あしらうは毒花 10
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イルカがオレ達のコトを、心底心配してくれているのは分かる。 自惚れでもなく肌で感じる。
これで少しは安心した? 我儘でもなんでも、オレ達の房術使いと組みたいんだヨ、イルカと。
絶対に生き残るヨ、イルカを狂わせたくないから。 この自信がどこから来るのか考えてみて?
何の為に生き残ろうとするのか。 そして、なんでこんなに同行するコトにこだわるのか。
本当にただ一緒にいたいだけの我儘なら、口だけにしておくヨ? でもオレ達は本気、今回が最後。
悪いけど緒方とはコンビを解消してもらう。 で、オレ達と組んでヘマをしたら、一緒に逝くんだ。
本気でヤバイ時、オレ達三人で死ねる・・・・ コレってサ、むちゃくちゃ贅沢な望みだよネ。
羽多宵を囲う決意をした時、テンゾウとふたりで誓約交換をした。 死ぬ時は一人で、道ずれはなし。
でも羽多宵は木の葉の忍びだった。 一番に何を思ったと思う? 連れて逝ける、って思った。
それはテンゾウも同じ、オレ達はコンビを組んで長い。 それこそ、生死を共にして来た相棒だから。
イルカの様に房術で相手の記憶を覗けないケド、お互いの考えは誰よりも分かってるつもり。
なにがどうなって花街に籠ろうと思ったのか。 受付ヘルプ忍や先生見習いなコトを忘れたの?!
そんなコト、里が許すハズないじゃないの。 その前にオレ達が認めないヨ、冗談じゃない!
せっかく手に入れたイルカを、なんで廓に潜伏させなくちゃならないんだ、ヤメテよネ!
ま、こうやって混乱している房術使いを見たら、三代目は即、オレ達を就けてくれるだろうケド。
オレも思った様に、テンゾウも絶対思ってるはず、イルカが混乱してる、これを理由にしようって。
棚ボタだけどこれでイイよネ? 口に出すと後で必ずイルカにバレちゃうから、相棒に目くばせ。
イルカを安心させて組みたかったオレ達にとって、結果オーライ。 思わずクスリと苦笑いした。
「イルカ、殺されてもイイなんてサ・・・・ 簡単に言うもんじゃないヨ?」
「そうそう、特にボク達の前ではね?・・・・ 暗殺が大得意の部隊の長だし。」
「ふたりに籠絡された時、そう思ったんです。 本当に。」
「ユキジ先生が、記憶でなく相手の感情を自分の中に入れたら、房術使いは死ぬ、って。」
「「・・・・・。」」
「その通りだなと思いました。 俺の生きる意味が変わったから、切り替えができないんです。」
「「それは・・・・。」」
イルカと房術は切っても切り離せない。 忍びとしてのイルカの誇りがあるから。 そうか。
房術はイルカにとって唯一の武器、いつでもオレ達の為にその武器を行使すると、そういうコトか。
オレ達がイルカを守りたいように、イルカもまたオレ達を守りたかったんだ。 唯一の武器で。
・・・・・忍びが任務より優先したいモノを見つけてしまった、だから混乱してしまったんだネ?
ははは、なーんだ、オレ達と一緒。 羽多宵を・・・・ イルカを望んだ時のオレ達と同じ。
オレ達も緒方に言われてハッとした。 望んでもいいんだヨ、命を懸けて戦って来た忍びの報酬を。
イルカだってそうでショ? 命をむき出しにして来たじゃない。 堂々と里に請求していいんだヨ。
フフフ、混乱して・・・・ ナニもかも忘れてるみたいだネ、オレ達の里はどこ? 木の葉でショ?
やるコトは他里の忍びと変わらないケド、忍びの意志を優先してくれる里。 生きるのも死ぬのも。
“道具でも意志のある道具であれ、ならば意志のない道具になど、負けはせん” コレ三代目の言葉。
だからオレ達木の葉の忍びは選んでいいんだ、自分の意志で。 生きようが死のうが自由にしていい。
・・・・・・・なんて偉そうに言ってるケド、オレ達だってチョット前は同じ状態だった。
でもホントにヤメテよネ? 殺されてもイイ、なんて・・・・ 今すぐヤリ殺したくなるじゃない。
アー もう! 任務中に盛るなんて、ホントらしくない。 オレ達サ、イルカに煽られっぱなしだネ。
「・・・・・・木遁っ!四柱家の術っっ!!」
「う〜ん、やっぱ便利だねぇ、木遁は。」
「わわわ!! 凄いっっ!! 家が・・・・ これここに建ててあげるんですか?」
「「まさか。 任務は殲滅。 これは即席愛の巣v」」
「???」
「「殺されてもいいなんて言った、イルカが悪い。」」
「もう、チャクラの無駄使いして! さっきみたいに、俺、別に屋外でもいいのに・・・・。」
「「この・・・・・ またそうやって煽るっっ!!」」
「俺の暗部・・・・・ 部隊長、補佐・・・・ いつでも殺して?」
「「・・・・・・・・くそっ! もうキレたっっ!!」」
コレだ。 あんまりオレ達を舐めんじゃないヨ? 教えない、口には出さないから覗けないでショ?
さんざん振り回されたオレ達と、同じ思いをすればイイ。 今はまだ、混乱しているだけのイルカ。
しばらくすれば気付くでショ? ナニかあったらその時は・・・・ オレ達を殺すのはお前だ。
オレ達の息の音を完全に止められるのは敵じゃない。 オレ達を生かすも殺すも自分次第なんだと。
「ぁぁ・・・・ ん、 赤く・・・・ アザが、嬉し、い? なん、で・・・・ んんっ!」
「イルカ・・・ もっと見て、オレ達の、記憶を・・・ 誰の為に生き残る、のか・・・ くっ!」
「毒の・・・ ない花は・・・ いらない・・・ はっ、はっ、あぁぁっ!! もう、あ、あっ!」
「それでいいんだよ、ん・・・ ボク達に毒は無効・・・ ただの花でいて、いい ・・・うっ!」
オレ達がいなければ、房術使いに戻れないなら、それはそれでイイじゃない。 受け入れなヨ、ネ?
それすら一部にすればいいんだから。 オレ達もイルカの一部。 そしてイルカもオレ達の一部。
完璧な駒になんて、なる必要ないんだヨ、オレ達はどうあがいても人だ、職業が忍びというだけの。
他人と一つになりたいだなんて、こんな気持ち他の生き物にある? オレ達が人っていう証、でショ?
人の過去を知らぬ間に覗き見る房術使いは、一歩外に出れば毒の花だけど、オレ達にとっては違う。
舐めんじゃない、って言ったでショ? オレ達、毒の耐性はつけてるの、だから羽多宵もシンも無効。
他人から見れば毒の花、オレ達にとっては甘い蜜。 房術使いじゃなくても、イルカ自身がオレ達の花。