精霊が宿る樹 5
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カカシ先輩とボクは、どうやったらイルカちゃんを里内に置いておけるか、を話し合った。
え? 本人の承諾?? そんなの関係ないよ、だってイルカちゃんはボク達の一部だから。
アカデミー教員募集の話を先輩にしたら、ものすごく賛成された。 ボクもねそう思ったんです!
で、すぐ応募用紙を三代目にもらいに行ったんだけど、そこには猿部隊 部隊長のカオルさんがいた。
「イタチがいなくなってから、お前、ちょっと働き過ぎじゃない?」
「・・・・・おれの体調を心配して、って理由なのか? このクナイ二本は。」
「ちょっとぐらい刺さっとけば、休めるんじゃないですか?」
「・・・・麗しい部隊長共の友情、か? もうちょっと待ってろ。」
この前あんまりイルカちゃんが褒めるもんだから、ついカカシ先輩とクナイ投げちゃったけど。
これはボク達のコミュニケーション。 ホントに刺さりそうなヤツにはもちろんやらない、部下とかね?
カオルさんもヘンな女に泣かれた時なんか、結構クナイ投げて来るしね。 部隊長同士の挨拶だ。
にしても、イタチがスパイになって結構経つんだよね。 イタチは猿班のナンバーツーだったから。
カオルさんはイタチの面をそのままにしてあるらしい。 猿部隊に戻って来た時の為に、って。
だからちょっとした事でも、部隊長自らが動かなきゃならない。 働き過ぎって言うのは、本当だ。
ボクもハスナさんがいない今、自分の部隊の腹心がいない事での忙しさを痛感していたりする。
「・・・・・・そうだ、丁度いい。 若奥さん、借りたいんだが。」
「はぁ?! カオルなんかに貸すワケないでショ?! 殺すヨ?」
「それはボク達のイルカちゃんにハメてみたいと言う事ですか?」
「馬鹿もんっ! イルカを潜らせると言う事じゃっっ!! たわけがっっ!!」
「アー ビックリした。 暗部内で部隊抗争かと思ったヨ。」
「さすがにカオルさん相手じゃ、キツイなとか思いました。」
「・・・・・・・思考を侵食される・・・ おれはやっぱり御免だな。」
「「???」」
イルカちゃんを“顔あり”で使いたいそうだ。 最初は如月上忍に、と思ったらしいけどね。
今、里にいる使えそうな潜入員は、イルカちゃんだけだからって。 ・・・・・これボク達のせい?
なんでもそこには、忍び崩れか、抜け忍か、そんなようなヤツがいるらしく、探って欲しいそうだ。
カカシ先輩もボクも、もちろんカオルさんも。 とてもじゃないけど、潜入なんて向いてない。
ってか、暗部の隊員はほとんどがそう。 だからこっちに回されてるようなもんだもん、暗殺専門に。
皆殺しが一番楽なんだけど、ターゲットの人数が絞り込まれる時は、やっぱり情報が必要になる。
潜入部隊の上忍に頼めば、顔なしで、事はトントンとスムーズに運ぶ。 迅速かつ、正確に暗殺。
でも顔ありだと、こっちがいちいち指示しなくちゃならない分、めんどくさがる隊員も多い。
だからなるべくなら、顔なしで使いたいんだろうけど、イルカちゃんは繋ぎのとれない中忍だもん。
でもね、このまま潜入部隊の中忍として経験を積んでいけば、間違いなくイルカちゃんは上忍になれる。
その素質があるんだよ? あの潜入のエキスパート、如月さんを追い越すぐらい優秀な潜入員になる。
そうなったら、この里に居ることはほとんどない。 それはボク達にとって死の宣告も同然なんだ。
「カカシ、テンゾウ。 若奥さんをアカデミー教師に推薦するのか?」
「推薦っていうか、申し込んじゃうつもりなんだよネ!」
「あの無二の信頼感は、アカデミー向きですよ、絶対!」
「うむむむ・・・・ そう言われればそうじゃな・・・ (ナルトを任せてみても良いかもしれん。)」
「じゃぁ、これが最後の潜入かもな。」
「ってか、もう潜入させるって、決めてるのネ?」
「仕方ないか、カオルさんの頼みだし・・・。」
「カカシ、テンゾウ、今日はイルカに噛みつかんようにするのじゃぞ?」
「「はーい。 ・・・・ちぇっ!」」
「・・・・・・噛んでるのか?」
「ウン!」 「はい!」
「・・・・・そうか。」
あ〜あ。 結局ボク達の画策が裏目に出た、って事だね。 でもさっきの三代目の感触は良かった。
もしかして。 ひょっとしたらカオルさんが言った様に、これが最後の潜入任務になるかもしれない。
できればゲージに入れて、家でずっと飼っていたいけど。 イルカちゃんは人間だからそれは無理。
ものすごい独占欲に自分でも引いちゃう。 でも、イルカちゃんはボク達にとってそれぐらい重要。
もうね、命の糧なんだよ。 イルカちゃんの気持いいチャクラに包まれてずっとゴロゴロしていたい。
ただ一緒に居るだけじゃなくて、入れてる時だって、鳴かせてる時だって、何をしてても楽しいんだ。