オセロゲーム 3
@AC
DEF
GHI
J
こ、これは・・・ひょっとして・・・肉球モミモミというヤツ?
カカシ先輩が忍犬のパックンを呼び出して、よくやっているアレか?!
ボクも機会があったら、ヤラせてもらおうと思っていたが、自分がヤラれるとは思わなかった。
パックンの肉球は、なんとも言えない触り心地だと、先輩が言っていたのを思い出す。
「こら、若造。いい加減、放してやれ。」
「ビックリして、固まってるじゃない。」
「あ、そうだよね! つい・・・ごめん、ごめん!」
「・・・・いえ。」
彼は三代目から、忍びの契約獣だと聞いているはず。 なのにいきなり口寄せ獣に触るとは・・・。
ボクは、というか、忍びはみんなそうだと思うけど、他人が触れることを良しとしない。
手はチャクラを放つところだ、触わらせるなんて冗談じゃない。けど彼が触っても、嫌じゃなかった。
まだ、ドキドキしてる・・・。 この中忍、海野イルカの手は不思議だ。
「俺は、海野イルカ、18歳、中忍。 只今アカデミーの教員試験目指して努力中だ!!」
「おれはブル。人間年齢でいうと、たぶん25歳ぐらいだと思う。 暗部戌部隊部隊長の忍犬だ。」
「同じく暗部戌部隊部隊長の忍犬、22歳。 んーと名前は・・・・シロ、だよ。」
「ボクは暗部猫部隊部隊長の忍猫、18歳。 じゃぁ・・・クロと、呼んで下さい。」
「シロとクロ?! 二匹まとめて、オセロって呼んでも良い? なんちゃって、あははは!!」
「「「・・・・・・・・・・・・・。」」」
何なんだろう、この中忍。 暗部の部隊長の口寄せ獣だと聞いても恐れない。
三代目は手紙に、彼の事を動物好きと書いていたが、なるほど超がつく、動物好きのようだ。
それに動物の好きなところを、よく知っているらしく、彼が触ると、気持ちがいい。
今も頭にのせた手の指が、ボクの耳のクボミを掻いてくれてる。 眠くなっちゃうね、ビックリだ。
「ブル達のご主人は、暗部なんだ、凄いなぁ。 だからそんなにハイレベルなんだね。」
「読む話す、だけじゃなくて、食事も普通の人間と同じもの食べるから。 そこんとこヨロシク。」
「経費は三代目に請求すればいいです。 ボクも普通の食事でお願いします。」
「おー、それはいい。 おれは生肉が食いたい! 血のしたたってるヤツ! 幸せ!!」
「あはは、オッケー、わかった。ブル、一番年上なのに、動物本能が濃いんだね! クスクス。」
そんなすんなり受け止めて・・・ 彼はもうちょっと、人を疑うことを覚えた方がいいような気がする。
そのおかげで、ボク達の妙に人間くさいところも、不思議に思わないみたいだけどね。
アカデミー教員を目指しているから、何でもオールマイティーにこなせるんだろう、手当ても上手だ。
一週間の休暇か・・・なんだか楽しくなりそうだ。 火影様の粋なはからいに感謝しょう。
当たり前だけど、忍びは 心・技・体 が基本。 忍者アカデミーで一番最初に習う心得だ。
だからチャクラを封印されようが、体術のみでもそこらの中忍に、ボクらが負ける訳がない。
なのに、あの手がいけない!! 動物の気持ちいいポイントを押さえまくっている、彼の魔法の手。
これにはブルもボクも、あのカカシ先輩ですら逆らえない。 中忍 海野イルカ、恐るべし。
「ご主人が頑張ってるから食えるんだぞ? ご飯を食べる時は“頂きます”って言うんだ。」
「・・・・・いただきまーす!! 生肉、やったー!!」
「・・・イタダキマス?」
「・・・いただき、ます・・・」
彼の目もダメだ。 こうやって口で偉そうに言うくせに、その目がずっと優しいのもいけない。
目が合うと、可愛くてしょうがないという様に、キュッと細められるそれ。
『目は口ほどに物を言う』昔の人は偉大だ。 彼を見ていると、本当にその通りだと思う。
二日もすれば、ボク達の傷はもうほとんどふさがっていた。 適切な治療のおかげだ。
「さすが、回復もはやいなぁ・・・明日は外に出よう! 鈍ってるだろ、思いっきり動けるぞ?」
「やったーーー! おれ、ハト蹴散らすの大好きーー!!! グルグル!!」
「イイですね、イルカに訓練つけてあげます。」
「ウン、おもしろそう。 教員試験にトライする腕前を、みせてもらおうじゃない。」
「えー、俺が動かされちゃうの?! あははは、まいったなぁ。でも嬉しいよ、俺、ラッキー!」
ボクは昨日、寝ぼけて彼の耳たぶを引っ掻いてしまった。 爪を立てて伸びをしてしまったから。
彼は『へへ、思い出が出来たよ。この小さな引っ掻っき傷、ちゃんと残るかなぁ』と笑って言った。
どんな時も前向きで、愛情たっぷりに、見る、聞く、話す。 無償の愛に危うく溺れそうになる。
有り得ないけど。 動物に向けるこの無償の愛情が、もし人にも向けられたとしたら、恐ろしい事よね。