時々こっちを振り返っては、確認してくる不安げな表情。
あんまり可愛いから、先輩もボクも、10分と我慢できずに襲った。 あの時は楽しかったな。
イルカちゃんったら、もう、必死になって抵抗して・・・ 絶対勝てないのに。 くすっ!

「あでっ!! もう、なんですか。 暴力反対!!」
「いやらしい顔して、思い出し笑いなんかしとるからじゃ、たわけ者!」
「あ! この前のアレだろ? いや〜、あの仕立屋、イイ仕事するよネ〜 イデッ!!」
「おぬしもじゃ! そろいもそろって・・・ いい加減、思考からイルカを切り離さんか!」

え〜 それは無理です。 だって重婚して間もないんですよ? そこら辺は多めにみて下さい。
やっとみつけた、ボク達の宝物なんだから。 いろんな方法で、愛でたいと思うのは当然でしょ?
ちゃんと任務はこなしますから。 今だって、呼ばれたらすぐ来たじゃないですか。
ほんとなら、今度はボクが特注した、マンチカンのキグルミを着せる予定だったところを。

「お前達も良く知っている、花の国から、お主たちに指名の任務依頼じゃ。」
「指名? なんでですか? いや、別に何でもいいんですけど。 今までなかったから。」
「この前、黒紫陽花の群生地を完璧に確保したじゃろ? それが気にいったらしくてな。」
「・・・・・任務なんだから、当たり前じゃないデスか。」


花の国は自然の宝庫だ。 一年中春の気候、適度なスコール。 その恩恵で、草花が自生している。
しかもそのほとんどが、あそこでしか取れない植物だから、その価値たるや、値の張る宝石級だ。
環境にさえ気を配っていれば、鉱物や石油などと違い限りがない。 維持費の少ない安定した財源。
だから、これでもかってぐらい、他国の侵略をうける。 木の葉にとっては超お得意様だ。

「今回は御燈〈おび〉の里じゃ。 知っての通り、オニゲシが自生しておる。」
「・・・・麻薬関係デスか・・・。」
「うむ。 自国が許可していない採取を行っている輩がおる。 そ奴らの殲滅じゃ。」
「またどこかの隠れ里が、絡んでるんですね?」

前回の依頼では、土の国がかなり力を入れたらしく、7隊も岩隠れをよこしたもんな。
木の葉の暗部小隊や、暗部部隊長を、何度も雇えるだけの財力は、確かに魅力的なんだろう。

毎回こうして、木の葉を頼るということは、火の国の属国と言っているようなものだ。
火の国は血を流すことなく、花の国の恩恵にあやかれるという訳。 まさに金のなる木。
木の葉の里がその気になったら、いつでも従属させることが出来るのに、うちの国主は動かない。
これ以上火の国が大きくなれば、忍び五大国のバランスが崩れると知っているから。

「川の国、雨隠れの里じゃ。 群生地では、敵を一人も殺してはならんぞ? それが条件じゃ。」
「あー、いつものアレですか。 “住民の生死は問わず”ってやつ。」
「うむ・・・。 助けられる命は助けてやって欲しい。 無理にとは言わん。」
「そう命じるのなら、やります。 任務ですから。」

オニゲシから採れるモルヒネは、麻薬の原料だ。 どんな人間も、中毒性のあるモノには逆らえない。
御燈の里といったら麻薬。 麻薬といったら御燈の里。 それぐらい有名だ、狙われるよね。
ほんと、あの国は血生臭い話ばっかりだなぁ・・・ きれいな所なのに、反比例だ。

「んじゃ、サクッと行ってきますヨ、雨隠れを潰しに。」
「イルカちゃんには、三日で戻るって、言っといて下さい。」
「頼んだぞ? ちゃっちゃと、済ませて帰って来い。   散!!」

花の国の任務依頼は、血の気が多いうちの奴らにとっても、良いストレス発散になる。
だから、なるべくなら他の連中に回してやりたいけど、指名されたんじゃ仕方がないな。
完璧に確保は当たり前じゃないか、任務なんだから。 あいつら・・・血で汚したことあるんだ?
さては戦いに夢中になり過ぎて、草花の事を忘れたね? 油断は信用を落とす、今度しめとこう。
それにこれからも先輩やボクが、いちいち指名されたんじゃ、たまったもんじゃない。

「任務だから・・・じゃなく、助けたいから・・・そうなってくれると、良いんじゃがの。」