火影の嫁探し 7   @AB CDE GHI JKL




三代目は終始無言で、リンゴさんを観察していた。 とことんまで疑う性分らしい。 仕方ないか。
今までダンゾウに刺客を送られ続けた訳だし、三代目本人だって、根性ある刺客を求めてたんだし。
ついには、ワシんトコに嫁に来ても、長生きは出来んぞ? などと、恐ろしい事を言いだした。
でもリンゴさんは笑って、チーム嫁探しの三人に釘を刺されました、覚悟は出来てます、と。

こんな人を見つけて来た自分が、俺達が誇らしい。 てか、本人の任務依頼がキッカケだけどね。
人生なにが起こるか分からない。 端から諦めるより、思い出が増えた方が楽しいに決まってる。
例えどんな結果になろうとも、一時だけであっても、現実に起こった事は心から絶対消えないから。

見れば、暗部のふたりがリンゴさんの目の前に、お膳を盾にして立ちはだかっていた。 防御態勢?
・・・・・・・って、何してるんです? 俺には速くて見えなかったが。 なにが起こってたんです?
小助さんが腕によりをかけて作ってくれた料理が、散乱して・・・・ ない! いつの間に食ったの?!
口をモゴモゴと動かしながらも、料理のお膳を構えて、リンゴさんを両サイドからガードしていた。

まさか。 どこからかもう噂を聞きつけた他里の忍びの仕業?! 嫁候補を亡き者にしようと?!
い、いや、動揺している場合じゃないぞ、俺。 これからこんなのは、ザラに起きるだろう事だ。
お膳の裏側には針ネズミの様に、リンゴさんに飛んで来た千本が、所狭しと突き刺さっていた。
ウチの暗部はマジで凄いな、猛スピードで口と頬が動いている。 あれ全部、一瞬で平らげたのか!

「モゴモゴ・・・・ 三代目、言ってるじゃないデスか、 ゴックン・・・・ 一般人だ、って。」
「ムグムグ・・・・ 一本でも刺さったら即死ですよ?  ゴクン・・・・ 危ないなぁ、もう!」
「むう・・・・・。 まこと一般人じゃったか・・・・・・ すまん・・・・・・。」

「・・・・・・・・さ、三代目?」
「わ、凄いです!! 守って下さって、ありがとうございますっっ!」

えっと・・・・・・ 無邪気に喜んでるリンゴさんは置いといて。 これは一体どういう事ですか?
この千本の出所は、三代目? この千本をリンゴさんめがけて飛ばしたのは、三代目なんですか?!
こ、この・・・・ 頑固ジジイッ!!! 何やってんだ、一般人だって何度も言ってるだろっ!!
と、心の中だけで叫んでみる。 だって仮にも、三代目はこの木の葉の里を治める、我らが火影だし。

しかし・・・・・。 俺、何も見えなかった。 一応、中忍なんだけど。 はぁ、切ないなぁ・・・・・。
たそがれてる俺に追い打ちをかける様に、暗部のふたりが、うっとおしい視線を飛ばしてきた。
どう見た? こんなの余裕。 おれ達は超強い忍び。 感心したでしょ? みたいな。 ムカッ!
チラチラとドヤ顔で、仕事の出来る男をPRされた日にゃ、そら豆を飛ばして当たりたくなる。

「ていっ! うりゃっ!」
「「!  あーーーんv モゴモゴ・・・・・ ペッ! 臭いけど、美味しいvv」」
「・・・・・・・・・あ、そう。」

くそ! 軽くかわされた、悔しい! 小鉢に残っていたそら豆をふたりに飛ばしたら、食いやがった。
皮と中身を口の中でちゃんと別け、皮は吐き出し、中身は胃の中へ。 どんな器用な舌してんだよ!
臭いのはそら豆の特徴だ! この高給取りのエリートめ! 嬉しそうにニコニコして食いやがって!
その料理で数々の忍びを虜にして来た小助さんが、心を込めて茹でたそら豆だ、美味いに決まってる!

「まぁ! では火影様も。 ・・・・・はい、皮をとりましたよ? どうぞ?」
「むぅ・・・・・・。 モグモグ、 うむ! 小助の料理はピカイチじゃ!」
「くすくす! きっと塩加減がお上手なのでしょうね?」
「リ、リンゴさんの皮剥きも、上手じゃったぞ?」
「うふふ。 それはありがとうございます、ふふv」

おい、そこ! 俺達が知らない内に、急にラブラブっぽくなってるぞ?! どうなってるんだ?!
ジジイ、年を考えろ! こんなホンワカ美人にそら豆の皮剥かせて、食べさせてもらっていいのか?!
・・・・・・・はっ! 俺は三代目に幸せになってもらいたかったはず。 ジェラシってる場合じゃない!
そうだ、これでいいんだよ。 なんとなーく、幸せな雰囲気に包まれているじゃないか、三代目。



良かったですね、火影様。 年は離れていても、とってもお似合いですよ? へへへ、嬉しいな。
久しぶりに良い仕事したなー みたいな感じ! チーム嫁探しも、これでお役御免ですね。
あ、でも、約束は守って下さいよ? 俺にピッタリな恋人を・・・・・ な、何事?!
ドスドスと忍びらしくない足音と共に、よく見知った気配が。 三代目の実子、猿飛 アスマだ。

「親父っ! 再婚するって本当かっ!!」
「おお、息子のアスマじゃ、丁度いい。 ワシの嫁、リンゴちゃんじゃよ。」
「はじめまして。 ヒルゼン様の嫁、リンゴです。 お母さんとお呼び下さい。」
「おい、あんた、洗脳されたんだな? そうなんだな?!」

「ほほほほ! アスマはビワちゃんっ子での。 許してやってくれ。」
「はい、気にしてません。 頑張って、お母さんと呼んでもらいます!」
「うむ! さすがワシのリンゴちゃんじゃ。 胆が据わっておる!」
「まじか? ・・・・・・・・・・・・・・・・呼べるわけねーだろうがっっ!!」

すっかりその存在を忘れていたけど、そう言えば、アスマ兄ちゃんはまだ喪に服していたんだった。
ビワコさん大好きっ子のアスマ兄ちゃん。 義理の息子がマザコンとは、リンゴさんも苦労するなぁ。
残念ながら解散は中止です。 やっぱりここは実績のあるチーム嫁探し、俺達の出番でしょうね。
リンゴさん、安心して下さい、俺達は三代目とリンゴさんを応援しますから! 大プッシュですっ!