火影の嫁探し 6   @AB CDF GHI JKL




「待ちなされ、火影屋敷に何用か。 紹介状を持っておるなら出すがよかろうぞ。」
「あの・・・・・ 布路〈ふじ〉リンゴと申しますが・・・・・ その・・・・」
「・・・・・む! チャクラを感じないとは・・・・ 一般人か?」
「あの、えっと・・・・ き、昨日任務依頼を・・・・・」
「リンゴさーんっ! すみません、お待たせして。 あ、小助さん、この方は俺達の連れだから平気。」

「む! 暗部の部隊長と部隊長補佐、海野中忍ではありませんか。 お連れ様だったとは、ご無礼を。」
「フフフ、いつも頼りになる小助さん、でも相変わらず表情が硬いヨー?」
「火影屋敷警護の任務お疲れさまです。 おかげで侵入者ゼロですよ。」
「暗部のお二方に褒めてもらえるとは。 長生きはするもんですな。 さあ、どうぞお通り下され。」

「あ、ど、どうも・・・・     あの方も忍びなのですか?」
「ええ、小助さんは最高齢の下忍です。 料理の腕もピカイチ!」
「うふふ。 猿飛様の周りには、素敵な方がたくさんいらっしゃるんですね。」
「ははは、まったくです! 三代目は人望がありますからっ! さ、会いに行きましょう?」
「はいっ!」

「カカシ先輩、リンゴさんって・・・・ 爺専ですか?」
「でもそんな事言ったら、イルカだってそうじゃない?」
「そう言えばそうですね。 三代目のフェロモンがひょっとして・・・・??」
「・・・・・ウワァ〜 羨ましいような、そうでないような・・・・ ビミョー・・・・。」



こちらから呼び付けておいて、待ち合わせに遅れるなど言語道断。 そんな事は断じて許されない。
だがこれには深い事情があるんだ。 ついさっきまで、全くもって意味不明な押し問答が続いていた。
誰とだって? チーム嫁探しのふたりと、だ。 あまりに傍若無人な振る舞いに、説教タイムへ突入。

昨日あれから、いつもの様に家へやってきたふたり。 飯をたかり、風呂場を使い、居間を占拠。
勝手知ったるなんとやら、ここ1〜2週間ですっかり定着してしまった、恐ろしい生活習慣だ。
嫌みのひとつも言いたくなるだろ? だって再現するのに、俺の任務報酬の全てを費やしたんだ。
俺んちは、九尾襲来で燃えた。 だから頑張って建て直そうとしたんだ。 在りし日の海野家を。

下忍や中忍になってもらった任務報酬と、三代目からのおこずかいを貯めて、小さな中古物件を購入。
で、居間と風呂場を再現した。そう、奴らの居着いている場所がふたつとも、 俺にとっての思い出。
だから今の俺んちは、俺が寛ぐ為に作った理想の空間。 なのに、我が物顔で占拠ときた。

『おふたりとも稼ぎがいいんだから、中忍にたかる必要ないでしょう?』
『・・・・?? あ、食費ですか?! それは気がつかなくてすみません。』
『アー そうか! 一緒に住むとなったら、管理してもらった方がイイよネ?』
『は?! 一緒に住む?! まさか、ずっと居着くつもりですか?!』

『なんか、ここって落ち着くんだよネーv』
『お金の事なら心配しなくても、苦労はさせません。』
『・・・・・・ちっ! この高給取りどもがっ!』
『『イルカ、嬉しい?』』
『嬉しいか? そりゃ嬉しいですよ。 そんなセリフ、俺には言えませんもん。』
『『わーいvv』』

自分の家に帰れと言ったら、金を出すから同居させてくれと言って来た。 俺もそこまで鬼じゃない。
“落ち着く” なんて言われたら、それこそ嬉しいじゃないか。 こうなったら使いまくってやる、ってな。
まあ、彼女を紹介してもらうまでの話だろうけど。 それまでは、プチVIP生活を楽しませてもらおう。
なのに・・・・・ 金を払えば何をしても許される、ってモンでもないだろ? で、説教タイムとなる。

確かにな、暗部の任務の過酷さは、俺達正規の忍びに比べれば・・・・ って比べちゃいけないが。
温かい人肌が恋しくなるのも分かる。 あのチン揉み挨拶も、実はそうじゃないかな、と思ってた。
だが、俺は無害だと思っているせいか、笑顔でスルーして来たせいか、昨日は度を越していた。

今作ってるだろ、邪魔するな、ってぐらいチン揉みしてきたり。 作ってた料理は中断、説教開始だ。
まあ、説教が利いたせいか“後かたずけはおれ達の分担だよね”と、皿を洗ってはくれたが。
当然、家主である俺が一番風呂なのに、乱入して来ようとしたり。 再び、説教タイム開始だ。
まあ、分かってくれて“後からもう一回入ればいいか”と、風呂洗いも志願してくれたりしたが。

どこまでも人肌が恋しいらしい、人の布団に無理やり入ってきたりな。 説教してから追い出した。
が、結局三人で寝た。 だってなぁ。 しばらくして俺の部屋に入ってきて小さい声で言ったんだ。
“淋しいからこっちで寝よう?”なんて。 見れば、居間に敷いてやった布団を並べてあった。

俺より強くて優秀なはずの暗部、しかもそのトップツーが、まるで迷子の子共のように見えて、な。
下忍の時、九尾の夢を見て、怖くて泣きながら布団をかぶって寝たっけな、とか。
初めて人を殺した時、その夜はやっぱりガタガタ震えて、人肌が恋しくなったな、とか。
そんな俺が体験した淋しさなんか、ふたりに比べれば鼻クソみたいなモンだろ。 そう思ったんだ。

が。 朝起きたら、俺は女に間違えられて、襲われかけた。 いくら寝ぼけてるとは言え駄目だろ。
んで、ずーーと、説教タイムだった訳だ。 ハタと気がつくと、リンゴさんとの待ち合わせ時間。
な? なかなかオープンに出来ない複雑な事情だろ? 暗部の司令塔の面子ってモンもあるしな。


「三代目っ!! 喜んで下さいっ!! 理想の嫁さん見つけてきましたっっ!!!」
「あ、あの・・・・ 火影様、私・・・・ 布路 リンゴと申します。」
「ほう・・・・・ なかなか筋の良い刺客じゃの。 殺気もチャクラも感じられん。」
「イヤ、三代目。 確認しましたが、彼女一般人です。」
「ボク達が保証します。 正真正銘、ただの女性です。」
「なんとっ!!!!」

くすくす、この三代目の顔。 そりゃそうですよね、信じられませんよ。 俺達もそうでしたから。