再会の時 2   @BC DEF GHI JK




この古狸め! 三代目から呼ばれた理由はもう知っている。 イルカが嬉しそうにボク達に報告に来たから。
“アカデミーが休み中に行ってみてはどうじゃ?”と、三代目からスパ施設のチケットを貰ったらしい。
イルカは動物も大好きだが、温泉も大好きで、当然銭湯も大好き。 ようは、動物好きで入浴好きな青年。

思いがけずツルツル、ホカホカと美味しそうになってくれるイルカ、ボク達としては非常に嬉しいんだけども。
あの三代目がそんな無料券をタダで寄越すはずはないと知っている。 カカシ先輩もボクも、ピンと来た。
よくよく見てみればそのスパ施設は、里内のスパ施設じゃないどころか、火の国国内にある温泉街でもない。
思いっきり他国、どう考えてもそれとは知らせずに働かせる為の、ボランティア任務のチケットだった。

「この狸爺っ!! イルカ単独の里外任務はもう就かせなかったはずでショ?!」
「仕方なかろうっ! あ奴の動物好きは何かと役に立つのじゃ、平和的解決策なのじゃっ!」
「む。 ・・・・では当然、ボク達も一緒に行きますよ? ナルトの未来の担任の護衛として。」
「よかろう。 人柱力ナルトにも無償の愛情を注ぐであろう教師を、しっかり護衛して来い。」
「「御意。」」

そう、今それが三代目の構図の一つ。 九尾の人柱力、渦巻ナルトに人としての無償の愛情を与える事が。
戒厳令が敷かれているが、ナルトの中に九尾が封印されているのは、里の誰もが知っている事実だから。
里の一般人は、ナルトに対しての恐怖と憎しみを隠しきれないでいる。 だからこそイルカに任せたいのだと。

これは立派な交渉条件になる。 未来のナルトの担任に、何かあっては困るでしょう? っていう交渉のね。
・・・・・・まあ、計略家の三代目の事だから。 ボク達が抗議するのは計算に入れて呼んだんだろうけど。



という訳で。 火の国で、祝日が5日間続くパッピーデイズと呼ばれている五連休でも、ボク達には関係ない。
まあ、里に住む一般人や、忍者アカデミーは火の国の祝日を義務付けているから、イルカの先生業はお休み。
そこのところを上手く三代目に使われそうになった。 何が“ナルトの未来の担任に怪我させるでないぞ”だ。
自分で餌をまいておいて。 アカデミー教員になったからと言って、油断も隙もあったもんじゃない!

「全く! 最近では書類整理も手伝わされている、って言うじゃないっ!」
「そんなニコニコしてないで、少しは抗議すればどうなの、イルカっ!」
「だって俺が三代目の役に立ってると思うと・・・ 嬉しいんですもん!」
「「そんなだから狸に、いいように使われるのっ!」」

「俺もお二人の様に直接力になれれば良いんだけど。 暗部なんて俺、絶対になれっこないし!」
「そ、そんなの・・・・・ チャレンジしてみるまで・・・・・ 分かんないじゃないの・・・・ 多分・・・・」
「上忍でも暗部でも・・・・ イルカの将来までは拘束しませんが、命がいくつあっても足りないと・・・・」
「ぷっ! 冗談です! 俺は教師になりたかったんですから。 暗部にチャレンジすることはありませんよ!」

「「・・・・・・・・・教師はイルカの天職だからね?」」
「はいっ! 俺、たくさん愛したいっ! アカデミーの子供達や、三代目、そして俺のオセロを!」
「「うん、オセロは特に愛してあげて?」」
「ふふ、もちろんですっ!」

これだ。 自分に出来る事は何でもしたいと、ボク達がいくら言ってもここだけは譲らないんだよ、イルカは。
ボク達の教育の成果で、誰かれ構わず情を垂れ流す事は少なくなったけど、その分笑顔のニコニコ度が増した。
イルカの怒っている顔を知っているのは、アカデミー生ぐらい。 ・・・・でもこれもすぐ、照れ笑いに変わる。
にじみ出る優しさと愛情は、どうやっても隠せないみたい・・・・ 確かにナルトには、必要になる愛情だね。

アカデミーや受付でも、やっぱりにじみ出てるんだよ、愛情が。 割増し笑顔のイルカは忍びらしさゼロ。
特に受付では。 前にもましてニコニコ度が上がったイルカが座る任務受付所。 用もないのに来るんだよ。
誰がって、暇を持て余しているお爺ちゃんお婆ちゃんが。 雑談相手と化しているんだよね、まるで。

里の任務受付所は、任務依頼を受け渡しする所だ。 決して、ジジババ専用井戸端会議の詰め所ではない。
九尾襲来の時でさえ既にお年で戦力外、隠居生活をしていたはずの引退した忍び達まで雑談しに来る始末。
イルカはニコニコと人の話を楽しそうに聞くから、若かりし頃の武勇伝をこれでもかと強調して話すんだ。
おまけに三代目も受付に座っていれば、もうそこは小さな病院の待合室かと思うほど、ジジババまみれになる。


「このスパ施設のチケットは、三代目がお婆ちゃんから貰ったモノなんですよ。 で、三代目が俺に。」
「ふ〜ん。 三代目はそれに関してオレ達にナニも言ってなかったよネ? お婆ちゃんねぇ・・・・」
「ちなみにイルカ、そのお婆ちゃんって、木の葉在住のお年寄り?? 引退した元クノイチ??」
「いえ、里であまりお見かけした事はないですね、そう言えば。」
「「へーーーー。 (めちゃくちゃ怪しいっっ!!) 」」

なんでもそのお婆さんは最初、三代目に良かったらどうぞと、手渡したらしい。 自分は行けないから、と。
それって単なる太っ腹か、三代目をおびき寄せる為の餌か、そのどちらかしかない。 もし後者なら罠だよ。

・・・・・・ちょっと待て、考えろ。 確かにボランテアチケットだと思った。 そうですよね、カカシ先輩。
三代目の事だからきっと。 イルカを動かせばボク達がもれなくくっついて行く、と踏んでたんですよね。
・・・・・だったら十中八九、後者じゃないですか! 自分に張られた罠の中へボク達を向かわせたのか?!

今現在、イルカは何も気付いてない。 ただ単純に他国のスパ施設に大喜びしているだけ。 木の葉の古狸め!