再会の時 7
@AB
CDE
GHI
JK
さすがカオルさんですね。 イルカのこんな温かい涙を見ても動じないなんて、全くもって冷血漢だ。
まあ、誰かを特別に愛さなくても、里を愛してるんだから、カオルさんの中に愛情がないわけではない。
それは一個人に向かわないというだけで。 ある意味では、広すぎる愛情だとも言えなくもないね。
行動も分かり易い。 国主だろうが上層部だろうが気にしない・・・・ 三代目の命令しか聞かないし。
三代目直属の部隊、暗部にとってはこれほど信用出来る人間はいない。 本人も引退はしないと言ってる。
カオルさんは、二度目の自分の命は木の葉隠れの為にあるのだ、と思っているんじゃないかな・・・・。
ボクもそうだった、カカシ先輩も。 でも・・・・・ 温かいイルカを見つけたんだ、もう元に戻れない。
こうやってカオルさんの事で泣いてるイルカを見ていても、温かい。 どこにも行かない様に繋いだ手。
ふふ、ずっと手を握ってるんだよ、カカシ先輩とボクで。 泣いてもイルカは振りほどく事はしない。
ボク達の手ごと、頬に持って行って涙を抜く。 つい、愛おしくなって涙を吸っちゃったりしたりね。
「・・・・どうでもいいが。 拭いたり舐めたり吸ったり、忙しいな、お前ら。」
「「・・・好きでやってるからほっといて。」」
「俺、嬉しいですよ。 ここで少しでもカオルさんの役に立てるなんて・・・・ スンスン・・・・・」
「・・・・・・・役に立つかどうかは知らんが、三代目からの指示だからな。」
「「イルカ、一緒に山頂に行こうね? 連れてってあげる。」」
「・・・・・・・・・・・おれも行くんだが。」
そうだったのか。 そうとう危険な獣、いくらイルカが大の動物好きでも、何が起こるか判らない。
ボク達は本当に護衛任務だったんだ。 高位の召喚獣だと聞いた三代目は、念の為にボク達を就けた。
忍びを襲うぐらい危険な口寄せ獣が山頂に棲みついているのなら、狩れ。 ・・・・・そういう事だろう。
もちろん、イルカに気付かれずに。 誰の依頼でもないから、あえて任務だと言わなかっただけだ。
任務だと言うと、イルカは張り切っちゃうからね。 それに国外に出るのが大好きなんだよ・・・・
この前も、文鳥に変化したアズサさんが一緒じゃなかったら、寄り道して大変な事になってたと思う。
建前は木の葉の忍びとして活躍したい、きっと本音は、見た事もない動物達とたくさん出会いたい、だよ?
動物達がたくさんいる山中は、イルカにとって魅惑の宝庫。 もし二人だけにしたら結果は目に見えている。
イルカはあっちへチョロチョロ、こっちへチョロチョロ。 カオルさんは有無も言わさず狩るだろう。
で、イルカはビービー泣いて、カオルさんが不機嫌になる・・・・ 無意識に怒気を漏らすかも・・・・
カオルさんの怒気は要注意だ。 何も考えない人だから氷遁を抑える事をしない。 凍っちゃうんだ。
でももし・・・・ イルカの説得に応じれば、木の葉の忍びと契約してくれる召喚獣になるかもしれない。
そこまで強い獣なら、出来るだけ捕獲したいと三代目は考えたはずだから。 あくまで殺すのは最終手段。
三代目の命令しか聞かないカオルさんだけど、調査を直接依頼された。 里の為だからと、動いたかも。
帰還の命令を出しても、ついでにと、さっさと狩ってしまったかもしれない。 雪花の町の人の為に。
「・・・・・・なんだかんだで、この町の人の力になりたいと思ってるんじゃないですか、カオルさん。」
「・・・・・・・いつまでも過去に捕らわれている意識を、変えてやりたいとは思うがな。」
「自分達も同じ事をしたら、それこそ同類だーヨ。 いつかこの町の人達も気付くといいネ・・・・・」
「うぅ・・・・・ わぁ〜〜〜ん!! カオルさんっ! 俺、どんなコがいても説得しますからーーっ!」
「・・・・・・泣くか、はりきるか、どっちかにしろ。」
「「まあ、まあ。」」
三代目、カオルさん待機の指示は成功ですね。 そしてその望み通りに、ボク達も動きますからね。
・・・・・・・計略家の狸だとは知っていたけど。 毎回毎回、腹立つなぁ。 でも褒美もあるか。
雪見温泉というのは実在してる訳だから、口寄せ獣の捕獲任務が完了したら遊んできてもいい、って事。
そうですよね、カカシ先輩? ・・・あれ?? これも計略ですよね、タダ働きの為のご褒美・・・・ 狸めっ!