人生の楽しみ 9
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「うわー、派手にやりましたね・・・ すみません、伯父さん・・・ じゃなくて、里長。」
「トウヤに里長と呼ばれると、なんだかこそばゆいな。 帰るまでは、伯父さんと呼んで下さい。」
「じゃ、お言葉に甘えて。 伯父さん、こんなに血で汚してしまって、すみませんでした。」
「私が許可したから、責任は私が持つよ。 住民もわかってくれる。」
気が付くと俺は、里長宅の客室で寝かされていた。 あれ? ・・・裏庭で仮死状態になったはず。
まあいいか。 さすが暗部、やる事が徹底している。 俺もしっかり血まみれにされていた。
この里の惨状を見たら自分の血まみれ具合を鏡で確認したくなっても、不思議じゃないだろ?
どれどれ・・・・ おお、オデコとホッペタの血が、ハートの形に固まってる! 凄い偶然だ!
「国王のことだから、私達のことは気にせず、敵を討てと言ったんじゃありませんか?」
「・・・・ま、その辺はご想像にお任せします。」
「ボク達は負けず嫌いですからね。 敵の作戦にハマるのは、シャクだっただけです。」
「おれは実習生ですから、先輩方の指示に従っただけです。」
俺は顔についた血を落としながら、会話を聞いていた。 指示? あれ? なんか忘れてる??
そうだ! じっちゃんから伝えてこいって言われてたんだ! 危ない、危ない・・・。
今回の任務依頼は国王からだったから、出遅れた。 火影様はそのことをもの凄く悔やんで、
俺に木の葉の里のPRをするように言った。 直接、木の葉に依頼をするように、と。
木の葉の里は“子守りから暗殺まで”をモットーに“依頼人を選別しない”をウリにしている。
「伯父さん! 父さんから伝言を預かってるんだ。 聞いてくれる?」
「はは、なんだい、トウヤ。 言ってごらん?」
「“国王は通さず直接、任務依頼をして下され、木の葉はいつでも力になります” ・・・だよ。」
「最初からそうしてれば、こうはならなかったかもしれないな。 しかし、国王が・・・。」
「木の葉は、決して依頼人を選別しないよ? 先の依頼から受理される。 先着優先なんだ。」
「火影様らしい。 イルカにPRするように頼んだんだ?」
「さすが三代目、抜け目ないなぁ。 でも、そうなるといいですね。」
「あはは、うみのさん、トウヤになりきってますよ、まだ。」
「・・・トウヤ、今度からは、何かあったらすぐに木の葉に知らせるよ。 いいかい?」
「もちろん! 父さんもそれを望んでるんだよ? ・・・ぷっ! あははは。」
「はははは、本当に頭が上がらなくなってしまったな! ははははは!!」
「あはは、ふたりとも役者だなあ! あははは!!」
「?? 何がおかしいんでしょう?」
「?? さあ? なんでアラシまで笑ってんの?!」
「だって、里長とうみのさんの会話、あの時と同じだから・・・ あはははは!」
「・・・・・アラシ、やっぱり猫部隊においで? うーんと可愛がってあげるから。」
「ねぇ、ソレ自慢? イルカと通じ合ってるって、自慢してるの? オレ達を前に?」
「は?! えーーーっ!! ちょ、ちょっと待って下さいよ、なんでそうなるんですか!」
なんだか暗部の三人が後ろでうるさい・・・。 せっかく里長の心証を良くしたのに。
もう! なに取っ組み合いしてるんですか! 御燈の里長もあきれて・・・・ あ・・・ あれ?
呆れていると思った里長は、いきなり土下座をした。 これには、さすがの三人も振り返る。
非力ながらも、住民を守ろうとしていた立派な里長が、その頭を地面にこすりつけていた。
「・・・木の葉の皆さん・・・ 皆の無念を晴らしてくれて、本当にありがとうございました。」
こんな血の惨劇を装ったのに、御燈の里の住民のほとんどが、オレ達を見送ってくれた。
中には、まだ血を洗い落としてない人もいて、手を振られて見送られてる俺達はまるで・・・・
某ホラー映画のゾンビに追いかけられてる人々・・・ みたいになっていた。 ちょっと怖いぞ。
ゾンビ系のラストは安心させておいて必ずまた出てくるんだ、ゾンビが。 丁度こんな風に・・・・ っ?!
「ぎゃーーーーーぁ!! ゾンビ出たぁーー!!」
「ゾンビ? なにソレ。」
「イ、イルカちゃん、落ち着いて。」
「え?! 本当ですか?! どこに・・・・・」
「そ、そこの木にぶら下がってるじゃないですか!!」
「あ、アレね、忘れてたヨ。」
「それ、舌抜いといた雨隠れだから。」
「な、なんだ・・・。 うみのさん、そいつ、警告用の雨忍ですよ。」
え? 雨隠れの忍び? ・・・・・ホントだ。 あー、ビックリした! てっきりゾンビだと思った。
“やっぱりそれも、おれなんですね、行って来ます”と、アラシ君がその忍びを肩に担いだ。
これから川の国に投げ入れてくるそうだ。 まあ、うちの暗部を馬鹿にした、当然の報いだな。
今回はアラシ君がいたおかげで、ずいぶん楽だった。 口パクするだけなんて、最高っ!!