人生の楽しみ 5   @AB CEF GHI




「また、ただ働きさせて悪いんじゃが・・・。」
「わかった! 任せて、じっちゃん!!」

これから俺は、この前同行させてもらった、暗部のアラシ君と援護任務に就く。 “顔あり”で。
“顔あり”だから、暗部が全面的に仕切る。 うー ここでも、うちのふたりの指示に従うのか。
今は、アラシ君の口寄せ待ち。 チャクラを封印されて、巻物から口寄せされる手筈になっている。
噂によると無口になったらしい彼。 俺の感想は、暗部としての風格が備わった感じ、だ。


「へへ、封印されてるけど、あのふたりが一緒だったら、何の心配もいらない。」

今回、敵が既に潜伏しているので、チャクラを封印。 完璧な一般人として潜入する。
御燈の里の里長が、雨隠れに脅されていて、暗部が足踏みをしていると、火影様から聞かされた。
俺は里長に接触し、御燈の里の現状を探る。 忍びが丸腰で潜入するとは、敵も考えないはず。
暗部への報告は、アラシ君が読唇術を使って唇を読んでくれるから、俺は口パクするだけでいい。

久しぶりに会った、里長の甥っていう設定でいこう。 花の国の大学で、植物学を専攻してる学生。
論文発表で、ケシを観察する為に、昔住んでいた御燈の里、伯父の里長を訪ねて来た・・・ってどう?

そんな事を考えていたら、口寄せの術が発動した。 アラシ君がもう、御燈の里に到着したらしい。
さすがに速いなぁ。 うぁー、 この引っ張られる感覚は、いつになっても慣れない!

「おまたせ、うみのさん!」
「うえ〜 相変わらず気持ちわるい・・・ 口寄せ獣を尊敬するよ、俺。」
「あはは! わー、感じが違いますね、髪を下ろしているからかな?」
「今風の学生を意識してみた。 違和感無い?」
「完璧です。 どこをどう見ても、忍びには見えません。」

「・・・みょーに、馬鹿にされてるような感じがするのは、俺が卑屈だから?」
「あははは、ほめてるんですよ、ちゃんと。 里には敵が潜伏してます、気をつけて下さい。」
「了解! 何かあったら“ヘルプ”って口パクするから。 じゃ、いってくる。」


アラシ君に暗部からの連絡用として、一冊のノートを手渡された。 火影様お手製のノートらしい。
暗部の指示は、このノートの紙に浮かび上がるというモノ。 観察用ノートとして常に持ち歩こう。
ここから御燈の里までは、5キロほど。 もちろん歩いて行く。 でないと怪しまれるから。
綺麗な花を眺めながらの道中は、退屈せずに済んだ。 今頃アラシ君は、ふたりと合流してるかな?

「伯父さん! お久しぶりです、トウヤです!!」
「??」
「やだなぁ! ( 木の葉の忍びです、芝居を続けて )そんなに変わった??」
「あ、ああ、トウヤか、見違えたよ大きくなったね。」

開口一番、御燈の里の里長に飛びついた。 耳元で、木の葉の忍びだと知らせる。

今度、大学で発表する論文のテーマが、ケシだから、思いきって訪ねて来た、突然で驚いた?
わかんなくても仕方ないよね、俺がここで暮らしてたのって、10年も前だもん・・・と、
矢継ぎ早に話す。 里長が俺の立場を理解したようで、それからは、うまく話を合わせてくれた。

「トウヤの・・・お父さんは元気かい?」
「うん! 最近、伯父さんから連絡来ないって、心配してたよ?」
「トウヤのお父さんには、つまらない心配かけたくない。 昔から頭が上がらないんだ。」
「俺が帰ったら伝えようか? 悩み事なら、父さん、何でも聞くって言ってたし。」

里長の言う“お父さん”は、きっと火影様のことだ。 俺が言う“悩み事”は里の現状のこと。
里長と不自然にならないように、時々こういう会話をして、内情について聞き出した。
俺の報告は、どこかでアラシ君が唇を読んだはずだから、里の事情は全部、把握できただろう。

後は、暗部からの指示待ちだ。   よし、観察ノートをつけるフリして、確認してこよう。

「伯父さん、ケシの花、見てくるね? いろんな種類があって観察しがいがあるね!」
「ああ、気をつけて行っといで。 暗くなる前に戻るんだよ?」
「あはは、おれ、女の子じゃないよ? 心配性だなあ、伯父さんは。」

「・・・夜は娘のミナミが帰ってくる、昔話でもしながら、一緒にご飯を食べよう。」
「オッケー、ミナミちゃんを待たせる訳にいかないもんね! んじゃ、行ってきまぁーす!」

今晩、帰ってくるという、そのミナミという娘は、おそらく里長の家から取られている人質だ。
全ての民家から一人ずつ、雨隠れに人質を取られている。 他に選択の余地はなかったんだろうな。
里長は、逆らわずに言う事を聞いていさえいれば、人質は無事に帰ってくると思い込まされている。
こうやって人質をチラつかせて、生きている事を確認させるから、信じるんだろうけど・・・・。