人生の楽しみ 6   @AB CDF GHI




おかしいと思った。 イルカが来たなら5キロ先でも分かる自信あるヨ、オレ。
あのチャクラを感知できないハズないモン。 三代目にチャクラを封印されてたのか。 どうりで。
三代目の事だから、遅かれ早かれ、動くとは思ってたケド。 イルカをよこすとは想定外だった。

・・・だって、ねぇ? 暗部専属世話人制度の書類を悪用して、重婚しちゃったし?

イルカは天然だけど、潜入任務にうってつけ。 顔に傷があるのに、忍びらしくない所がポイント。
あの絶対的な仲間に対する信頼感が、イルカを潜入任務に、より集中させる要因でもある。
もっと時間がかかると思ってたけど、これなら当初予想していた通り、三日で済みそう!

ご機嫌斜めなオレもテンゾウも、俄然はりきっちゃうヨ!  ・・・あー、コレが狙いな訳ネ?

「コレに書き込めば、イルカの持ってるノートにも文字が出るってこと?」
「はい。 イルカさんへの指示を・・・。」
「「イルカさん?」」
「あ、つい・・・ おふたりが呼ばれているので・・・ あはは。」

「馴れ馴れしく“イルカさん”なんて呼ぶな。 アレはオレ達の! 分かった?」
「アラシ、猫部隊においでよ。 ものすごぉーーーーーーく、可愛がってあげるよ?」
「ス、スミマセンでしたっ!! 気を付けますっ!!」

三代目の自作忍具“連絡帳”は片方が送信用、もう片方が受信用でペアになっているそうだ。
この送信用のノートに書き込んだ内容が、イルカの受信用ノートにそのまま浮かび上がる。
文字は、鉛筆でチョンチョンつつくと消える仕組みだ。 指示を確認したら消す、この繰り返し。
つまり、こちらのノートの文字が消えたら、イルカに指示が伝わった、ということになる。
ネーミングセンスの欠片も無いけど“連絡帳”は、なかなかの優れモノ忍具デスよ、三代目。

「あ、うみのさんからです。 “指示待ちです どう動きますか” ・・・だそうです。」
「そうだな・・・ イルカには御燈の里の長を説得してもらおう。 劇中劇作戦でいく。」
「劇中劇作戦?」
「・・・・テンゾウ、お前、そこら辺にいる動物でいいから、三匹、捕獲して来て。」
「了解!   アラシ、しっかりイルカちゃんを見張っててね? じゃ、狩って来ます。」
「動物?? えっと・・・ おれ新人なんで、説明してもらえます?」

まず、里に潜伏中の残りの雨隠れを全員殺す。 それから住民を一時的に、仮死状態にする。
それには、里長の了承が必要不可欠だから、イルカに頑張って説得してもらおう。

オレ達は任務終了と見せかけ、帰還するフリをして、ここで待機だ。 雨隠れの本隊をおびき出す。
敵の作戦に引っかかったフリをして、逆にヤツらを罠にかけるんだ。 名付けて、劇中劇作戦。

「・・・・って感じで行こうかナ。」
「わー、手間がかかりますね・・・ でも人質はどうするんですか?」
「んー、それなんだけど・・・・ 雨隠れの陰湿さは知ってるよね?」
「はい。 あ・・・ もしかして・・・。」

「うん、最初から里は捨て駒でショ? 人質はもうすでに全員殺されてると思う。」
「・・・・で、でも、何人か生きてるかも・・・。」
「どうだろうねぇ?」

そうこうしていたら、テンゾウが二羽の野兎をぶら下げて帰って来た。 小脇に猪も抱えてる。
・・・ちょっと、テンゾウ。 流血細工用の動物だって、分かってるよネ? 猪デカ過ぎでショ。
野兎はオレとテンゾウで一匹ずつ使うとすると・・・ これは・・・・ アラシ用?

うんそうだね、オレ達のイルカに馴れ馴れしくした罰だね。 よし、猪はアラシに押し付けよう。

「あ、連絡帳。 先輩、もうイルカちゃんに指示出したんですか?」
「これから。  里長の説得は任せた・・・と、あと、劇中劇作戦も知らせておこう。」
「今、うみのさん、ケシの花を観察するフリして読んでます。 うまいなぁー。」

オレは連絡帳にイルカへの指示を書き込んだ。 書いた文が、時間差で消えていく。
イルカが確認して、消しているんだ。 こんな事でも、イルカと繋がってると思うと嬉しい。
テンゾウも何か書きたそうにしてる。 ・・・・お前も書く? オレはテンゾウに連絡帳を渡した。

なになに・・・ 帰ったらマンチカンのキグルミを着てね、特注しといたから・・・・って、
お前が、特注したキグルミって、猫なの?! えー、イルカは犬の方が似合うでショ?

「あの。 “エロ兄弟、何考えてんだ”・・・って言ってますけど、意味分かります?」
「・・・・アラシ、あんまりガン見しないでくれる? 減るから。」
「え・・・ ムチャ言わないで下さいよ〜、見ないと唇が読めないじゃないですかぁ〜。」
「うん、イノシシ狩ってきて正解。 アラシ用の血のり、イノシシだからね。 明日頑張って?」

「ははは・・・ やっぱり、おれ用だったんですね・・・。」
「「当然!!」」