再会の時 1   ABC DEF GHI JK




・・・・・・そんな事で涙ぐむな。 お前はカカシとテンゾウの情人だ、もしこれがバレたらどうする。
お前ならサービスの一つや二つすれば、丸く収まると思うが、な。 面倒に巻き込まれるのは御免だ。
同じ部隊長仲間、カカシやテンゾウからの不興を買う事は、極力避けたい。 それでも・・・・ か?


チビ助をどうしても抱っこしたいと演習場に現れた。 全身を冷気で覆わなければならないぞ、と脅しても。
それにもめげず、コチコチになってもいいから触りたいんですっ! と半泣きになりながら訴えてきたんだ。
仕方ないだろう。 イルカが本泣きに入って、そこへアイツらがタイミング良く現れたら、と思えばな。
どう考えても面倒な事になる。 ならいっそ、イルカの望むようにしてやるかと。 チビ助を口寄せした。

ガタガタ青い唇で震えながらもイルカはチビ助に頬ずりしている。 ・・・・・・ど根性は暗部並みだな。
チビ助にスリスリするイルカの頬を覆った薄い冷気が、細かい結晶となってキラキラと舞い落ちた。
・・・・いくら何でもそろそろ限界だろう。 大変嬉しそうではあるが、死んでしまってはそれこそ面倒だ。

「・・・・・・・・・。 全く聞いてないな。」
「ぅぅ・・・・・・ ぅぅ〜〜〜〜〜 へ・・・・・・ へ、ヘックシュンッ! ぅりゃぁ!」
「・・・・・・・なんだその 謎のくしゃみは。」
「くしゃみの後って、何か言いたくなりませんか? ・・・っおら! とか、・・・とくらぁ! とか。」
「・・・・・・・・・ならんな。」

・・・・・なあ。  お前の気持ちは分かるが、な? ・・・・・・もうそのヘンにしておいたらどうだ?
砕く様な冷気ではないにしても、かなりのもんだぞ? お前がいかに中忍でも、そろそろ耐えられまい。
その凍てついた手じゃ、チャクラも練れないだろうに。 ・・・・・おれは、そういう事は良く分からんが。
可愛いと思うようだな、見てくれが。 だがチビ助は、れっきとした口寄せ獣。 しかも獰猛な肉食獣だ。



「「イルカッ!!  やっぱりここだった!!」」
「あ、カカシさん、テンゾウさん! ・・・・・へ・・・・ ヘップシン! ・・・・ったぁっ!!」
「「・・・・・・・・・・。」」
「・・・・・おれは止めたぞ。 ・・・・・・・一応な。」
「見て下さい、これっ!! やっと・・・・・ やっと・・・・・ へ・・・・きしゅんっ こぁあっ!」

「カオル、悪いけど。 チビ、しまってくれる?」
「イルカも。 風邪引く手前じゃないですかっ! ほら。」
「だって、やっと・・・・・ ずず・・・・・」
「「だってじゃないのっ! ご挨拶は?」」
「・・・・・・うぅ・・・ カオルさん、ありがとうございました。」

・・・・・・・ああ。 もう来るなよ? チャクラの無駄遣いだからな。 とはいくらなんでもさすがに言えまい。
聞いた時は驚いた。 あのカカシとテンゾウが、だ。 ・・・・二人ともおれと同じだと思っていたからな。
おれ達がそれを持ってしまったら、弱点になると知っているくせに、誰か一人の情に絆されるなどとは。
二人いれば守るのも容易い、という事だろうか。 そういう心理もよくわからんな。 ・・・・・ふっ。




チビ助というのは、おれの口寄せ獣の白い熊の名前だ。 地上最悪の獰猛さを誇る白熊とは、少し違う。
チビだ。 だがその獰猛さは、地上にいるグリズリーや白熊となんら変わらん。 見目がチビなだけで、な。
アズサが、カカシとテンゾウの情人となったイルカは動物フェチだと言ったが。 確かにその通りだった。

「・・・・・・・・バイバイ、テディ。 ずず・・・・」
「さらばだ、イルカ。」

「・・・・・・・・・・チビ、お前サ、何回聞いてもアンバランスな声だーネ。」
「仕方ないじゃないですか、チビ太はカオルさんの口寄せ獣なんですから。」
「・・・・・・・・・チビ助だ。」

ちなみにチビ助は、どんな名で呼ばれても返事をする。 契約者がつけた名前だろうが何だろうが気にしない。
はなから名前にこだわりがないようだ。 当人がそういう気なら、おれがとやかく言うのはお門違いだが。
チビ助はおれが契約している口寄せ召喚獣、契約の縛りというのは存在する。 チビ助の場合は声がそうだ。
口寄せ契約は、おれの声が聞こえる範囲でのみ有効で、おれと離れている時のチビ助は、契約の縛りはない。

おれがその名を教えたら。 あんまりだ、可哀想だ、こんなに可愛いのに! と、イルカはおれに切々と訴えた。
だからお前の好きに呼べと言ったんだ。 そうしたらそれ以降“テディ”とチビ助の事を呼ぶようになった。
そのせいかカカシもテンゾウも、好き勝手に呼んでいるが。 ・・・・一応おれが昔につけた名前はチビ助だ。

「くわぁ〜っ!! 破壊的可愛さっ! でも俺のオセロの方が、ぅ・・・・ グシュンッ!! ばらぁっ!」
「ホラホラ、いつでも会えるから。 マジで風邪ひいちゃうじゃないの、モウッ! 帰るよ?!」
「ふふ、シロとクロのチャクラが温かい・・・・ 〈スリスリ・・・・・〉」
「カオルさん、チビ太も。 ボク達のイルカがどうもご迷惑をおかけしました。 じゃぁ、これで。」

「・・・・・・・ああ。 またな。」
「ああ、またな。」

・・・・・・・・・・・やっと帰ったか、ふぅ。 しかし。 なぜわざわざ犬と猫に変化していたんだ??
変化などしないで、即座にチャクラで温めてやればいいものを。 肩の上に吸引している意味も分からん。
どうもアイツらの行動は理解に苦しむな。 だがアイツらもお前と同じで、見目が変わっても本質は変わらん。
暗部の戌猫は飼われてしまってはいるが、飼い主以外の前では立派な里の武器のまま。 獰猛な肉食獣だ。

最近用もないのに、色々な輩がおれを訪ねて来る。 ・・・・お前の見目のせいだとは思うが、な。
その見目に騙されて寄ってくる輩が、本来ならチビ助の餌となるはずなんだが。 里の仲間は食うなよ?
おれの声の縛りの元、その命令はそのまま契約の証となる。 だからおれが命令すれば本来の姿になる。

・・・・だがあのイルカなら。 チビ助のどんな姿を見ても、“抱っこしたい”と言うかもしれないな。
まあ比重からいって、その時はどうやってもチビ助に抱っこされてしまうだろうが、それでも喜ぶんだろう。
・・・・・なんだ? ・・・・そうか、イルカの手はそんなに気持ちがいいのか。 さすが動物マニアだな。