人生の楽しみ 7   @AB CDE GHI




そもそも、うみのさんについても誤解していた。 分かりやすいだけの中忍じゃなかった。
潜入部隊に所属していて、その腕は火影様や、あの潜入のエキスパート、如月上忍のお墨付き。

うみのさんの潜入隊員としての優秀さを、今回この目で見て、話に聞いた通りだと確信した。
もう里長に、劇中劇作戦の了承を取り付けたこと。 まあ、タイミングも良かったんだけど。
敵がいて、チャクラも封印されてるのに、冷静に里長を説得するネタにしたのが凄かった。


『お父さん!! アタシ・・・早く帰りたい。 いつまであそこにいれば良いの?』
『ああ、ミナミ、無事だったか、もう少しの辛抱だ。』
『あなたは・・・? 面影は覚えてるんだけど・・・。』
『ミナミちゃん、お嫁さんにしてって言ってくれたのに。 そんな昔のこと、忘れちゃった?』
『名前が・・・ えっと、ここまで出かかってるのに・・・・。』

『・・・ミナミ?』
『トウヤ。 トウヤ兄さん、トウヤ兄さんって、あんなに懐いてたのにぃ〜 軽くショック・・・。』
『トウヤ・・・・ トウヤ・・・兄さん・・・・ 10年前家にいた、トウヤ兄さん?!』
『ミ、ミナミちゃん〜!! やっと思い出してくれたんだね!! 会いたかったよ〜!!』
『・・・・・。』


あの会話で里長の娘は、敵忍の変化だと判明した。 本物なら“トウヤ”を知るはずがない。
敵忍が“トウヤ”をただの一般人だと思ったから探りを入れた。 人質が偽物だとバレないように。
“10年前”というのは、うみのさんが自分から口にした会話。 監視をしてたから知り得た情報だ。

チャクラを封印して、単身で里入りしたうみのさんは、疑う余地もないほど“里長の甥”だったんろう。
雨隠れは“トウヤ”を忍びだと疑うこともなく墓穴を掘った。 うみのさんの能力の高さだ。


『伯父さん、おれ・・・ミナミちゃんのコト・・・本気だと言ったら笑う?』
『え? なに・・・??』
『大学の論文の為でもあるけど、ここに来た一番の理由は、ミナミちゃんに会いたかったから。』
『ト、トウヤ兄さん?!』

『伯父さんに認めてもらわなきゃ、おれが此処に来た意味がない。 ミナミちゃんをくれる?』
『トウヤ・・・ こんな・・・ じゃじゃ馬でいいのか?』
『できれば、里の皆にも知らせて、全員に祝福されたい・・・って思うのは我儘かな?』
『お、お父さん、勝手に決めないでよ!! そりゃ、トウヤ兄さんの事は大好きだったけど・・・。』
『お前は黙っていなさい。 トウヤの事を覚えている人も、そうじゃない人も、きっと大歓迎だよ。』

『一生の思い出になるから、結婚式はど派手にしょう!! いいでしょ?伯父さん!』
『いいとも。 里の皆に遠慮はいらない。 私が許可するから、派手にやろう。』
『もう、ふたりともアタシの意見は、無視なワケ?!』
『ここいらで、諦めて身を固めてよ、ミナミちゃん? お願い!』
『う・・・・・ しょーがないな、トウヤ兄さんのお嫁さんは、アタシしか勤まんないし?』
『あははは、そういうこと! やったぁー!! ミナミちゃんゲット!!』

“ミナミ”は昔話を避ける様に、今、自分の置かれている状況を“トウヤ”に語った。
雨隠れに人質として捕らわれていること。 無事な姿をみせる為に、毎夜ひとりづつ里に帰されること。
今回は自分の番で、2時間しかいられないこと。 おとなしくしていれば乱暴はされない、等々。
里長と“トウヤ”に励まされて、涙ながらに“ミナミ”は帰って行った。 ・・・・圧巻だった。


木の葉が派手に動いてイイと、あっという間に了承させた。 そのお手並みは、さすが潜入部隊。
うみのさんは男泣きを続けている里長に、ミナミちゃんのことはおれに任せて、と肩を強く叩いた。
自分の娘を含む人質の生存が嘘だった事で自分を責めている里長に、後は任せろと力づけたんだ。

こうやって、一般の人たちから信頼を得る事ができるから、木の葉隠れは他里よりウケがいい。

「んじゃ、予定変更。 今夜、奇襲をかける。 残りの雨隠れを叩くヨ。」
「先輩、イルカちゃんに、退却指示出しますか?」
「・・・・いや、今夜仕掛けるのは、分かってると思う。 トウヤになりきるつもりだろう。」
「まさか・・・・ うみのさんも・・・ 仮死状態にしちゃうんですか?!」

「・・・それ多分、自分でやるよ。  イルカちゃんの十八番だから。」
「秘儀・・・ 必殺・・・ なんだっけ?  ・・・・そうだ! “リアル死んだフリ!”」
「わー、ネーミングセンスないのって、火影様譲りなんですかね?」
「「ぶっ! 絶対そう! あはははは!!」」

今夜、潜伏中の残りの雨隠れ、つまり囮部隊を始末する。  里の全住民暗殺はもちろんフェイク。
派手に動いてもお咎めなしだから、ガンガン血をまき散らそう。 惨殺現場の制作だ。
木の葉の暗部が、予定通り任務を遂行したという形を作ってから、この小屋に戻ってくる。

ここは、御燈の里から20キロも離れたところ。 里からは、その位置でさえ確認できない。
本隊の雨隠れが動き始めたら、里に向かう。 そしてオニゲシを奪う前に、全滅させるんだ。

部隊長達は三匹の動物に、暗部用の増血促進剤を飲ませた。 まさに、出血大サービス!
おれが使う血のりは、イノシシ。 しかも超デカイ。 重いけど頑張って持ち運ぼう・・・。