草狩り忍 3   @AC DEF GHI J




酒飲んで性格変わるヤツ、って結構いるよネ、男でも女でも。 隠された本質っていうの?
そっちのが本性なのもイッパイいるよネ。 普段はあんなに温厚な人が・・・・ みたいなヤツ。
ウチにも度々依頼がくるみたいだヨ? 妻子に手を上げる酒乱の旦那をなんとかして欲しい、とか。
ま、オレの所属してる暗殺戦術特殊部隊には、そんなショボイ任務なんてこないけどネー。



「フフフ、イルカちゃんはオレの表面を気にしないネ、特別扱いしない。」
「そうですか? 超特別扱いしてますよ? 木の葉の忍びだから貸し切りです。 ふふ!」
「ウン、そうだケド。 それは木の葉の忍びなら誰でも、ってコトでショ?」
「そりゃー カミュのXOが飛び交いますから。 ダイヤモンドと呼ばせてもらってます、内緒で。」

「もう内緒じゃないじゃない、フフフ! こういうトコがイイんだよネ、肩こらなくて。」
「・・・・そう言えばカカシさん、表面ばかり見てるって、ヘコんでましたよね。」
「ン? 別にヘコんじゃいないヨ? なんとなく言ってみただけー! もう慣れたしネ?」
「・・・・もう慣れたって・・・・・ そんな諦めたような目で・・・・ うぅ・・・・」


マスターが禁止にするのは客の前だけだし、てっきりイルカちゃんの酒癖は“叩き魔”かと思ってた。
ヨクいるのヨ、やたら人の肩や背中をバンバン叩くヤツ。 感覚が麻痺してチカラ加減が分かんないの。
ゴキゲンの本人に悪気はないんだろうケド、それが元で結構ケンカに発展する厄介な酒癖なんだよネ。

でもイルカちゃんは唯の泣き上戸だったみたい。 客とトラブルになるから禁止してると思ったヨ。
まあ・・・ 男がポロポロ泣くのはみっともないケド。 イルカちゃんの面子を保つ為だったんだ?
フフ、オレ達忍びは泣くのは恥とされてるから、とっても新鮮。 コレはコレで結構楽しめるカナ。

オレやマスターの為に、ロックアイスボールを作っている時のイルカちゃんは、さすがプロって感じ。
グラスを両手で囲って中のブランデーを、涙ぐみながら舐めるイルカちゃんは、なんだか頼りない。

オレしかいなくても必要以上に話しかけないし、オレとの会話で間が空くとニッコリしてくれたりネ。
さっきみたいに、聞いてる? って言うと、クスクスって声に出して笑う。 ホント、聞き上手。
マスターやイルカちゃんは、オレを唯の木の葉の上忍として扱う。 ソレがほっこりする元なんだヨ。


「アー オレでもココでは、自然体でいられるからサ。 ホント、ラクチン。」
「良いじゃないですか、イチャパラ好きでも愛犬家でもっ! こんなに優しいのに・・・ うぅ・・・」
「フフフ。 イルカちゃん、こんなに泣き上戸だったんだ? 確かにコレじゃ、接客になんないネ?」
「あー いや、カカシさん。 それだけじゃないんですよ、ここからが・・・・・ あ・・・・」


人の価値を表面でしか見ない女なんかに、カカシさんはもったいないですっ!   ・・・・そうダネー
カカシさんがカッコいいのは、内面から出る優しさが引き立ててるんですっ!   ・・・・そうかな?
俺だけは知っています、カカシさんの本音。 俺は誰よりも愛してますっっ!   ・・・・え、マジ?

イルカちゃんって・・・・ イヤ、別に性別にこだわったコトは一度もないケド。 オレ、忍者だしサ。

「でもどっちかって言うと、女のほうが楽で・・・・・」
「うぅ・・・・ 誰にも言えないけど、ずっと見てた、力になれないけど、でも・・・・ うっく!」
「ヤ、あの・・・・ そんなに泣かなくても・・・・ その、オレは・・・・」
「知ってる、うぅ・・・・ どんなに辛いのか、苦しいのか、泣きたいのかも・・・・」

イルカちゃん、オレのコト好きだったのネ? でも男って、挿入準備とか後始末とか色々と面倒だしネ。
ハイハイ、ありがとう、その気持ちはとっても嬉しいヨ? そんなに見ててくれたんだーネ。
こんな一生懸命告白するイルカちゃんを、手間かかるからってシャトアウトするのもねぇ・・・・



誰に感謝されなくても俺だけは言いたいよ、頑張って生きてくれてて、ありがとな?  なんて。
小さいスナックの泣き上戸からの告白は、ものスゴク温かかった。 ・・・・男なのにネ、ビックリだヨ。
すみませんね、これなんですよ、困ったもんです。 って、マスターが苦笑いしてる。 ああ、そうか。
イルカちゃんのコレは、聞かなかったコトにしてやってくれ、ってコトだネ? ハハハ、了解!

オッケー。 酒の席だもん、イルカちゃんの心に秘めた思いは、聞かなかったコトにする、ド定番だケド。
イルカちゃんもプロだから、まさか言っちゃった、なんて知ったらお店を辞めちゃうかもしれないし。
・・・・・それにネ、死と肩並べてる忍びには、一般人の、それもこんなに温かい思いは贅沢だーヨ。

「さすが木の葉の上忍、心得て下さってる。 おれ、酒好きだけど酒に呑まれるこの男が可愛くってね。」
「アハハ! ンー でも嬉しいよネ。 こんなに温かい告白はやっぱり嬉しいヨ。」
「そう言って頂けて、ホッとしました。 引かれちゃったら可哀想だし、禁酒にしてたんですよ。」
「ま、一見さんなら引いちゃうかもしれないケド。 オレはかれこれ一ヶ月もカミュを投資してるし?」

「あははは! いやー 本当、ダイヤモンドの輝きは一個でも眩しいですよ、超ピカピカ!」
「フフフ、ピカピカピカリン? オレ達木の葉の上忍は、そんなに輝きまくってるの?」
「今日は特に。 うちで一番高いブランデーのストックがなくなりそうです、嬉しい悲鳴ですよ。」
「フフ、コレだもん。 ねぇ、マスター。 またたまに・・・・ イルカちゃんに飲ませてもイイ?」

「周りにどう思われていようと、俺だけは変わらずに見てるから。 うぅ・・・ スンスン・・・・。」

「これ見てもそう思って頂けるなら、好きなだけ飲ませてやって下さい、本人も大好きですからね。」
「アハハ、オレ上忍ヨ? こんな温かいのに手出しちゃいけないって、知ってるから。」
「いやー カカシさん、イイ男だね! ホント、カミュの似合う男だよ!」
「・・・・・でショ? フフフ。」