毒を喰らう 6   @AB CDF GHI JK




「コヒル様、先ほどはありがとうございました。」
「ぼく達、コヒル様にちゃんとお礼が言いたくて来ました。」

こう言えば絶対、コヒルは中に入れてくれる。 ホント、子供には甘いよネ? あ、出て来た。
・・・・風呂上がりで浴衣姿のイルカ先生だ。 う〜ん、やっぱり最高に美味しそう・・・。

今はもうしないけど、前はよく、酷い抱き方をした。 “早く殺せよ”と、ムキになって。
あの時のオレが、こんなイルカ先生を見たら、二秒で襲ってたネ。 我慢なんてしなかった。

「三人の秘密だって言ったろ? ふふ、君達は本当に素直な・・・??」
「素直な・・・ なぁに?」
・・・・なぜ、ここにお二人が・・・・
「え! わかったんですか?!」

驚いた。 チャクラを感知できないのに、イルカ先生が・・・ オレ達に気付いてくれた・・・。
コレを喜ばずに何を喜べと言うのか。 オレもヤマトも嬉しさのあまり、コヒルに抱きついた。
“演技はいいから、早く入って下さい”との言葉で、 テンションがガタ落ちしたのは言うまでもない。


「まだ性交の見込みは、欠片もありません・・・・ なのにどうしておふたりが?」
「綱手様から様子を見てこいって言われた。 時間かけ過ぎダヨ。」
「俺もここまでとは思いませんでした。 侍は謎の生き物ですね。 正直、まいってます。」
「イルカさん、ミフネ様は香月 キリトの、どういう死をお望みなんですか?」

ミフネ様がこだわったのは、裏人格を知らせないコト。 それだけは厳守してくれ、だそうだ。
それと遊び上手でも、恋をした事がない香月に、自分から求める相手を作ってやりたい、だって。
ミフネ様が五代目に語った、侍の謎な感情を言葉にするとこうだ。 “恋の成就後に暗殺”

自分の姪の独りよがりの愛が香月を変えられなかったコト =“愛を知らない”になったのか??
まあ、とにかく、香月に自分から恋愛をさせ、その後で殺す、そういうコトらしいヨ。

「火影様は三つ計画を立てられました。 その中でミフネ様のお気に召したのが“衰弱死”です。」
「侍の価値観に合った殺し方をする、そう約束した、としか聞いてないヨ?」
「ちなみにどんなプランだったんですか? いや、参考までに聞いてみたいな、と・・・。」


一つ、抜け忍に幸せはない、とコヒルが悲観して、無理心中。 ・・・中忍に殺されるような奴じゃない。
二つ、悪漢がコヒルを人質にとり、香月に自害を強要。 ・・・人質なんて香月を刺激するだけだ。
三つ、追い忍にコヒルが殺され、悲恋による衰弱死。 ・・・確かに、コレが一番マシかも。

悲恋による衰弱死なんて、あり得ないけどネ? 恐ろしいコトに、侍の中には本当にいるそうだ。
吐き出せない、抑え込んだ己の激情に、食事も喉を通らず、不眠となり、やがて衰弱して死に至る。
ただひとりの事だけを思い続けて死ぬことは、侍達の価値観において、最上の愛だという。

やっぱり謎な生き物だーネ。 後で苦しんで死ぬぐらいなら、一緒に死んだ方がイイに決まってる。

ま、表向きはそうするダケ。 毒はどんな殺し方でも可能だから、イメージさえ出来ればイイ。
残念ながら唾液や愛液では、クローンを脳内に作れるだけのDNAを、取り込めないらしい。
相手から十分なDNAを取り込むためには、精子や卵子を直接体内から摂取するのが一番確実。
男の場合はフェラでもイイ。 が、アノ体を知ったら、相手は突っ込みたくなるだろう。


「ナギに教えてもらうまで、信頼はされてても、香月が自分を好きだとは思いませんでした。」
「毒に、その気配すら感じさせなかったなんて、もの凄い自制心だネ。」
「でも好きになってくれたという事は“恋の成就”だと思って良いですよね?」
「コヒルの気持ちは香月も知っていますから、そう取っていいと思います。 立派な両想いです。」

オレ達はターゲットを“ナギ”にしてはどうかと提案した。 どちらも香月には違いないから。
ひとりで潜入している時なら裏人格を取り込むのは危険だけど、今はオレ達がいる。

ナギは『キスぐらいならしてやろうか』と言っていた。 毒からのキス、それは死への口づけ。
どんなにその気がない奴でも、性的衝動がこみ上げる。 きっと抱かずにはいられないだろう。

「危なくなったら、オレ達が出て押さえつけるから。 安心して性交に持ち込んでイイよ?」
「表の人格は知りませんからね。 その後コヒルは蒸発、追い忍に狩られた噂を流しましょう。」
「そうですね、その方がいいかもしれません。 俺も早く里に帰りたい。」