愛しの天敵 13
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忍術を操れる忍びの俺が言うのもおかしいけど、世の中には不思議な事があるもんだ。 うん。
なんと、木の葉警備隊の編成を任されている超エリート一族、うちは一族の男の子からの頼み事。
ぜひ俺に頼みたいんだって。 そう言えば、うちは居住区で騒ぎがあったっぽいんだよな・・・・。
どうも頭の中に霧がかかったみたいに、最近の記憶が前後してるんだけど、それはおいといて。
とにかく、夜中にトイレに起きたはずなのに目の前に少年がいて、写輪眼をギュルギュル回してた。
んで、場所も俺んちのトイレじゃなくて、あうんの門の外。 いつの間に外出してたんだろう?
まあ、それもどうでもいい。 少年の話を聞かなきゃいけないという使命感で俺は一杯だったから。
年の割に落ち着いた雰囲気は逸材なんだろうけど・・・ どことなく淋しげな目をした少年だった。
俺より優秀なのは一目で分かる。 そんなうちは一族の少年が、受付の中忍に頭を下げたんだ。
アカデミーに通っている弟が気がかりなので見守ってやってくれと。 うみのイルカを見込んで。
たかが受付忍の俺を見込んで、だぞ? これで感激しなきゃ嘘だ。 よし任せとけとタンカを切った。
俺を見込んでという事は、俺しか出来ないと少年は思ったんだ。 俺には一つだけ心当たりがある。
三代目と個人的に親しいんだ、受付忍にも推薦された。 要は、そのコネを使ってくれ、って事だ。
「三代目っ! 俺をアカデミー教員に推薦して下さいっ! 出来れば年少組のっっ!!」
「・・・・・いきなりなんじゃ、イルカ。」
「・・・・・言えません。 これは男と男の約束なんですっ!」
「・・・・・・・・・・・・・ほう?」
是が非でも少年の頼みを聞いてやるぞ! と強い使命感に襲われた俺は、三代目に申し込んだ。
何って、アカデミーの教員枠に割り込ませてくれ! って。 こんな時にコネを使わないでどうする!
今生の別れ際に願う・・・・・ みたいな、壮絶な覚悟をあの少年から感じたんだ俺は! 悪いか!!
「そうじゃな。 あえて何があったかは聞くまいよ。」
「じっちゃん・・・・・ ありがとうっ!」
「ナルトもアカデミー入学を控えておる、丁度ええ。 好きなだけかまってやれるぞ?」
「え?! アパートの結界が厳重で近寄れなかったあの渦巻ナルト君も? おぉお!!」
さすがはじっちゃん! 時々融通が利かない事もあるけど、訳有りな事情は察してくれるんだよな。
ナルト君にサスケ君か、会える日が楽しみだ! 教職が俺の天職の様な気もしてきたぞ、うんっ!
受付も両立させますよ、だってこれは俺の我儘だしっ! そうすれば貸し借りナシですよね?!
「ほほほ! なるほどチャラじゃな。 お主なら良い教師になれるじゃろうて。」
「はいっ! ありがとうございます、三代目!」
「「はい、そこまでっ!! ストーーーップッ!!!」」
「あ、カカシさん、テンゾウさんっ! お久しぶりです!」
「「なにぃ?! ・・・・・・・久し・・・・ ぶり・・・・・ だと??」」
「やー なんか久しぶりの様な感じがしたんで。 ついノリで言ってみましたv へへへ!」
「「・・・・・・・・・・ノリ・・・・。」」
おっ! 我らが木の葉の暗部 部隊長と補佐だ! ・・・ん? もしかして我儘が通ったのは・・・・
三代目にコネがあるってだけで突然我儘を聞いてもらえたのは、修行つけてもらったからじゃないか?
アカデミー教師ともなると何か特技がなきゃ駄目。 影分身変化を三分もたせるのは立派な特技だろ?
俺が中忍としてレベルアップしたから、三代目も何も聞かずに我儘を聞いてくれたのかもしれない!
これはお二人のおかげかも。 あの恐怖の鬼ごっこなら誰でも死に物狂いで頑張ると思うけど!
“捕まったら乳首攻め” なんて恐ろしい発想は、さすがスパルタで有名な暗部の司令塔だよな?
とにかく、そんな恐怖のスパルタ特訓のおかげで、俺自身忍びとしてレベルアップ出来たんだから。
「今、無性にお二人に感謝したい気持ちで一杯ですっ! ありがとうございましたっ!」
「・・・・・そうだった、うみのイルカはこういう奴だった・・・・。」
「・・・・・クソッ、イタチめ! 完璧な仕事をしやがって・・・・。」
「カカシ、テンゾウ。 しっかりイルカの面倒をみてくれたようじゃの?」
「「・・・・・・・・・・面倒というか・・・」」
「はいっ! おかげで俺、アカデミー教師になれそうですっ!」
「「・・・・・・・・・・アカデミー教師??」」
実は、お二人に負けないぐらい哀愁たっぷりの淋しそうなうちはの少年に頼まれたんですっ!
