呼びかけの間 2   @BC DEF GHI JK




今日も今日とて、三代目の尻ぬぐいに走るオレ達。 火の国と木の葉の里はとっても平和。
暗部の部隊長&補佐のオレ達は優雅に花街通いで、血生臭ーい任務はほとんど部下任せ。
でもまあ、あいつらなら、よっぽどの事が無い限りヘマはしないだろうから、安心、安心!
本日、三代目が通ってるあずま屋、佐和子さんのご機嫌取りに行くところ。 パシリとも言うネ。

「ゴメン下さーい! 木の葉隠れの猿飛ですが。 お願いした水饅頭出来てます?」
「お待ちしてました、毎度。 こちらが桜餡の水饅頭です。 で、こちらが白餡の水饅頭です。」
「ありがとうございます。 ではいつものように、木の葉隠れの猿飛に請求して下さい。」

三代目はほぼ毎日廓に遊びに行くけど、毎週土曜に必ず寄るのがあずま屋の佐和子さんのトコロ。
気に入っている遊女だから、機嫌を損ねたくないんだってサ。 彼女の好物 水饅頭を買いに来た。
ついでにイルカのお土産も買う。 もちろん三代目のポケットマネーで。 それぐらいイイよネ?
ここの水饅頭は花街では超有名。 イルカは特に白餡が好きだから、この水饅頭も喜ぶよ、きっと。

おおみ屋とあずま屋は老舗の遊郭として名高い。 三代目はどちらの店でも水揚げをよく頼まれる。
まあステイタスだネ。 三代目に水揚げしてもらえば、遊女として店に出ても箔がつくと言うモノ。
金積まれてヘンな男に買われるより、新造としては三代目に抱いてもらう方が、断然幸せだろうネ。

おおみ屋から新造の水揚げを頼まれたから、今夜のあずま屋通いを中止しなくちゃならなくなった。
あっちを立てればこっちが立たずで、普通 両方の店を一夜にハシゴはしない。 それは遊びの礼儀。
だからおおみ屋に行く今日は、あずま屋には寄れないってコト。 で、オレらが走らされる事になった。


「三代目が佐和子さんにって。 好きなんでショ? 花月屋の桜水饅頭。」
「うふふ、ゼンさんにすっぽかされたとガッカリするところだったわ、ありがとう。」
「・・・・・佐和子さん、ひとつ聞いてみたいんですが・・・・」
「なぁに? “遊び忍の金ちゃんズ”がわたしに何を聞きたいの? あ“元”だっけ? うふふ。」

「三代目に気に入られてるという事実って・・・・ 怖くないんですか? その・・・・ 人質とか。」
「くすくす、あらあら。 わたしを誰だと思って? あずま屋の佐和子よ?」
「・・・・最高峰の遊女は、己が身を利用されるぐらいならば死を選ぶ、か。」
「ご名答。 贔屓の旦那を悩ませるぐらいなら、そうなる前に死んだ方がまし。」

さすが三代目、見る目がある。 このヒトを囲わず自身が通うのも、この誇り高さが良いんだろう。
たかが遊女なのに、オレ達忍びと同じぐらい職に対しての誇りがある。 全く脱帽するネ。
三代目が見染める女は、まさに最高の遊び相手だと言ってイイ。 だからちょっとだけ意地悪を言う。
言葉だけの遊女なんて掃いて捨てるほどいるから。 このヒトなら期待通りに答えてくれるはず。

「・・・・でも面白くないんじゃないですか?」
「まあ、意地悪ね。 当たり前じゃないの。 おおみ屋の、しかも乳臭い新造になんて。」
「三代目ならではのネームバリューですからね、仕方ないです。」
「来週は亀ちゃん押さえて、せき止めてやろうかしら? うふふふ。」
「「あはははは! 佐和子さんのお仕置きですね? くすくす!」」

ウン、やっぱり。 ほほえましい嫉妬と本音が聞けた。 このヒトも三代目の事大好きみたいですよ?
頭では仕事だと理解してても本音は面白くない、そりゃそうだと思うモン。 三代目に惚れてるならネ。
フフフ、しかし佐和子さんから見たら、新造は乳臭いのか。 三代目、来週お仕置きらしいですヨー。
ご機嫌は直ったし、聞きたい事も聞けたし。 軽く挨拶をして、オレ達はあずま屋を後にする。


なあ、テンゾウ、オレ達も頭では理解してるんだよネ、一応。 もうめちゃくちゃ面白くないケド。
何がって、潜入部隊にイルカがいる事。 様々な情報を得る為だと理解してるヨ、でも面白くないの。
三代目やオレ達の言うコトに、何の疑問も持たず盲目的に従うイルカ。 いや、超可愛いんだケド。

でもサ、潜入部隊にいたら潜るデショ? たくさんの人と接触する。 ヘンなコト覚えてきたら?
オレ達以外に、イルカのあの性格を利用して、楽しむヤツがいたら? ムキ―ッ ってなるんだよネ。
佐和子さんみたいに、ほほえましい嫉妬ですまない。 相手を見つけ出して殺してやりたくなる。

「イルカ、白餡好きだから、これ喜びますね。 一口サイズだし、食べさせて楽しみます?」
「ウン、オレも考えてた! 指ごと口に入れよう。 そんでもって舐めさせ・・・・・ アレ?」
「「・・・・・・・・イルカの気配?!」」

イルカへのお土産アイテムを、いかに有効に使うか画策してたら、当の本人の気配がした。 ここで。
花街でイルカの気配?? 潜入任務なの? オレ達が行った後に?? ・・・・・う〜ん・・・・。
そうだネ、チョット寄り道して行こう。 だって三代目のお使いは、ちゃんと済ませたしネ。