死人〈しびと〉探し 9   @AB CDE FGI JK




任務から戻ったら『只今戻りました・ご苦労』で、号令は『解散・お疲れ様でした』だし、
店では『いらっしゃいませ・ありがとうございました』だ。 自分のテリトリーに他人は入れない。
家へ帰るのは仮眠をとる為だけ。 『ただいま・おかえり』なんて、久しく使ってない言葉だった。
ジ〜ンとしてたら、夕飯まで出て来た。 もちろんご馳走になって『美味しい』を連発する。

「・・・・・あ、もったいない・・・・ん・・・。」
「「!!!!」」
「お、お行儀悪かったですよね、つい・・・ すみません!!」

「・・・・・イイよ気にしなくて。 拭くより早いもんネ?」
「・・・・・食べ物を無駄にしないなんて、エライですよ?」
「あはは、三代目と同じ台詞! 気取らない方々で良かった!」
「「・・・・・。」」

今回は豆乳豆腐をスプーンですくってくれたんだけど、何度か繰り返していたら、豆乳が彼の手をつたった。
何度も上下させていたら、いつかはそうなる。 豆乳がスプーンの先から柄を持ってる彼の手をつたう。
そしてそれを見たうみの中忍は、拭きはせず舐めとった。 握った手を開いて、自分の指を咥えて・・・・
指の間の白い液体もきれいに舐めとる。 爺の調教万歳! なんなんだ、この意識しないエロさは!!

「三代目は、ボク達の父親も同然。 偉大な師匠ですよ。」
「全くだ。 憎めない、ちゃめっけたっぷりな爺さんだネ。」
「そうなんですっ!! 俺も三代目がいなかったら今頃・・・・」

彼も両親を亡くした後、三代目の世話になったそうだ。 うん。 たまにエロ爺だけど、その愛情は本物。
ボク達木の葉隠れの里の忍びは、皆三代目を慕ってる。 誰もが人の温もりを、愛情の欠片を知ってる忍び。
里を守る為なら皆、鬼にもなれば仏にもなる。 その鬼のなり方には、まあ、いろんな奴がいるけど。

任務をこなして里の民に潤いをもたらす、これが一番の里への貢献。 金は天下の回りもの、とはまさに。
今日も生きて帰って来ました、っていう自分に対するご褒美だ、結構ハメをはずして遊ぶことが多い。
ボク達が遊んだ金はいつかどこかで、里の任務依頼へと繋がっていく。 死んだらそのサイクルは終了だ。

「そうか・・・。 うみの中忍も、苦労したんだネ。」
「こんな立派な潜入員になって、三代目も喜んでますよ。」
「何言ってるんですか! おふたりのご苦労と功績に比べたら俺なんて、ケツのアナです!」

「ぷっ! ケツのアナって・・・・アンタ、そんな顔して・・・・ あははは!!」
「なんですか、その例え! それも三代目がよく言ってるの?! あははは!!」
「え?! え?! そ、そんなにウケルとこ?!」
「「あはははは!!」」

三代目に連れられて行ったから、火の国の花街では、ボク達はちょっとした顔。 味にもうるさい。
でもね、まさかこんな同じ位の年の、しかも男が。 自分達を、真っ直ぐ射抜く目を持ってる忍びが。
無知で無自覚な何気ないしぐさや言葉・・・・ それがこんなに可愛いなんて、思いもしませんでしたよ。
里の日常生活でも、決して遊び心を忘れない。 ボク達は父のその偉大さを、改めて思い知りました。


「は?? イカ??」
「そう。 妖の類だと思うけど、海妖イカみたいなデッカイのが一匹。 地下の池に飼われてた。」
「大きな鏡がね、置いてあって。 多分敵だと思ってるんだろうね、スミを飛ばしたりしてたよ。」

「・・・・・・みとの黒は・・・・妖のイカ墨から??」
「きっとね。 でもさ、そんなの秘密にしなくていいのにネ?」
「行方不明の人達は、あのイカの餌にされてる、とかでしょうか。」

「あいつ見たでショ? あんなデッカイの、ひとりふたりじゃ、足りないよ。」
「そうですよね。 ちゃんと設備も整ってて、バッチリ飼育してる感じでしたし。」
「・・・・・その鏡は、妖を映す鏡なんですね? そうか、だからか・・・・・。」
「「???」」

みとの黒の技法は謎のままだけど、何から抽出するのかは解明できた・・・・ って、産業スパイみたいだ。
コレを知ったところで、特に命を落とすような危険はない。 安心して、部屋でくつろいじゃってた。
ご飯までご馳走になって、良いモノもいろいろ見れて。 こんな応援なら何回でも行きたい。 ね、先輩?

うみの中忍が何かを確信したらしい。 忍びの顔とのギャップも良い。 これは・・・・ ハマったかな?