人生の楽しみ 8
@AB
CDE
FHI
ボク達は、里の雨隠れを全滅させた。 もちろんあの、里長の娘“ミナミ”に変化していた敵も。
本物のミナミは、里長の娘らしい最後を遂げてた。 勇敢に皆を、励まし続けていたんだろう。
小さい子供を庇う様にして、しっかりと腕の中に抱いて・・・ その子供ごと殺されていた。
御燈の里長は、皆よく頑張ったなと、監視がなくなった今度こそ、地面に膝をつき泣き崩れた。
先輩は“里の住民を汚しますけど、すみませんねぇ”と一応前置きして、瞳術を発動させる。
ここからは時間との勝負だ。 仮死状態にした住民を、さも死んでいるかのように見せかける。
血のり用の動物の血をまき散らす。 後で雨隠れの本隊が来た時に、血臭が鼻を突くようにね。
住民が我に返り血まみれの自分を見た時、軽くパニックが起こる。 だから了承がいったんだよ。
「アラシ、遅い。 チャッチャとやれヨ、一般人暗殺に、そんな時間かかんないでショ?」
「一番出のイイ血のりを持ってるんだから、ボクらの倍は動いてくれないと。 ね、アラシ?」
「・・・・・はい! ・・・・・ 若干デカくて邪魔ですけど ・・・ 頑張ります。」
“これから暗部が乗り込んできますから、後は彼らに任せて下さい”と里長に説明したらしい。
イルカちゃんは“リアル死んだフリ”ですでに仮死状態になっていた。 ホント信頼し過ぎだって。
でもなんだか、その過度の信頼が嬉しい。 先輩とボクで、可愛く血まみれにしてあげた。
この可愛い死に顔を、敵にみせるのはもったいないな。 そうだ! 奥の部屋に隠しておこう!
さあ、後はワザとらしく退却をするだけだ。 “退却”先輩の合図で小屋に撤収する。
ボク達は、本戦を前に腹ごしらえだ。 猪一頭、兎二羽の丸焼を、かぶりつきながら敵を待つ。
御燈の里は、なかなかの惨殺現場に仕上がった。 ちょっとしたホラー映画のシーンのようだ。
雨隠れは読み通りの展開に、さぞ気を良くするコトだろう。 あ、アラシが何か見つけたみたい。
「里から10キロ手前の木々が、不自然に揺れています。」
「動きましたね。」
「舐めた真似をしてくれた礼は、キッチリしなきゃネ。 ・・・・いくヨ!!」
「「はい!!」」
作戦の成功で有頂天になっているところを、一気に現実にたたき落とす。 お前らは籠の中の鳥だ。
ボク達木の葉の暗部を、ただの殺し屋だと思っている雨隠れに地獄をみせてやろう。
最近の暗部隊員達が殺しに夢中になって、周りを見ないからこうなった。 暗部は単純バカだと。
帰ったら、やっぱりあいつらをシメよう。 何人かブッ飛ばすだけでいい。 それで気付くからね。
「アラシ、お前はこの先も、間違うんじゃないヨ?」
「殺すよりも生かす方が手間がかかるけど、次の任務の為だから。」
「・・・・はい。」
「それに・・・ なんとなく、気持ちイイでショ?」
「たまにだけど、感謝されちゃったりする時もあるしね?」
「はい!!」
伸びそうな後輩に、こういう機会があって良かった。 このまま生き抜いてくれたら将来有望だ。
彼は、部隊長クラスになれるかもしれない資質を備えている。 生き残り続けたら、だ。
アラシにはぜひ、そうなってもらいたい。 ボクが今あるのは、全部カカシ先輩のおかげだ。
木の葉で唯一木遁を操れるボクは、自分の力を過信して、周りの人間を見下している時期もあった。
実戦で、一歩引いてみる考え方、それは生き残る為の道。 ボクはそうやって先輩に鍛えられた。
今では逆に“慎重過ぎる”と睨まれる事も多いけど・・・ 短慮を起すよりイイよね?
「ははは、こうも上手くいくとは。 はは、木の葉のヤツは馬鹿ばかりだな。」
「ふふ、国王は住民の事なんて考えてないし? ・・・まあ、ウチらもそうだけど?」
「コイツらはこんな使い道しかナイじゃん。 うまく囮になってくれたし褒めてやろう。」
「せっかく褒めてあげたのに、死んじゃったら聞こえないでショ! 意味な〜い!!」
「「あはははは!!」」
「盛り上ってるトコ悪いんだけど? あんま木の葉の暗部を、舐めんじゃなーいヨ。」
「よくしゃべる奴って、弱いんですよね。 多少は、期待しても良いんですか?」
「今度は、単純に殺るだけでイイんですよね?」
「オニゲシの野には近付くな。 一番強いヤツひとりだけ残せ。 殲滅、開始!!」
「了解っ!!」 「はいっ!!」
ものの小一時間で勝負はついたよ。 ひとりを残して、雨隠れ本隊20人を殲滅。
残したひとりは、舌を切り、指を落として、川の国に投げ込んで来る予定。 警告の為だ。
木の葉の暗部を利用し、罠にはめようとした雨隠れの里に、二度目はないと思い知らせる。
オニゲシの群生地は完全確保。 敵も殲滅。 花の国の国王の任務依頼は完了した。
あとは、里の住民を起すだけ。 結構汚したけど里長の了承を得てるんだから・・・ 大丈夫だよね?