毒を喰らう 7   @AB CDE GHI JK




方向性が決まったイルカさんの行動は早かった。 ナギは香月が眠りについてから現れる人格。
今日のコヒルの行動は、香月を深い眠りに落としたはず。 コヒルの気持ちを体感して充実しただろう。
香月の寝室の前でコヒルは不機嫌に待機する。 久振りに“遊びに行く”ナギの登場に備えるんだ。
夜中の一時を過ぎた頃、快楽殺人者の人格を持つナギが、読み通り寝室から出て来た。

「うっとおしい気配がすると思ったら、やっぱりコヒルか。」
「ナギ、お前の言う通り襲ってみたけど、香月様にハネつけられた。 ・・・責任を取れ。」

「やっと自由に動けるのに、なんで俺が、お前の言う事を聞かなきゃならない?」
「よけいに欲求不満になった。 ・・・・キスぐらいなら、してくれるんじゃなかったのか?」
「はははは! これは、これは。 ふふふ、いいだろう、ただし後で、だ。  コヒル、行くぞ!」

ナギがコヒルを伴って向かった先は、国境付近の歓楽街だった。 今日の獲物を探しに来たんだろう。
出入りの激しいこの町から、人が何人消えようが、誰も怪しむ者はいない。 確かに狩り場には最適。
コヒルを途中の山中に潜ませて、街の酒場に入る。 ナギは狙いを定めた女に近づき酒をご馳走した。
獲物を釣って馬に乗せ、コヒルのいる場所まで戻って来た。 ナギの言う“遊び”を実行する為に。


「や、やめてっ!! 殺さないで!! お願い・・・ 何でもするからっ!!」
「ははははっ!!  この絶望に満ちた表情!  女、逃げていいぞ?  ほら、逃げろっ!!」
「あ・・あ・・ ひっ!!  だ、誰かっ!  助けてっ!! 助けてぇーっ!! 」
「ははは、捕まったらお前の最後だ。 頑張って俺を楽しませろ?」

山中の雑木林で女を抱き、コト後、撫でてやっていた髪をグイッと引っ張る。 突然の事に驚く女。
ナギはキリトのフリを止め、隠し持っていた小刀で、その髪をブツリと切った。 そして女を逃がす。
女は裸で泣き叫びながら助けを求め、恐怖で上手く動かない足を引きずり、ひたすら山中を逃げまどう。
狂気じみた叫び声が野山にコダマする。 それは獣の遠吠えと、歓楽街の賑わいでかき消された。



ナギはユルリと大太刀を抜き、女を追いかけ始めた。 見つけては斬り、逃がしては見つける。
髪、指、手、胸、腕、少しづつ削られていく女の体。 背中、腹、顔を斬り付けられ足が止まる。
“もう終わりか?”と、最後に走れなくなったその足を、二本まとめて斬り落とした。 笑いながら。

「久しぶりに楽しかったよ。  コヒル、もういいぞ、アレやってくれ。」
「火遁 煉火!! ・・・・同じ香月様とは、思いたくない悪趣味だ・・・・ 水遁 鎮火流!!」
「ふ、忍びのお前が言う事か? ・・・綺麗だな。 前は獣の餌にしていたから、趣がなかった。」

「何が趣だ・・・・。 ナギ。 そろそろ、ご褒美をもらっても、いいかな。」
「ははは、もう痺れが切れたか! ふふふ、侍に二言はない。 こい、コヒル。」

“香月様・・・ あなただと思えばナギでも愛おしい・・・”と、小さくつぶやくコヒル。
ボク達は、刀が振り上げられる気配がしたら、飛びだそうと身がまえた。 だが、その気配はない。
ナギは片手でザクリと、大太刀を地面に突き刺した。 空いたもう片方の手を伸ばしてコヒルを呼ぶ。

“ご褒美だ・・・” ナギは刀から放した手で、コヒルの顎を持ちあげ、噛みつくように口づけた。

「んん、ふ、うんん・・・ はっ・・・。」
「ん、お前は・・・ 不思議な奴だな。 男でもイケる気がしてきた・・・。」
「香月様・・・ あ! んんんっ!!  ううんん・・・・。」
「んはっ、 俺は・・・ん、ナギ、だ・・・ んんん、コヒル・・・・」


ナギがかかった。 後はイルカさんのペースだ。 自分が信じられないと言いながら、激しく抱く。
色忍の唾液には、脳内の性的欲望を刺激する成分が含まれる。 個人差はあるがコントロール自在だ。
唾液はその量の調節で、軽い媚薬にもなり、強力な淫累薬にもなる。 ナギはもう、逃げられない。
三代目が施した禁術“毒”の成せる技だ。 木の葉には、そこまで幅広く調節できるクノイチはいない。

「俺が・・・ 男を抱くなんて、まだ信じられない・・・・。」
「食わず嫌いだったね。  結構良いもんでしょ? ・・・んんん、ん。」
「ん・・・・。 まったくだ。 しかも殺すより、もう一度抱きたい、と思った。」
「いいよ? もう一回抱いてみる? 俺も“香月様”が欲しい。」
「・・・・・残念ながら、時間切れだ。  コヒル、城に戻るぞ。」