オセロゲーム 7
@AB
CDE
GHI
J
「で? アタシにどうしろと?」
「・・・自分の部隊の不始末は、お前がつけなさいよ、アズサ。」
「自害でもさせろってのかい? 冗談じゃない。」
「な、何もそこまでは言ってませんよ。」
「・・・・・アタシもね、部隊長なんだ。 部下はみんなカワイイ。 バカでも。」
アズサさんに言わせれば、中忍だろうが里の忍びがストーカーを説得出来ない方がおかしいらしい。
ただ、あの性格から考えると、そう思っていないと言った方がいい。 ストーカーだと思っていない。
イルカの事だ、“きっと辛い任務だったんだ、俺が女に見えるなんて”と、受け止めてしまうだろう。
報告書を出さないのは、その忍びの経歴に混乱した汚点を残したくない、そう考えたからだ。
「んー、イルカはチョット特殊でね・・・ ストーカーされてる自覚がないんだヨ。」
「?? ・・・どういう意味だい?」
「木の葉の仲間に対しては、全部、良いように捉えてしまうんですよ。」
「中忍なんだろ? だいたいそんな人間がいるもんか! バカにしてんのかい?!」
部下思いのアズサさんに、イルカの生い立ちを知ってもらわないとダメだ。 話が進まない。
三代目から聞かされたこと、今迄の経緯、イルカを連れ去りそうになったことを、より詳しく話した。
彼女は始めは憮然としていたが、だんだん消沈して来た。 穴があったら入りたい、そんな感じだ。
やがて意を決したように“ちょっと待ってな、心当たりがあるから”と、ひとりの酉面を連れて来た。
「そう、コイツだ!! 木の葉ヶ丘公園で、オレを蹴り飛ばしたヤツ!!」
「・・・・・。」
「やっぱりか。 最近、何かを思いつめているみたいだったからね・・・」
「何があったか、だいたい見当はつくけど、君のしたことは酉部隊だけじゃなく、暗部の恥だよ?」
彼は、公園でブルに会った時から、カカシ先輩にバレたと悟ったらしい。 暗部に詮索が入ると。
腹を括ったのか、始めの任務に同行したときからの事を、アズサさんとボク達に話し始めた。
イルカと自分は両想いの恋人同士だと思っていたと。 思い余って監禁しょうとした事も。
・・・あーあ。 やっぱり、ヤラれちゃってたか・・・。 そんな気がしてたんだよね・・・。
「うがーーーーっ!! お前、去勢する!! 出せ!! 今すぐ!!」
「カカシ! 落ち着きな!! もう済んだコトだ!!」
「皆の前で、サラシますか。 暗部の強姦魔として。」
「だから!! テンゾウ! ドス黒いチャクラ洩らしてんじゃないよ!! ・・・水遁、水壁網!!」
うわっ! 先手を取られた!! アズサさんの水遁だ・・・水の膜が消えるまで動けない、悔しい!!
先輩がドスンと胡坐をかいて座り込んだ。 ボクも諦めて同じようにその横に座る。
ある意味助かったかもしれない。 薄々そうじゃないかと思っていた事を聞かされたんだ。
隔離してもらって良かった。 ボクも先輩も、もう少しで同胞を傷つけるところだった。
「・・・部隊長、おれ・・・ 失恋しちゃいました・・・・ ははは・・・ うぅ・・・」
「バカだね! 失恋もクソもあるかい!! お前のは立派なストーカーっていうんだよ!!」
「おれの気持ちは、イルカには全然・・・ 伝わってなかったんですね・・・ グス・・・」
「・・・・ほんとにバカなヤツだよ。 でも、そんな不器用なお前も、アタシのかわいい部下だ。」
一歩引いて、ふたりのやり取りを見ていたら、なんだかアイツが哀れに見えて来た。 だって・・・
このままいったら、ボク達も同じだ。 自分の気持ちだけを、イルカに押し付けてしまっていた。
狂犬が噛みついても、ちっとも痛くない、といわんばかりにイルカは、全部受け止めて許すだろう。
そして、もう間違って人に噛みついてはいけないよ、とあの無償の愛情を与え過ぎた事を忘れる。
「うっぅ、おれのイルカァ・・・」
「誰がお前のだ!! まだ分からないのかい?! その根性、叩き直してやる!!」
「グハッ!!」
「コイツはアタシの名にかけて、今後絶対、その中忍には近寄らせない。」
「ぶ、ぶた・・・い・・・ちょ・・う・・・」
「カカシ、テンゾウ・・・すまない。 ソレで勘弁してやってくれないか。」
アズサさんが・・・ 空を自在に駆け回る、天空の守護神といわれている酉部隊の部隊長が・・・
ボク達に向き直り、土下座をした。 彼女にそこまでさせてしまったら、もうボク達は何も言えない。
それに、ボク達もアイツみたいに空回りするところだった。 人のフリ見て我がフリ直せだ。
ボク達が欲しいのは、一方的なそんなものじゃない。 イルカが与えてくれる感情、全部がほしい。