死人〈しびと〉探し 3   @AC DEF GHI JK




我らが影、三代目火影は老いてなお、お盛んな63才。 この年でまだ元気なのを出せるなんて素晴らしい。
個人的な頼みで呼び出されたら、まず三代目の情人のトラブル、その後処理だと思って間違いない。
いくら暗部が火影直属の部隊だからと言っても、私的に動かすのはどうかと思う。 ご褒美は美味しいけど。

ボクが所属する暗殺戦術特殊部隊は、火影様の選抜部隊。 直属だから火影命令以外は無視して良い。
逆に火影命令には、どんなくだらないことでも従わなければならない・・・・ とまあ、そんな訳。
ここ1〜2年でやっと里も落ち着いてきて、ボク達の出番が少なくなったのは良い事なんだろう。

「おお、来たか。 お主らに頼みたい事があるのじゃ。」
「・・・・・どっかの妾さんが起こした偽妊娠騒動は、もうゴメンですからね?」
「・・・・・二号さんが三号・四号とヤリあって、そのご機嫌取りも遠慮します。」
「ほほほほほ、過ぎた事をいつまでも根に持つのは、男としての格が下がるぞ?」
「「・・・・・・・。」」

命令されれば何でもやるが、反抗の意志も示してみる。 褒美目当てだと思われるのはシャクに触るから。
ああ言えばこう言う。 カカシ先輩もボクも、口で三代目に勝てた為しがない。 まぁ、力でも、だけど。
こんなエロエロ爺さんでも、三代目火影。 木の葉に存在する全ての術を扱える、忍びの中の忍びだ。

弟子の自来也様にも、そのエロさは反映された。 官能小説家を名乗り、今は諜報がてら各国を回ってる。
著書イチャイチャシリーズは空前のヒットを記録。 故四代目も、カカシ先輩も、その小説の熱烈な支持者。
三代目火影のエロ魂は、その弟子から弟子、そのまた弟子から後輩へと、代々受け継がれていくモノなんだ。

「ワシが贔屓しとる中忍が、ちとトラブルに巻き込まれそうでの、応援に行って欲しいのじゃ。」
「・・・・・オレ達暗部の部隊長と補佐が行くような、とんでもない事態でしょうか?」
「・・・・・火影自らがおおやけに“贔屓”とか言わない方が良いと思いますが。」
「あヤツは人懐っこくての。 ウチの馬鹿息子と違って、甘えてくれるし可愛いのじゃ。」
「「・・・・・・・。」」

あんまり信じたくはないが、アレだけの美女を何人も囲っておいて、今は息子と同じ位の年の男を贔屓してる。
その中忍の尻ぬぐいに、暗部のトップツーを動かすと。  火影命令は絶対だ、ボク達に否定権はない。
・・・・・どんな可愛い男の人なのかな、ちょっと気になる。 先輩もボクも、ちまたではモテまくりだ。
目が肥えてるから、悪いけどちょっとやそっとじゃ、男に“可愛い”なんて感情は芽生えないよ?

「今、みと屋に単独で潜入させておるんじゃが・・・・・」

三代目の話では、兄の遺体を探して欲しいという依頼人の為に、中忍を潜入させたそうだ。
死人探し・・・・ まあ、中忍ひとりが妥当だろう。 そのみと屋で、何かあったに違いない。
いつも一日の終わりに砂ネズミ型の式を走らせるらしいが、今朝はその砂ネズミが来なかったと言うのだ。

「・・・・なんで式を砂ネズミに擬態させる必要が?」
「可愛いから、作り方を教えてくれと頼まれての。」
「・・・・途中で猫に食われたんじゃないですか?」
「高性能での、地中をザクザク掘りながら進むように進化させた!」

「普通に鳥にして飛ばした方が早いんじゃないですか?」
「土を掘って進む時点で、もうネズミではないのでは?」
「砂ネズミがイルカの声で報告するのは、ワシも気にいっとるっ!」
「「・・・・・・・・・。」」

三代目の息子のアスマさんは、確か先輩より2つ上。 23才位で、モグラと化した砂ネズミが好きな男。
ほんとに中忍かどうかさえ疑わしい。 まさか贔屓しまくって、ホイホイ中忍にしてしまった、なんてね?
例えエロエロ爺さんでも、木の葉隠れを愛し、民を慈しむ立派な里長。 忍びの命を何よりも惜しむ影だ。
ボク達忍び皆の父親だと公言している。 階級詐称は死を生む、間違っても贔屓なんてしないと思いたい。

たかが一日式が遅れただけで、その影を動かすほど心配させるなんて、どれだけ甘え上手な中忍なのか。
最後に来た式は、ほぼ任務完了の報告だったらしい。 遺体を確認、それに伴い、みと屋の蔵を探る、と。
みと屋は有名な染物屋だ。 死人探しだけに留まらず、それよりも厄介な事に首を突っ込んだ可能性がある。
急激に財を成す人間には裏がある。 確かにこの後連絡が来なければ、火影様でなくても心配になるだろう。