愛しの天敵 3
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シスイとイタチはまだ11才。 だけど三代目が暗部に入隊させたぐらいの冷静沈着な忍びだ。
これからの暗部を、いや木の葉を背負って立つ忍びになると思い、鍛えようとした矢先だった。
後の祭りだけど、一言ボクら暗部の仲間や三代目に相談があれば、もっと上手く立ち回れたのに。
ダンゾウは一筋縄ではいかない歴戦の猛者だから。 若い忍びを言い包めるのは余裕だったろうね。
もしかしたらだけど。 シスイとイタチは根のスパイだったんじゃないか、って疑ってたんだ実は。
二重スパイだよ。 うちは一族そのものとダンゾウが組んで根を動かしていたんじゃないかってね。
だから目をつけられたのかも。 だって、シスイとイタチは三代目寄りの考え方に共感してたから。
三代目のあら捜しの為に暗部に送り込んだ手駒なのに、直轄の暗部に影響を受けたとあっちゃね?
シスイの死、イタチの排除。 ダンゾウにとっては目の上のたんこぶをとったに過ぎないんだよ。
同じ鉄は踏まないと思ったんじゃないかな。 出るだろう杭を引き抜いておけ、ってな具合だろう。
ガキだからとほおっておいたらいつの間にか力をつけてた、カカシ先輩やボク達が良い例だからね。
おまけに、自分と繋がるうちは一族をイタチに粛清させたんだから、己の手を汚さずに一石二鳥だ。
早まったね。 火影や暗部に打ち明けてくれてたら、一人で背負い込むなんて事はさせなかったよ。
道を踏み外した一族の名を里への逆賊として残す訳にはいかない、それしか頭になかったのかもね。
残念だけど木の葉の仲間として、三代目もボク達暗部もイタチに信用されてなかった、という事だ。
イタチが今後を考え個人でダンゾウと取引したなら、ボク達が今更どうこう言っても始まらない。
己一人が汚名を着れば、弟は誇り高い一族の末裔として里に残せる、それがイタチの意志なんだね。
仲間として応援するよ、その血の決断を。 が、そんなイタチの決意に水をさした奴がいたとは。
よりによって、うちは一族粛清の現場に乱入だなんて。 どこまで命知らずなんだ、うみのイルカ!
孤独感を嗅ぎ取った、とは・・・・ 苦渋の決断の悲しみの気をマックスに感じたとでもいうのか?!
ボク達が後任にと考えていた忍びだ。 シスイ亡きあと、イタチは一族きっての写輪眼の使い手。
うちは一族を皆殺しにしたんだぞ?! それほどの手練れの忍びの殺気をまるっきり無視したのかっ?!
おじゃましまーす! とか。 よもやそんな能天気さで訪ねたのか、屍累々のうちは居住区をっ?!
「「・・・・・・・・・・。」」
「イタチもとっさに瞳術を発動したのじゃろうが。 ちと・・・・ のぉ?」
「奴の嗅覚はなんとやっかいな性質なのでしょうか。」
「どこまでも我が道を行く男だーネ、うみのイルカ。」
「なかなか便利な性質ではあるのじゃがな。 今回はイレギュラーじゃて。」
「「・・・・・・・・・・。」」
イタチが三代目寄りじゃなくてダンゾウに感化されていたら、うみのイルカは死んでたよ間違いなく。
イタチの殺気を無視できるぐらいないら、三代目が言う通り捕虜の尋問には確かに使えるだろうね。
・・・・・・が。 やっぱり現場には危なっかしくて出せたもんじゃない。 ・・・・ん?
いいのか?? だから受付に三代目が配属したんだもんな・・・・ うん。 適材適所だよ。
「そこでじゃ。 イルカの面倒をみてやってほしいのじゃ。」
「イタチの最後っ屁の始末と思おうヨ。 ナーンにも力になってやれなかったしサ。」
「・・・・そうですね。 暗部仲間からの最後のエール、後はまかせろ! みたいな。」
「いや、暗部にではなく、個人的にお主達に頼みたい。」
「「はぁ?! ・・・・・・・・なぜに?!」」
「お主達が後片付けに行かせた部下がの? イタチから状況を聞いて教えたらしいんじゃ。」
「「・・・・・・・・・・??」」
「“うみの中忍は、自分達暗部の部隊長と補佐の秘密の愛人ですから頼って下さい!”とな。」
「「アイツら。 もうちょっとマシな・・・・・」」
「イタチも驚いておったらしい。 “とっさに殺らなくて良かったです”そう言っとったそうじゃ。」
「「・・・・・・・・・イタチ。」」
何やってるんだ、馬鹿かっ!! クソ真面目なイタチにそんなジョークなノリが通用する訳ないだろ!
部下達が妄想過多症でハイパー想像力が豊かだという事は、今迄の経緯を考えれば十二分に分かる。
一万歩譲って記憶を抜かれて不安になってるだろう、うみのイルカを安心させる為だとしても、だ。
血と涙の決断を下し決行した暗部の後輩、そんなイタチの里で得た最後の情報が・・・・・ それ?
「哀れだ・・・・ というか。 そんな信じやすくて大丈夫なのかイタチ・・・・。」
「里を出ちゃったら、オレ達はもう忠告してやれないよネ、残念だケド。」
「イタチの次の任務は、大蛇丸の動向を探るのに傭兵組織【暁】への潜入、帰還は当分先じゃて。」
「「・・・・・・・・・。」」
「ってコトはサ、木の葉に帰ってくるまでイタチはずっと信じてるのネ?」
「そういう事になりますね、“うみのイルカはボク達の秘密の愛人説”を。」
「そういう訳じゃからして、お主達に頼むと言うておる。」
「「ふぅー ・・・・・・了解です・・・・・。」」
イタチの瞳術で記憶を強制的に上書きされた為、うみのイルカの半年間の人間関係の記憶が飛んだ。
無くなった訳ではなく術の後遺症なので必ず元に戻る。 屍累々の記憶は消え、元のうみのイルカへ。
ただ、一カ月はかかるそうだ。 中忍の脳内情報処理能力なら、それぐらいの期間は要するだろう。
そんな訳でボク達は、ほんのつい最近まで天敵だったうみのイルカの面倒を見る事になってしまった。