再会の時 5
@AB
CEF
GHI
JK
お前ら、この一年ですっかり柔軟されていないか? 角がとれたというかなんというか・・・・・。
まあいい、とにかくだ。 イルカの力を借りなければならないらしい。 おれは待機してろとの指示だ。
雪花の町の町長に頼まれたんだ。 もともとの抹殺任務は完了していたから、特に問題はないんだが。
一応、少し調べ物をして帰ると三代目に報告したら、イルカを行かせるから待機していろと言われてな。
・・・・ん? おれの任務か?? 三代目をおびき寄せようと罠を張ってた奴らを全員始末した。
?? スパの無料チケット?? ・・・・・・・ああ、そう言えばそれがおびき出す口実の様だったな。
あの建物がそうだったのか、一緒に潰しておいたが。 行きたかったのか? 仕掛だらけだったぞ?
この何もない北の土地なら、火影が油断すると思ったのだろうがな。 おれはその抹殺任務で来たんだ。
それらしい施設は確かに建っていた。 ああ、働いている人間もいたが、おれの任務は全員の暗殺だ。
結界や何かしらの忍術を使えば火影にバレる、だからなのか全部が手作りの仕掛けだったな。 ふっ。
残念だがあそこに行ってももう何もない。 ・・・・天然温泉?? ああ、辺りには湯線があるな確かに。
「じゃぁ・・・・ これの元々の目的だった罠は、もうカオルが潰してた、ってコト??」
「でもなんでイルカを? いや、三代目はここで合流させるように仕向けたんでしょうか??」
「・・・・・それはおれが聞きたい。 イルカに登らせろと、式の返事が来たんだ。」
「?? 登る?? え・・・・ 俺が?! どこに??」
「「「・・・・・・・・。」」」
なんだ、本当に何も聞かされていなかったんだな・・・・。 その抹殺任務が終わって帰ろうとした時だ。
この町の住人がゾロゾロとその施設のあった山に登ってきたんだ。 狩り残した敵かと思い、一人を捕縛。
そうしたらそれがこの町の町長だった。 町長は木の葉の暗部を知っているらしく、ぜひ雪花の町にと。
長年続いていた北王〈ほくおう〉の叫びが聞こえないから調べて来て欲しいと、直々に調査を頼まれた。
「北王は、あのスパ施設のあった山の頂上に棲みついている巨大な獣だそうだ。」
「それでイルカか・・・・ でも“北王”なんて名前までつけてるの? たかがデカイだけの獣に??」
「いくら辺鄙な町でも、忍びを雇うなり、力を合わせて狩るなり、いくらでも方法が・・・・」
「北王の縄張りに足を踏み入れて帰って来た者はいないらしい。 忍びと言えど、な。」
「「「?!」」」
町長は何度か他里の忍びに、どんな獣なのか確かめてほしいと依頼をしたそうだが、誰一人戻って来ない。
終いにはこの近辺の隠れ里から、雪花山の頂上への調査は受付ない、と依頼を断られる様になった。
そこで予想を聞かされたらしいんだ。 忍びが易々と殺されてしまうのは、高位の召喚獣なのでは、と。
どんな獣なのかは気になるが、頂上にさえ近付かなければ食われる事もないと、調査は断念したらしい。
そしてその生き物を北の獣の王者“北王”と名付け、皆に決して頂上に近付かない様に呼びかけた。
その姿を見た事がないのに、なぜ獣なのかと判断したかというと、鳴き声が獣のそれと同じだからだ。
北王は山の麓近くまで人が近づくと、必ず叫ぶらしい。 これ以上近寄るな、という様にな。
おれが抹殺任務を完了させるまで、けっこう頻繁に鳴いていたらしいんだ。 あの施設のせいだろう。
北王の棲む山の麓に、あんな仕掛のある施設を建て、更に人までいたからな。 でもそれが急に止んだ。
町長は、そんな事は今迄なかったと勇士を募り、山に登ってきたんだ。 そこでおれに会い、こう言った。
“危険だから木の葉の忍びにだけは頼みたくなかったが、あなたは北王に気に入られたのかも” と。
「さっきの人さ。 イルカが場所を訪ねた時、普通に教えてくれたよネ? 調査が終わってないのに。」
「雪見温泉とやらに入って、そのまま頂上を目指したかもしれないのに、見て見ぬフリ、ですか。」
「親切なようで親切でない、という事ですか?? そういえば木の葉だと知ったら急に・・・・」
「・・・・この町の人間は、元氷の国の民だ。 自分達を見捨てた他国の人間に対する恨みが根強い。」
「?? だって・・・ それとこれとは・・・・ そんなの関係ないじゃありませんかっ!」
「他国の旅人がどうなろうが知った事ではないのだろうな。 同じ事をしているだけだと思っている。」
「「・・・・・・・・。」」
「・・・・そんなのは・・・・ わからないけど・・・ でも、間違ってると思うっ!!」
・・・・・っふ。 そうだな、おれもそう思うぞ。 無くなってしまった国の事など気にする必要はない。
国を守る隠れ里が・・・・ 力及ばなかっただけだ。 恨むなら・・・・ 自国の隠れ里の忍びを恨む事だ。
おあつらえ向きに、ここに一人しぶとく生き残っているからな。 ・・・・ん? なんだ、知らなかったのか?