オセロゲーム 9   @AB CDE FGI J




この姿で会いに行って、イルカはボク達だってわかるかな? どうしょう・・・ドキドキする・・・
筆下ろしの時、布団の上で正座して、じっと遊女の入室を待っていた。 あの時以来だ。
・・・・あれ? カカシ先輩も緊張してるみたいだ、へー 百戦錬磨のこのヒトがねぇ・・・
先輩も不安なんだ。 へへ、先輩もそうだと思ったら、ちょっと落ち着いてきた。

「なにぃー?!?!  何でお前がココにいんの?!」
「そりゃ、気になるじゃないか、どんな忍びか。」
「で、でも、三代目の結界が張ってあったはずですよね?!」
「ちょいと、アタシを舐めてんのかい?」

不安で緊張していたボク達の気分を、思いっきり吹き飛ばしたのは、酉部隊長のアズサさんだった。
家の外で 情けない声を出してイルカをおびき出したんだ。 迷子か怪我のふりをして。
すまん、と気を飛ばし、ブルが背中を向けている。 アズサさんには逆らえなかったんだろう。
自分の部下をストーカーなんぞにしてしまった中忍を、その目で見たかったんだ、きっと。


「良かったなぁ、飼い主さんだ。 もう迷子になっちゃダメだぞ?」
「はぁ? ち、ちょっと待って下さい、なんでそうなっちゃうんですか?!」
「カカシ、テンゾウ、アイタカッタ、クルクル!!」
「テ、テメー、アズサ!! 調子に乗んな! 殺すぞ! 顔立ててやったろ!」

「な・・・・なんてこと言うんですか! そんな言葉、覚えちゃったらどうするんです?!」
「い、いや、だから、その、コイツは・・・ おい、テンゾウ、なんとか言え!」
「え、ボ、ボクですか? えっと、その、ボク達はシロとクロです!!  ・・・オセロですよ!! 」

まいった、全く予想通りのベタな迷子作戦だったみたいだ。 イルカ、もう少し警戒しようよ。
オマケにアズサさんは、ノリノリで飛び回るし。 偵察に行く時、彼女はいつも鷹か隼だった。
そりゃ、イルカの庇護欲をそそりますよ。 確かにコレは可愛いです。 オカメインコって・・・
シロとクロと言っても分からなかったみたいだが、オセロと言った事で、イルカはピンときたらしい。

「二匹、まとめて・・・ オセロって・・・呼んで、も? ・・・ホントに?  ・・・シロ?」
「なあに? イルカ。」
「クロ・・・お前なのか?」
「うん。 ボクだよ。」


「お前たち、凄い変化だよっ!! うわ〜、どこから見ても人間みたいだっ!!」
そうじゃないでショ!!  ホントに人間なの!!
シロとクロが、ボク達の変化だったんです!!
「・・・・あははは! もうやめて、ひー、苦しい、あはは、最高!! あはははは!!」

ショックだ・・・信じられない。 ボク達にとって、もの凄い感動の場面になるはずだったのに!!
アズサさんが変化を解いて、お腹を抱えて笑っている。 それを見たイルカは、ブルに話しかけた。
“もしかしてあなたも暗部さんなんですか? どうぞ、気を使わずに変化を解いて下さい”って。
もう、アズサさんが大爆笑だ。 寝転がって、畳をバンバン叩いてる・・・・ こんなのアリ?


「あー、おもしろかった! じゃあ、アタシは帰るよ。」
「二度と来んじゃネェー、クソ鳥!! 今度来たら焼き鳥にすんぞっ!!」
「何しに来たんですか、まったく!! とっとと、群れに戻って下さい!! 」
「あはは! カカシ、テンゾウ、良いモノ手に入れたな。・・・・約束は守る、安心しな。」

ひとしきり笑った後、アズサさんは鷹に変化して空へ羽ばたいた。 まさに天空の守護神そのものだ。
当然のことながら、鷹を見たイルカは、むちゃくちゃ興奮した。 ボク達の事はすっかり忘れて。
さらに、ブルの事を忍犬だと理解させるのに、先輩が口寄せの術を使って、他の忍犬を呼び出したら、
イルカの興奮は頂点に達した。 忍犬達にダイブしたんだよ。 ボク達の目下のライバルは動物だ。

「どうりで。 妙に人間くさい犬猫だな、とは思ってたけど。」
「・・・・・イルカ、怒らないの?」
「何で、怒るの?」
「ボク達はイルカを騙していたんですよ?」
「ブルとシロとクロがいて、凄い楽しかった。 一緒にいてくれて、ありがとう。」


これだ。これでイルカは全部、許してしまう。 傷だらけのボク達を里に運んでくれた。
家で、手当てしてくれた。 引っ掻いても笑って許してくれた。 美味しいご飯を食べさせてくれた。
お礼を言うのはボク達の方だ。 間違えなくてよかった。 イルカ、ボク達は君が大好きだ。
先輩とボクはイルカにしがみついた。 早くボク達を好きになって。 待ってるから。