火影の嫁探し 4
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あれから俺は、三代目にピッタリな心優しい嫁さんを探すべく、書類選考に余念がなかった。
決めたんだ。 絶対、刺客っぽい奴なんか第二次審査、つまりは、あのふたりに面接なんてさせない。
市井に出かけて、三代目の激カッコイイ写真を配ったり、お見合い婆の真似ごとなんてのもしてる。
里の自分の家にいる間だけでも、三代目には幸せを満喫してもらいたい。 俺の心からの希望だ。
「イルカ、ちょっといいか?」
「なんだ? ・・・・・・ぇ。 ・・・・これ、任務扱いできたヤツ?」
「うん。 お前、チーム嫁探しだろ? お前の管轄かなって思ってさ。」
「“三代目! 恋人にしてください!!”・・・・・・・って、マジでか?!」
俺はこういうのを待っていた。 だってそうだろ? 嫁にしてくれとは“火影の妻”の座が狙いだ。
ほとんどの嫁希望の申し込み書には、ぜひ、嫁にしてくれ、と記入されている。 三代目が火影だから。
また、そうじゃないかな、違うかも、っていう人もいたにはいたけど、警告すると大抵が取り下げる。
他里の忍びの暗殺のターゲットにされる事を、ご覚悟下さい、そう告げると皆尻ごみするんだ。
「おい、その人どっちに行った? ・・・・よし、まだ里を出てないな、俺、ちょっと抜ける!」
「あ!! おい、イルカ!! でもむちゃくちゃ若かったぞ? ・・・・て、もう聞こえてないか。」
俺はピッタリな嫁を探すつもりだったけど、それは三代目に第二の青春を楽しんでもらう為、でもある。
火影の妻になんてならなくてもいい、恋人にして下さい、だなんて・・・・そんな女性が・・・・・。
しかも嫁探しの窓口である俺ではなく、本人が任務依頼に来たというのも、もの凄く好感が持てる。
一回だけでいいんです、と言ったらしい。 一度だけなんて・・・・ この人だ、この人しかいない!
「リンゴさーんっ! 任務依頼を受けましたぁー!
里の門でお待ちしてまーす!!」
俺は、馬鹿みたいにデカイ声で叫びながらあうんの門まで移動する。 彼女の顔を知らないから。
あうんの門で待っていれば、リンゴさん本人と会える。 そして警告する、それでも大丈夫なら・・・・。
三代目、俺・・・・ 猿飛 ヒルゼンを愛する女性を、ベスト・オブ・ザ嫁を見つけるかもしれません!
喜び勇んだ俺を門で待ち構えてたのは、チーム嫁探し仲間のチン揉み挨拶だった。 平常心だ、俺!
「・・・・・・俺、招集かけてませんよ?」
「だって、ベスト・オブ・ザ嫁とか、呟いてたでショ?」
「嫁が見つかったなら、面接はボク達の仕事です。」
「ま、まだ一次審査を通すかどうか、決めていません。」
「チームを無視して、小隊長の単独プレーは反対! ブー!」
「三代目は協力して、って言ったじゃないですか! ブー!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・ちっ。」
くそ! 正論できやがった。 チン揉み挨拶をスルーされたのが悔しいんだろ? はははは、どうだ!
さっきモミモミッてして来たから、ぺシぺシッてその手を叩き落してやったんだ。 ザマーみろ。
本来なら暗部の、それもトップツーに喧嘩を売るのは馬鹿だけど、もう吹っ切った。 俺、小隊長だし!
取り合えず、本人が来たら暗殺ターゲットの警告をするから、話はそれからだ、と説明する。
な・・・・! まだ諦めないのかっ! くそ! 俺だってだてに中忍になった訳じゃないんだぞ?
門番は暗部に稽古付けてもらって、海野中忍いいなぁ、とか言ってやがる。 これ稽古に見えるか?!
チン揉み挨拶から死守する為、素早い動きで俺の股間めがけて来るふたりの手を叩き落としていた。
来ると分かってる攻撃を喰らうほど、トロくさくはないぞっ! おりゃ! まだまだっ! せいっ!
「あの・・・・ 楽しそうに踊ってらっしゃるところ申し訳ないんですが、リンゴです・・・・・」
「えっ! リンゴさんっ?!」
「「っしゃーっ! 〈モミモミッ!〉 」」
「・・・・・・・・ふぅ。 気が済みましたか?」
「「勝利っ!!」」
「・・・・・・・・あ、そう。」
一般人の動体視力では無理だ。 俺がめちゃめちゃ速いパラパラダンスを踊っている様に見えただろう。
モグラたたきゲームのハイスコアを記録する勢いで、ふたりの手を叩き落していただけなんだが。
リンゴさんに視線を移した途端、チン揉み挨拶。 どうやらエリート達の負けず嫌いを刺激した様だ。
まあ、これも一般人には、いい汗かいたな俺 ふぅ、みたいなモノに見えたかもしれない、速すぎて。
「・・・・・・っと・・・・・ ご本人? あの任務依頼の??」
「はい。 三代目様をお慕いしております、リンゴといいます。」
「え・・・・ 三代目を・・・・・ 押したい? お死体? おした胃??」
「イルカ、落ち着いて。 “お慕い”だヨ!」
「三代目にフォール・イン・ラブ って事です!」
「あの・・・・・ つかぬ事をお伺いしますが。 御年はいかほどであらせられますんでしょうか?」
「チョット! 変な言葉使いになってるじゃナイ! イルカ小隊長でショ、しっかりしてっ!」
「ここはボクが。 コホン! 凄く若く見えますが、リンゴさんの実年齢は、おいくつでしょう?」
「私は20歳です。 くすっ!」
「「「・・・・・・・・・。」」」