死人〈しびと〉探し 11   @AB CDE FGH IK




なんか・・・・・ 嵐の様な一夜だった。 暗部のふたりは応援のご褒美に、俺が欲しかったんだって。
何をどうしていいかわからないから、一生懸命、言われるままに頑張った。 その、俺も男だし?
女の子が好きで色々想像して、ひとりでこっそりいたしてたんだけど・・・・ レベルが違い過ぎた。
女の子にする予定だったのが、このふたりにしてもらった事の方がインパクトが強すぎて、もう・・・・。

「「おはようvv」」
お、おはようございます・・・・。

「里に帰ったら三代目に、結婚の報告をしましょう!」
「うん。 みんな別姓でいいから、籍入れようネ!」
・・・・・・よろしくお願いします?
「「決定〜〜〜!!」」

最中にずっと乞われるようにお願いされてた。 この先ずっと一緒にいて、死ぬ時は一緒に死んでって。
こんな情熱的な言葉、聞いたことない。 一緒に死ねだなんて。 幼いあの日、最初に思った事だ。
九尾封印の戦いに行った父ちゃんと母ちゃんは、絶対駄目だと言った。 それを、許してくれるんだね?
こんなすごい人達に、こんなに欲してもらって、俺めちゃくちゃ幸せだ。 三代目もきっとそう言ってくれる。
 

「旦那様、おはようございます、朝早くからすみません。 イルカです、お話があります。」
「おはよう。 どうしたんだい? イルカ君。 ・・・・そちらの方々は木の葉の忍びだね?」
「どうも。 少々、お尋ねしたいコトがあります。」
「・・・・中に入ってお話しした方が、いいかと。」
「おお、これはこれは。 どうぞ、ささ、奥へ。 イルカ君お茶をお出しして。」
「はい、旦那様。」

まずは俺が木の葉の忍びで、ある依頼の為にみと屋へ潜っていたと告白した。 黙っていてごめんなさい。
そしてあの鏡について尋ねた。 妖を映せる鏡というのは、黄泉から戻った魂も映せるのではないか、
本来の姿、死んだ時の自分の姿がそこに映しだされる。 それを見せたくなかったんじゃないですか、と。
始めは驚いていた水戸さんも、そこまで予想がついているのならと、ホントの事を教えてくれた。

あの三人が、実はもうこの世にいない人達である事。 黄泉返りの術で、帰って来てくれた奉公人だそうだ。
黄泉返りの術はもろ刃の剣。 魂を実体化させるが、本人が自分の死を思い出した時点で魂も消滅してしまう。
肉体は滅んでも、いつか魂はその形を変えて再生するが、それすらできなくなる為、今では禁術だ。

「あの三人は、どこかで黄泉返りの術の話を聞き、生前術をかけてもらっていたんですね?」
「皆、みと屋を愛し、私に尽くしてくれていた。 まさか死んでまで戻って来てくれるとは。」
「だからあなたは、あの蔵に奉公人が近付く事を禁じたんだ、その思いに応える為にも。」

「では、行方不明になった人達も死人で、あの鏡を見たからですか?」
「はは、彼らは単に、あの海妖イカに驚いて、喰われる前に辞めさせてくれ、と出て行ったのだ。」
「・・・・・ま、アレを見たら、そう思うだろうネ、怖いモン、普通。」

みな出先で事故や争いに巻き込まれ、亡くなったそうだ。 どこを探しても死体が無く、遺族に申し訳ない。
だから水戸さんはその家族に、何かの足しにと見舞金を送った。 残された家族をずっと援助したかったが、
そうする事で遺族が会いに来て、黄泉返りの術が解けてしまうかもしれない、と断念したらしい。
死んだ事に変わりはない。 また悲しみを、しかも今度は魂の消滅を、家族に見せる訳にはいかない、と。

「死んだその日の夜に、遅くなりましたと、私の枕元に座っていたんだ。 その日の記憶はなかったよ。」
「・・・・・みなさん、本当にあなたを慕い、とみと屋に尽くされています。 幸せな魂ですね。」
「三人とも、ここに閉じ込める様な形になってしまって、申し訳ないと思うよ。」
「店から出して、知人や家族に会うとも限らない。 だから外出は、あなたか新人の仕事だったんですね。」
「「・・・・・・。」」

最初会った時、同じ名前の人かと思った。 でもタツキさんが依頼人の探している人だと確信した。
触れた時に、血の流れる音が聞こえなかったから。 温かいのに、心臓の微かな鼓動も感じられなかった。
亡くなった兄の為、長年少しづつためたお金で遺体を引き取り、立派なお墓を建ててあげようとしたんだ。
だから木の葉に死人探しを依頼した。 黄泉返りの術で体はなく、魂だけになってしまったとも知らずに。

「実は依頼人を呼んであるんです、みと屋に。 今日あたり来てくれると思うんですが。」
「会ってしまえば、タツキの魂は消滅します。 そうですか、タツキの家族が・・・・。」
「水戸さん、ひょっとしたらタツキさんの記憶は死んだ時の、10年位前のままですか? それなら・・・」
「三人の時間は奉公に来た初日に戻っていました。 悲しい事に家族の記憶だけは、その時のままなんです。」

「・・・もしそうなら。 その芸子を見ても、彼は自分の妹だとは気が付かないかもしれないですね。」
「三代目にお願いしたモノは、その依頼人だったんだ? 自分の目で真実を見て判断してもらおうと?」
「ええ、そんな兄想いの妹さんなら、タツキさんの姿を見れば、そっとしておくかもって。 希望ですけど。」
「・・・・・イルカ君、ありがとう。 その娘さんに、全てを委ねるよ。 どんな結果になっても。」

水戸さんは、例えタツキさんの魂が消滅しても、今まで尽くしてくれた事は忘れない、だから。
墓を建てるのは、ぜひ自分にやらせてくれと頭を下げた。 この人が此処まで慕われる理由がわかった。
きっと三人は、みと屋もそうだけど、水戸さん本人の人柄に惹かれ、一緒にお店を大きくしていったんだ。
一代で富を手に入れた大商売人。 店の奉公人との絆を何よりも大切にする、素晴らしい人だった。

じっちゃんも、皆に慕われている。 古今東西、偉大な人は他人を惹きつけるカリスマ性がある。 凄いや!