愛しの天敵 4   @AB DEF GHI JKL




長くても一か月でショ? それにナニをどう吹き込まれたか分からないケド、真っ新なんだから。
部下にオレ達の愛人だと聞かされたダケ。 そんなのを信じるならサ、新偽情報を教えればOK。
アイツらがそう言ったワケを。 部下達にはそう思わせてるだけで実はアスマの恋人とか、どうヨ?

お前も紅の気性は知ってるよネ? アスマが他に心を移すワケがないというあの鉄壁の自信を!
アスマは三代目の一人息子だし、玉の輿狙ってるクノイチだとか花街の遊女だとかハンパないのに、
“所詮アンタ達はアスマの火遊びだから”っていう、大気圏を突き抜けんばかりの超上から目線!
うみのイルカの眉唾ものの一時的な噂を耳にしてもタカビーに笑い飛ばして終わり、じゃない?

「・・・いざとなったらカカシ先輩ほど頼りになる存在はありません、この上なく上策です。」
「でショ、でショ? これ以上の名案はないよネ?! イタチもコッチの方が俄然納得する!」
「いつかイタチが里に帰還した時、それはもう過ぎた遠い昔の話、とかになってる訳ですね?」
「イイね! しかもお互いがお互いの為を思って別れた、とかいう切ない話とかにしちゃう!」

コレいけるヨ! なぜかアスマの恋人でもあり不思議とオレ達の恋人でもあったうみのイルカ。
そんで紅とか三代目とかオレ達の部下とかを争いに巻き込まない為に、身を引く決意をするオレ達。
嫌いで別れたんじゃない、里の平和と仲間の身の安全を思ってのオレ達の苦渋の決断・・・・・

「互いの幸せを願って離ればなれになった、悲哀の恋人達の物語なんだヨ・・・・・」
「うぅ・・・・・ 先輩、可哀そうですねボク達・・・・ かなり泣かせる話です・・・・」

「辛い過去があるオレ達に、もういっこ切ない系の話が追加されるだけだからネ。」
「“なんて仲間思いの忍びだ”って、イタチも感激しまくりですよね、きっと。」
「これも里の平和の為の決断、仕方ないんだヨ、イタチ。 ・・・・とか言っちゃったりサ。」
「辛い決断をして戻ったお前はボク達の分まで幸せにならなきゃいけない、とかですね?」

ソウソウ! そんでアラシとイタチに暗部を任せて、オレ達は引退。 堂々と花道を飾り制服組へ!
弟子をもって自分の班をもって強くたくましい立派な木の葉の忍びを量産する! その夢が現実に!!
・・・・・ミナト先生、クシナさん。 オレ達、先生の夢をかなえる一歩手前まで来てますヨ!!

「アスマさんは今家出中、紅さんは鼻先で笑い飛ばしーの、イタチは感激、オール完璧です!!」
「悲哀の恋物語を作り上げ窮地を活かすオレ達! さすがは木の葉の暗部黄金コンビだよネ!!」
「「孤独探知機こと、我ら暗部のトラブルメーカー元天敵も大人しくなるはずっ!!」」






ヨシ、真っ新なうみのイルカの記憶に植え付ける為の、新たな悲哀の恋物語をねつ造しよう!
紅にも親父にも言えず、オレ達に相談しにきたアスマ。 ここでひと肌脱ぐのが男の友情!
任せとけとばかりに、オレ達の愛人だというコトにして暗部で保護してる、なんてイイんじゃない?
そんで徐々に親密になっていくオレ達。 このままではいけない、アスマに頼まれたのに。 とかっ!!

「おお! 駄目だと知りつつ惹かれ合う者達っ! 昼ドラのド定番です!!」
「イイんだよ覚えやすいから! ド定番の方が皆が納得しやすいでショ?!」
「もっともです。 そして部下達には自分達の恋人だと言ってしまうボク達。」
「ウンウン、部下の前なら恋人として振る舞える、それが唯一幸せなオレ達。」
「「く〜〜〜 泣かせるっ!!」」

部下達も納得、紅が聞いたらケッ! で終わるアスマの秘密の恋人説はこれでイケ・・・・・・ ン??
コレが記憶の飛んだ不運な中忍の為だと知れば・・・ ヘンに協力的になっちゃたりしたりしない?
紅ってアスマ繋がりで三代目と親しい。 ナニかの拍子にヤツの現状を知ってしまう可能性は?
三代目のコトだからうちは一族の皆殺しの話はしないと思うケド、記憶混乱中の中忍の話なら?

なんか、そういうトコあるよネ、姉御肌みたいな。 逆にアスマが里にいないから面白がるかも。
姉御肌的な一面もあるケド、アスマが不在の里で退屈しのぎだとばかりに飛びついちゃったら?
自分の恋人だとか、アスマの愛人だとか、果ては三代目の妾だとか、悪乗りして吹き込んだり・・・・

「・・・いっそのコト単純にグースカ眠らせとく? 里外任務ってコトにして。」
「うみのイルカには一か月間、大人しくしててもらうに限りますからね、強引ですが。」
「ウン。 今、木の葉病院にいるんだよネ、確か。 拉致ってどっかの宿で眠らせとこう。」
「はい、頭で記憶が整理されるまでですから。 そうと決まれば拉致を決行です!」

かなりの名案だったケド、危ない橋は渡れない。 結局、拉致って強制安眠ってコトで落ち着いた。
んで、いざ拉致りに木の葉病院に来てみたら、なんと緊急入院してたはずのうみのイルカがいないの。
少し前、暗部の隊員が身柄を引き取りに来たんだって。 チョット。 イヤな予感しまくりなんだケド?!








オレとテンゾウの足は嫌な予感とともに暗部の第七演習場へ。 部下達が一か所に集まり出迎えてくれた。
なにやらソワソワ、ワクワクとした感じが伝わってくる。 ハイハイ、聞いてほしいコトがあるのネ?
そんなコトよりも、今はうみのイルカをどこに連れてったか、ってのが問題。 てかその箱はナニ??

「「「部隊長、補佐、お疲れ様ですっ!!」」」
「「・・・・・お疲れ。 うみのイルカは??」」
「「へへへ! 待ってました! ジャーン!!」」
「「・・・・・・・・・・そのドデカイ箱の中に??」」

「うみの中忍の発案なんですよ、実は! 新たな俺をプレゼント作戦、なんです!!」
「「・・・・・・・・入ってるのか、ビッグサイズの箱に。」」
「いえ、箱は影分身の変化ですっ!! ほら、この前の応用で・・・・」

「アー お前達サ。 オレ達がナニが言いたいかは、分かるネ?」
「「はいっ! 痒い所に手が届く! それが俺らですからっ!!」」
「それで? お前達が言う痒い所とは、一体何だい?」
「「それはもちろん、愛のキューピットですっ!!」」

「「・・・・・・・・・ブッ飛ばす。」」
「「「 えぇぇえええーーーー なんでぇーーー?! 」」」

及び腰になって後ずさった部下達に一発ずつ入れようとした時だった。 箱の中からヤツが出てきたの。
全身に白いリボンをグルグルと巻き、頭の上には蝶々結びした一段とドデカイリボンをつけて。
プレゼントは私、みたいなこれまたド定番な登場。 ド定番発想はさすがオレ達の部下ってトコだネ。