死人〈しびと〉探し 8
@AB
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JK
凄い事が判明した。 今回応援に来てくれた人は、暗部の部隊長と補佐なんだそうだ。 ひえ〜!
見るからに戦忍っぽくて強そうだと思ってたけど。 まさかそんな雲の上の人が、こんな此処に来るなんて。
じっちゃんによっぽど心配かけたんだなぁ、直轄部隊の暗部をよこすなんて。 申し訳なさで一杯だ。
ん? 待てよ? って事は俺・・・・ 残りモノの汁と飯を食わせてしまったのか、そんな方々に!
「まあいっか、疲れが取れたみたいだったし。 イイ人達だ、文句言わず食べてくれたしね!」
とにかく、危険があったら応援を呼ぶ。 まず先に、蔵に何があるのか確かめておこうかな、と思った。
その前にあのふたりが来てくれたから、報告をする。 なんと、問題の蔵に直接入ってくれるそうだ。
実力が伴わなきゃ、即決判断は無理。 う〜ん、さすが暗部、いきなり核心部分からえぐるなんて。
「ひな鳥みたいで可愛かったなぁ。 じっちゃんもそうだけど、強いのに全然威張らないし!」
あの蔵には何があるのか想像つかない。 タツキさんが言うには、みとの黒の作り方の技法があるとか。
みと屋の染色技術は門外不出。 今まで行方不明になった人の何人かは、スパイ目的だったのかも、と。
この本店以外に住み込みの奉公人制度はない。 ここまで手厚い保護のある職場で、理想の環境。
でもあの蔵に近付いて、何かの秘密を知ったからか、今までもう何人もの新人が戻ってこないという。
「そんなに行方不明者が出てるんじゃ、噂のひとつも立っておかしくないのに・・・・。」
不思議に思う事は、外出の用は必ず、旦那様か俺なんだ。 なぜか新人の俺が店外に出る用事を頼まれる。
最初は、新人だしパシリ的な感じだろうな、と思ってたんだけど。 旦那様の言付けも頼まれるし。
信用されてきたんだとも思ったけど、旦那様からの信用度でいくと、他の三人の方が断然上だ。
「店の中からコッチは、ほとんど三人だもんな。 帳簿だってそうだし、仕入れも商品管理も。」
信用を重んじてるのかもしれないけど、旦那様がわざわざ取引の為に出かけるのも不思議だ。
そんな旦那様の代わりに、俺が使わされたりするのはもっと不思議。 必要書類なんかは全部三人が作る。
俺はホントただ会って、重要書類を渡したり、預かったりするだけ。 話は全部先に、電話で通っている。
ハッキリ言って、旦那様と俺が配達係。 あの三人が実質、みと屋のやり繰りや取引をしてるようなモノ。
「でもそのみと屋の柱が揺らぐかも、だ。 そうならない様に願いたいけど、こればっかりは・・・・。」
俺の前の奉公人は、家に病気の母親と姉妹がいたらしい。 三人は本気で、安否を気遣っていた。
生い立ちが自分と似ているからと、番頭のタツキさんは、今まで以上に落ち込んでたんだって。
三人はもう10年以上もみと屋に仕えている。 一番古いタツキさんはもう15年になるらしい。
旦那様の信頼が通常じゃないのも頷ける。 けど、そんな番頭のタツキさんでさえ、あの蔵に近付かない。
「とにかく俺は、待つしかないんだよな、到着を。 ・・・暗部の人達、もう部屋に帰ってるかな?」
あれから閉店時間まで店で働いた。 しっかり戸締りをして、今日のみと屋での仕事はこれで終わり。
三人に挨拶をして、もう自分の家のように馴染んだ、中庭の長屋へ戻る。 明かりはついていない。
自分で焚いたモザイク香なのに、人の気配がしないのがちょっと淋しい。 でもきっと、いるんだろうな。
「ただいま〜。」
「「・・・・・・お、おかえり?」」
「おふたりも。 お帰りなさい!」
「「・・・・・・えっと、ただいま・・・・。」」
えへへ、やっぱり! さすが、もう帰ってたんだ。 あの蔵にはどんな秘密があったのかな?
早く聞きたいけど、昼あんな食事出しちゃったから、もうちょっとマシなのを作ってあげたい。
同じ握り飯だけど、昆布を入れてあげよう! 汁も具だくさんにするぞ! 豆腐あまってたよな、確か。
「はい、どうぞ。 昼よりちょっとだけ豪勢ですよ?」
「「・・・・頂きます。」」
「「ん? コレ美味しい!」」
「へへ、はい。 あ〜ん!」
「「あ〜〜〜んv」」
「豆乳豆腐です。 美味しい?」
「「うん!」」
やっぱり気取らなくていい人達だ。 豆乳で煮込んだ豆腐を、スプーンですくったら食べてくれた。
コレじっちゃんも好きなんだよね! 大豆はイソフラボンが豊富で栄養たっぷり。 実は俺も大好きなんだ。
たったひと手間かけるだけで、豆腐がこんなに美味しくなる。 しかも元は同じだなんて、想像できる?