人生の楽しみ 3   @AC DEF GHI




暗殺戦術特殊部隊、通称 暗部は、火影様の直属部隊。 戌・猫・猿・酉の四つの部隊がある。
面の規定は生物を模したモノ。 部隊長がつけている面の種類以外なら、何でもイイらしい。
おれはキツネにした。 狐面は結構人気があるらしく、おれの他にもたくさんのキツネがいる。
暗部は実力主義の縦社会。 強い奴には逆らうな、これが暗黙の掟。 実に簡単な事だ。

暗部に入隊して一ヶ月、配属部隊は決まっていない。 たった一ヶ月だけど、分かった事がある。
部隊長以外にも、暗部に一つしか存在しない面があるということ。 虎・兎・蛇・蜂の四つ。
明らかに実力の差があると感じるから、皆、自主的に同じにしない。 感じとれない奴は大馬鹿だ。
けど、16歳でエリート暗部の仲間入りをして、おれは少し天狗になっていた。 情けない。


虎と兎の面、暗部に一つだけの面の人達と、一緒の任務に就いた。 部隊長の支援という形で。
緊急支援だったから、戦闘もなし。 楽勝だった。 結局、ふたりの実力は分からずじまい。
でもそのすぐ後で、水の国の緋沼へ討伐任務に行った。 おれの読唇術が役に立つからと言われて。
虎面のジンさん、兎面のハスナさん、おれ。 支援任務の時と、まったく同じメンバーで行った。

たくさんの情報を聞き出せたのにもかかわらず、おれは、何も考えずに首をはねた。
そいつは・・・ 人喰いジュウザは誰かに依頼をされて、ハスナさんの息子を殺した奴だったんだ。

静かで冷たい空気が辺り一面に広がり、ハスナさんが、仇討ちに行くつもりだと気付く。
ハスナさんに本気で狙われた。 ジンさんが庇ってくれなかったら、おれは死んでた、確実に。
ジンさんの足止めの為とわかってたけど、おれひとりなら足止めにもならないんだと実感した。

「ジンさん、傷の具合どうですか?」
「お前が見舞いに来るとはな。 だいぶ回復した。」
「・・・・・すみませんでした。 おれ、いい気になってた自分が・・・ 恥ずかしいです。」
「新人は生意気ぐらいが、丁度いい。」
「そうやって、皆さんが甘やかすから・・・。」
「自分で気付く奴は伸びる、そうでない奴は死ぬ。 それだけだ。」

二人が一目置く、部隊長達・・・ あの時の自分の、あまりの馬鹿さ加減に嫌気がさす。
ジンさんがあのふたりは本気だと注意してくれたのに、それすら忘れた馬鹿野郎のおれは・・・
調子に乗って、ふたりの世話人を貸してくれと言った。 軽くブッ飛ばされたよ、一発づつ。

木の葉病院で忍術治療してもらわなきゃならないほど、顔面が腫れた。 今考えたら・・・
アレで済んで本当に良かったと思う。 だってその世話人 うみのさんは、部隊長達と重婚したんだ。

「暗部用の式だな・・・ お前にだ、アラシ。」
「え、おれ? てっきりジンさんだとばっかり思ってて・・・・・」
「俺はまだ、入院中だ。 やめてくれ。」
「そうでしたね、ははは。 なんだろ・・・。」

ジンさんのお見舞いに、木の葉病院に来ていた時、火影様から暗部用の式が飛んできた。
花の国 御燈の里で、カカシ先輩とテンゾウ先輩が・・・ 部隊長達が、おれを呼んでるらしい。
これはチャンスだ。 この前の生意気な印象を、忘れてもらう様に頑張らなくては。
ジンさんに、あのふたりの本質をその目で見てこいと言われて、送り出された。



おれはもう、間違えない。 ・・・・はず、そう思う・・・けど・・・。 この会話は・・・・。

新婚ノロケ? 任務中に?? いや、間違えない。 ・・・それだけ余裕があるって事だ。
気持ちいいセックスした事がない? ・・・衝撃的なコト聞いた気がする。 普通は気持ちいい。
うみのさんに・・・ キグルミ??  個人的趣味にとやかく言うのは、余計なお世話だけど。
おれにはまだまだ、知らない世界がいっぱいあるんだと、再認識した。 セックスは奥が深い。

「ところで、いつまでソコにいるつもり?」
「待ってないで、声かけてくれれば、よかったのに。」
「・・・あんまり嬉しそうなんで、お邪魔しちゃだめかな、と。 アラシ、到着しました。」
「お前の読唇術で、唇を読んで欲しい人がいる。」
「はい!」
「いい? コレはあくまでも、ボク達の推測なんだけど・・・。」

部隊長達の推測は、たぶん正しい。 御燈の里に侵入した始めの雨のヤツらは、完全な捨て駒。
オニゲシを株ごと持ち帰り、さらにその罪を、木の葉の里になすりつける・・・ 一石二鳥の作戦だ。
えげつない事するなぁ。 高級な麻薬に変貌するオニゲシは、それだけの価値がある植物だしね。
でも、部隊長達はそれに気付いた。 その時点で、敵の立てたこの作戦は、失敗したも同然だ。

任務依頼の内容は、オニゲシの群生地を確保し、敵忍を殲滅させること。 住民の生死を問わず。
普通なら、潜伏している雨隠れと、川の国と同盟を結んだ御燈の里を、全滅させればいいだけだ。
血気盛んな暗部隊員達は、喜んで殺戮任務を遂行する。 そしてまんまと、敵の罠にはまっただろう。

殺すことは簡単。 簡単なことだけをしていたら、思考も単純になる。 待ってるのは、死だけだ。
暗部で生き残る為には、それを絶対忘れちゃいけない。 ジンさんが言ったのは、まさにこのコトだ。