火影の嫁探し 1   ABC DEF GHI JKL




ワシの名は猿飛 ヒルゼン。 木の葉の里で生まれ育ち、木の葉の里で死にたいと願う忍者じゃ。
自慢じゃないが、木の葉に存在する全ての術を扱える、超強い忍び。 あ、血継限界は別じゃよ?
その昔、初代様と二代目様に サルよ、サルと、親しみを込めて呼ばれ、可愛がられておった。

当然、そんなエコ贔屓されまくりで可愛いかったワシの事を、面白くないと思う輩がおってな?
事あるごとに、ワシに挑んできては倍返しをくらっておった、その男の名を志村ダンゾウという。
ワシが火影を襲名したその日の夜に家に暗殺に来て、めちゃ強いワシに返り討に合い、泣きおった。

助けてくれと、ピーピー、ピーピー泣きおってのぉ・・・・ ほら・・・・ ワシ、優しいじゃろ?
暗殺失敗記念日をいつでも思い出せる様に、ダンゾウの顔にバッテン印をつけてやったんじゃ。
ワシの愛する里の為に身を粉にして働けば、助けてやらん事もないぞ? と、言いながらの。

おお、そうじゃよ。 あの顔のXの傷は、ワシがその時クナイでダンゾウにつけたバッテン印じゃよ。
・・・・はて? なんの話をしておったかの? おお、そうじゃそうじゃ、そのダンゾウがの?
影に妻がおらんのは他里に示しがつかん、後添いを貰った方がいい、ともっともらしく言いおる。

ダンゾウが鼻息荒く送りこんで来た女共を楽しみにしておるのじゃが、ワンパターン過ぎての?
ことごとく暗殺は失敗じゃし。 バッテン印を女の尻につけるのも、いいかげん疲れて来たのじゃ。
ほほほ、そうじゃよ、今のお主の様にな? 暗殺はもっと速やかに意表を突かねばならんぞ?

「三代目、お呼びですか?」
「おお、カカシ、テンゾウ。 こ奴を摘み出せ。」
「・・・・・また刺客、ですか。」
「尻は可愛いが、刺客としてはイマイチじゃ。」

このふたりはの、この強いワシが選りすぐった特殊部隊、暗殺部隊を任せておる部隊長と補佐じゃ。
お主も優秀な刺客になりたくば、より優秀なワシの暗部に、暗殺方法を叩き込んでもらうとええぞ?
火影のワシがいちいち動かんでいい様に、暗部の養成組織を作ったと自慢しておったが、この程度。
所詮ダンゾウが育成した忍びなんぞ、ワシ自らが選び抜いた忍びの足元にも及ばん、つまらんの。

「このっ! どこまでも人を馬鹿にしてっ! 放しなさいよっ!」
「ほほほ、なかなか生きがええの? もっと精進しろとダンゾウに伝えておけ。」
「私のお尻によくも・・・・・ 不能の猿飛ヒルゼン!」

「不能・・・・ ワシ、不能かの?」
「「まさか。 お年の割にはお元気かと。」」
「ほほほ。 まだまだ若いもんには負けんぞ?」
「くっ! ・・・・・エロハゲジジイ! 覚えてなさいっ!!

どうじゃ、この違い。 ターゲットの暗殺に失敗して逆切れする刺客。 片や、打てば響く様な忍び。
月とスッポンじゃろ? ワシの暗殺部隊の連中は、めちゃくちゃ優秀なのじゃ。 去勢はしとらん。
色ごとを禁じたら、楽しみがなくなるでの。 玄人相手なら、好きなだけ遊べと教えてある。
ワシ同様、女に誘惑されるような馬鹿な忍びは、ワシ選りすぐりの暗殺部隊には一人もおらんよ。

それに、油断ならん目をした殺気チョビ漏れの女の刺客なんぞに、このワシが起つわけなかろう!!
いつになったら、ワシをヒヤリとさせる様な刺客が育つのか。 ほとほと待ちくたびれたわ!
刺客のくのいちの尻にはバッテンを。 ワシのつけたX印を見て、未熟だった己を思い出すがええ。

おおそうじゃ、いい事を思いついたぞ? 暗部の肩の刺青と同じで、皆お揃いにしてはどうじゃ?
暗部養成組織 “根” の連中は、くのいちだけではなく、全員尻にX印を入れるのは。
見事暗部に昇格したあかつきには、その印を消す・・・・ というのはどうじゃろう?

ふざけんじゃないわよ! 馬鹿ヒルゼン!!
「惜しいの、生きの良さは合格点じゃ。」

「おもしろそうですネ。」
「ほほほ、ナイスアイデアじゃろ?」
「それもダンゾウ様にお伝えして来くるので?」
「うむ。 ダンゾウも顔にX印じゃ。 全員お揃いで嬉しかろうて。」
「「御意。」」



ダンゾウの言う事も理解できないでもないが、ワシの心には今でもビワちゃんが住んでおるし。
だいたいの、雷影も風影も妻とは死に別れておる。 影の本妻が生存しとる事の方が珍しいのじゃ。
・・・・・どうしても、暗殺の対象にされてしまうでの。 まぁ、ワシのビワちゃんは別じゃったが。

ワシのビワちゃんは、そりゃー もう、惚れ惚れするほど男勝りでの。 母ちゃんの鏡じゃった。
九尾襲来の混乱のさなか、クシナからナルトをとりあげたのが、なにを隠そうワシのビワちゃんじゃ。
あの時、四代目夫妻をはじめ、多くの勇気ある忍びが死んだ。 ワシのビワちゃんも死んでしもうた。
ビワちゃんっ子のアスマは、母の魂を弔うと言って火の寺に籠り、未だ木の葉の里に帰って来ん。

まあ、ビワちゃんほど肝の据わった女は、もうお目にかかれんと思うがの。 ・・・・・里の為、か。
ワシ、里が大好きじゃからの。 里の為、とか言われるとのぉ・・・・・ 超、激、鬼、弱いんじゃ。
ダンゾウが、ワシの退屈しのぎの為に送り込んでくれる刺客にも飽きたしの。 後添いか・・・・。

「ビワちゃん、里の為らしいぞ? ワシ、もう一回、嫁さん貰うが・・・・ 化けて出んでくれ?」