弟君の成長を見守ってくれ、って。 男と男の約束で、ご恩のある二人でも理由は話せませんが。
なんか照れくさいです。 俺を見込んでとか、他には思い浮かばないとか、言ってくれちゃって!
「そうかそうか、あやつがのう。」
「あ。 つい喋っちゃった! ・・・・まあ、いいか!」
「「・・・・・・・・。」」
「ソレって多分、話の前後に “部隊長達の恋人” がついたんじゃないの?」
「さすがは中忍です。 見事に綺麗サッパリ忘れてますね、ボク達の事を。」
「忘れる訳ないじゃないですかっ! あの乳首攻めをっ!」
「「え゛!! 覚えてるの?! ホントに?!」」
「ナスのヘタ・・・・・ とか?」
「クルミカバー・・・・ とかも?」
「木の枝で小突き回されたり、静電気でパチパチやられたり!」
「「それは鬼ごっこの罰ゲームッ!!」」
「いやー もう、恐ろしかったのなんの・・・・ ピリピリ、チクチク・・・・・ あははは!」
「ほほほほ! カカシとテンゾウの修行はキツかったじゃろ?」
「「・・・・・・・・・・。」」
でもあの修行のおかげで、こうして俺の将来が開けました。 お二人には感謝してもしきれませんよ。
これからも階級差なんか無視したお友達でいて下さいね? 俺の自慢なんですから! えへへ!
受付の先輩もめちゃくちゃ驚いてたんですよ? 俺が影分身の修行をお二人につけてもらって・・・・・
「「 やかましい! この鈍感中忍っ!! 」」
「えっと・・・・・? あ、そうか! 任務報告ですよね? 失礼しました!」
「「・・・・・・・はぁ?!」」
「じゃ、あのっ! 俺はこれで退室します! 三代目、カカシさん、テンゾウさん、また!」
「「ぐぁあぁああああっ!!」」
「・・・・はて? 殲滅任務の報告なら、半時ほど前にアラシ達から聞いておるが・・・・」
「「・・・・・・・・くそ、うみのイルカめ・・・・。」」
さすがは暗部の部隊長と補佐だな、もの凄い目で睨んでた。 二人とも良い男だから睨むと迫力がある。
ただでさえお世話になってるのに気付けよっ! お二人の仕事の邪魔をしてどうするんだよ、俺!
でもボコられなかったのは、お友達認定されてるって事だよな? ほんと、俺って恵まれてるよ。
へへへ、早速また明日っから暗部の待機所に押し掛けて、お二人に修行つけてもらおうっと!
うちはの弟君、渦巻ナルト、待ってろ? いつか先生になった俺が友達一号になってやるからな?
「イタチの瞳術で記憶操作された中忍がサ、ナ〜ンにも覚えていないのは仕方ないよネ・・・」
「これで本日の乳首隠しの食材は、永遠に謎のままですね。」
「「う〜ん、残念! ・・・・・ぷっ! くす、くす!」」
「イタチも“ボク達の恋人”に弟を任せたと思い、今度こそ心置きなく任務に就けたでしょう。」
「完璧主義のアイツらしいヨ。 ・・・でもこの期に及んで気がかりは弟だけ・・・・ なのネ?」
「「・・・・・・・あのブラコンめ! くす!」」
「オレ達は獲物を追い詰めるのが大好きな黄金コンビ。 そうでショ? テンゾウ。」
「ええ。 相手が強ければ強いほど闘争心は燃え上がります、当然じゃないですか。」
「しかもオレ達は既に敵を知ってるし? 相手の手のうちを知っちゃってるからネー?」
「・・・・・ですね? 楽勝です。 幸い奴はボク達の孤独感に引き寄せられますから。」
「そうだ、テンゾウ。 声に出して火影岩に誓ってみる?」
「ふふ、いいですね、やりましょう。 いっせーの、っせ!」
「「 絶対、嫁にしてやるっ!! 」」
「「・・・・・ぶわはははは! やっぱりっ!! あはは!」」
「「 先生になる将来も全部もらうからな! 覚悟しろ、愛しの天敵うみのイルカッ! 」」
こうして天敵捕獲作戦が本格始動するのでした。 相手は究極の鈍感中忍だ、頑張れ黄金コンビ!(笑) 聖