火影の嫁探し 3
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DEF
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「ねぇ、なんでこんなに出番ないワケ? せっかく待機してるのに。」
「イルカの書類選考が、厳し過ぎるんじゃないんですか?」
「別に俺んちで待機してろと、言った覚えはありませんが? それに書類選考は厳しくて当然です。」
「だってイルカのご飯、美味しいもんネー。」
「今日はなんでしょうか、楽しみです。」
「・・・・・・・今日は普通の焼き魚です。 誰だって出来ます、焼くだけですから。」
「「わーーーい! いっただきまーーすっ!」」
「・・・・・・・・・・・・。」
俺達はスリーマンセル。 三代目の後妻を見極める為の“チーム嫁探し”だ。 勝手に名付けられた。
ちなみに小隊長は俺だが、当然名ばかりだ。 小隊長の俺の言う事なんて、これっぽっちも聞かない。
勝手に上がり込んで飯食ってくし。 相変わらず挨拶はチン揉みだ。 これはもう無視の方向で行く。
もともと俺が大きくリアクションして面白がらせたせいだから。 無反応だとそのうち飽きるだろう。
この前、怒るのも疲れたので、挨拶だろ?って、 俺も揉んでやったら、変な空気が流れたんだ。
おおv マジで? 何気に気持ちいい、もっかい触ってみる? とか。 ビビったから即スルーした。
ちょっと変わった他国の挨拶だと思えば、コレぐらい耐えられる。 ニッコリと飽きるまでスルーする。
笑ってごまかせ 知らぬ存ぜぬ 臭い物には蓋 の俺達受付忍の世渡り術、必殺 笑顔でスルーだ。
「でも実際問題、再婚の申し込みは多いんですか?」
「多いですよ? でも・・・・ ほとんどが怪しい者ばかりです。」
「別に怪しくてもいいよ。 火影の妻、なんて飾りだモン。」
「なんて事言うんですかっ!! 三代目は真剣に再婚を・・・・・」
「考えるワケないじゃん。 標的にされるのがオチだし。」
「諦めない刺客が、今の三代目には必要なんです。」
「・・・・・・諦めない刺客?? どういう事ですか?」
やっぱり知らないでいる方がよかった。 三代目がいつも暗殺されそうになってた、だなんて。
しかも同じ木葉の忍びに。 “根”は、三代目を火影の座から引きずり落とす為の組織なんだそうだ。
暗部隊員の養成組織じゃないのか? 根も暗部同様、俺達普通の忍びにとっては憧れだったのに。
そこまで分かっているのになんで放置してるんですか、ダンゾウ様の好きにさせていいんですか、
そう言ったら、ダンゾウ様の・・・・いや、もうあの男には“様”など付ける必要がない、
ダンゾウは、二言目には“里の為”と言うらしい。 全ては里の為に考えて動いている、と。
三代目に刺客を送るのも、平和になった里では猿飛が鈍ってしまう、暗殺対応の訓練だ、と言う。
クノイチの刺客は、いつまでも後妻を向かえない猿飛を楽しませる為、訓練も兼ねてだ、と言う。
暗部の隊員の育成に努めるは、それこそ、里の、猿飛の為なのだ、といけしゃぁしゃぁと言うらしい。
後ろを見ずに前を向いて頑張って来た三代目。 悪い事も考え方一つで良い事に感じると教えてくれた。
俺は、人から甘いだの、非情になりきれないだの言われている、そんな三代目が大好きなんだ。
だって俺達忍びは、ロクな死に方はしない。 そんなの始めから分かってる。 だからこそ、だ。
死ぬまでに良い事を一杯感じる様になった方が、楽しいに決まってる。 三代目には幸せでいて欲しい。
なのに三代目は、暗殺が失敗しても逆切れしない、根性のある嫁が欲しいそうだ。 そういう者は、
他者に自分が殺されそうになったとしても、本望を遂げるまでは絶対諦めないだろうから、と。
三代目は始めから、再婚をして自分が幸せになるなんて事、考えてはいないという事ですか?!
「うぅぅ・・・・ 俺は・・・・ ひっく、三代目の、第二の青春、を応援するつもり、うぅ・・・・・」
「ヤ、あの、イルカ? ナニも泣かなくても・・・・・・ その、そんなに考えなくていいから。」
「根性のありそうな健康体を選別してくれれば良いだけですから。 ね? 泣かないで?」
根性ある刺客かどうかを審査するのは、暗部の司令塔である自分達の仕事だ? ふざけんな!
なら“チーム嫁探し”は、最初から図太い“刺客探し”でいいじゃないですか! 人を巻き込むな!
俺が選別した人なら、パッと見は嫁らしく見えて立派なお飾りになるだと?! なんだそれ!
悲しいやら、虚しいやらで、ボロボロ涙が出て来た。 こうなったら、絶対いい嫁をみつけてやるっっ!
「だからって、俺の股間を揉むなっっ!! 挨拶は今、関係ないだろっ!!」
「ア、泣きやんだ。 フフフ、よかったー!」
「元気でましたね。 イルカ、分かりやすい!」
「そりゃ、涙も引っ込みますよっ! てか、違うとこが元気ですっ! バカたれ!!」
俺は風呂場に直行した。 取り合えずこの元気なモノを静めなければ。 絶対あれ、面白がってる!!
もうこの人達の階級、暗部のトップツーだという認識なんか、きれいさっぱりどっかにすっ飛んだ。
男は感情と関係なく起つ生き物なんだよっ! うぅ、不覚。 泣いちまうとは。 俺が一番バカたれだ。
「「イルカーーーー 手伝ってあげようかーーーー?」」
「やかましいっっ!! そこで飯食ってろっ!!」
「「了解、小隊長v」」
くそぉーーー! こんな時だけマンセルの隊長扱いかよ!! 暗部のトップツーめ! 今に見てろ?!