再会の時 12   @AB CDE FGH IJ




三代目から急に招集がかかった。 半日で仕事してこいと呼び出しが。 三代目の命を狙った連中だ。
この前、三人で浸かった雪花の町の近くの雪見温泉の側の隠れ里。 最近できた新興の里だった。
おそらく、大陸一の忍びの里の影を仕留めたら、箔がつくと思ったんだろう。 馬鹿な烏合の衆だ。
放置しておく事も出来たが、雪花の町近く。 復興の道を歩む町を、また巻き込む訳にはいかない。

そういう浅はかな忍び連中の集まりは、いずれ力にだけ訴える、つまらない隠れ里へと変貌する。
そうなる前に。 またあの町の住民を、なんらかの戦いに巻き込む前に、潰しておけとの命令だ。
当然ながら、場所を知っているカカシ先輩とボクが動いて殲滅。 フリかかった火の粉をはらっただけ。

「三代目、殲滅任務完了です。 しかしよく、あの里の連中だってだって、分かりましたね?」
「そうそう、カオルが全滅させたからサ、足取りがつかめなくなったモノとばかり・・・・ ネ?」
「ほほほほ。 ピースがな、どの辺りから来た連中なのかを覚えておった。」
「「ピース?? 猿部隊の新人ですか??」」

「何を言うとる! 北王じゃ。 白熊と言えば“ピース”じゃろうて。」
「「ピース・・・・・」」

またチビ太に新しい名がついた。 三代目はカオルさんの口寄せ獣を、ピースと呼ぶ事にしたようだ。
北王、とも呼んだな・・・・。 やっぱり“チビ助”では、三代目も可哀想だと思ったんだろう。
昔カオルさんが、その場で適当に付けた名前らしいから。 でも雪花の町の人達が呼んだ、北王。
この名が、本来の姿に戻った時の名に、一番相応しい気がする。 とてつもなく高位の口寄せ獣だから。

「ところで三代目。 オレ達のイルカが受付にもアカデミーにもいないんだケド?」
「なんじゃ、家に帰っとらんのか??」
「・・・・・・・任務じゃないようですね? という事は・・・・・」

「「演習場だ・・・・・・。」」




イルカがオコジョ軍団と遊んでいる隙に、カオルが言った。 触るだけなら問題ないんだがな、と。
アイツは主語がたまに抜けるから、少しの間考えたケド。 抱っこの手をチビがかいくぐったコトだ。
ヨジヨジとカオルに登り、ベストの中に納まったチビからその答えが得られた。 “食べてしまう”だ。

抱っこするというコトは、自分の胸の近くに抱きよせる、というコト。 つまり人の心臓の鼓動に反応する。
氷河一族は、心臓の音がほとんどしないらしい。 だからあの獣は代々氷河一族に飼われていたんだって。

血継限界で氷遁を操る一族だから遺伝だ、って本人は言ったのヨ。 長年冬眠してても平気だったしネ?
冗談交じりにそう聞いてみたらカオルは、あの人を小バカにしたような鼻笑いの後、“まあな”と言った。

ソレを聞いて、テンゾウもオレも心底ホッとしたヨ。 だって、チビはイルカの頭の下敷きになってた。
オレ達が先にイルカを頂上に向かわせたんだヨ? 楽しそうなイルカについ飛ばしてやったケド、大バカ。
もしオコジョまみれのイルカがうつ伏せになってて、さらに心臓付近にチビがいたら、食われてたんだ。
今もあの黒豹がイルカを見守ってる、そんな気がするヨ。 動物遭遇ラッキー運がついてるよネ、絶対!


「アー 絶対暗部の演習場だヨ・・・・ “チビを抱っこ”を実践しに行ったんだヨ・・・・」
「カオルさん、よもや氷遁でイルカの心臓を凍らせてたりしませんよね、カカシ先輩。」
「・・・・・・カオルの氷遁は血継限界だから、イルカにはチャクラ防御出来ないしネ・・・・」
「ありったけのチャクラを溜めながら向かいましょう、ホカホカの生カイロで。」

ビックリしてたケド、それでもイルカは諦めきれなさそうだったのヨ。 一応触るには触ったもんネ。
どうしても抱っこしたいと言ってたし。 思いっきり頬ずりもしたいんだろう、なにしろあのサイズだ。
捕食用の擬態だ、アレは。 ひ弱そうなフリして獲物をおびき出す為の。 で、襲いに来たヤツを食う。

・・・・・イルカ、アイツは高位の口寄せ獣なんだヨ? あの山で恐れられていたんだヨ?
あんなちっこい獣なら、そこらの忍びがちゃんと調査出来たはず、その事実をすっかり忘れているよネ。
あの時あの姿だったのは、カオルの声の縛りがあったから。 偶然にも頭の下敷きになったからだヨ。
チビは食べてしまわないように気遣ったんだ。 全部が・・・・ ホント、全部が偶然だったんだからネ?!

「「イルカ・・・・ 生きてて〜〜〜〜っっ!!」」

よし、イルカがすぐオレ達に喰いつくように変化するぞ、オセロに。 頸動脈の上に貼りつこうっ!!
イルカが凍ってなくても、演習場からは連れ出そう。 あのままじゃイルカの熱意にカオルが折れるっ!
イルカの“チビを抱っこ”の野望は、並大抵の決意じゃない。 寝言でいつもシミュレーションしてるし。
もしチビを抱っこさせてたら、猿部隊長を私事で動かしたってコト。 間違いなく木の葉の猛獣使いだヨ。

コト動物絡みの時は、いつもオレ達をハラハラドキドキさせてくれるイルカ。 でもスゴク楽しい。
イルカがとるだろう行動は手に取る様に分かる。 でも時々その予想を思いっきり越えてくれたりネ。
たくさん殺して来ても、怪我をして帰って来ても。 そんなイルカといるとネ、毎日が楽しいんだーヨ。

「「変化っっ!! イルカ〜〜〜〜〜ッ!!」」

頼むから、オレ達が行くまで耐えててネ?! 仮にも中忍なんだから・・・・ カオル加減してろヨ?
イルカの心臓が凍えて一秒でも止まったら・・・・ せっかく再会したチビの毛を全部刈ってやるっ!




イルカは全然こりてません。 テディを抱っこ出来て大満足です。 心配症のオセロコンビでした!   聖