あしらうは毒花 13
@AB
CDE
FGH
IJK
惜しい。 実に惜しい。 あの最高級の糸の仕入れ先でもある蚕村が、ならず者に襲われたらしい。
その価値が判らぬ者にとっては、“土地代を拒んだ生意気な村” として映っただけかも知れないが。
あの山岳地帯を根城にしていたどこかの忍びが、逆らったらこうなると見せしめの為、滅ぼしたらしい。
村は跡形もなく焼かれ、今ウチが保有しているモノのみを残して、あの糸はこれで文字通り幻となった。
ウチの大旦那様は、職人出身の叩き上げ、職人の立場に立って物作りをする方だ。 こだわりがある。
せかしては良い物が出来ないと、村人が作るに任せていた。 そしてふたつとない糸が生産される。
そういう待遇だった。 鏡屋お抱えの村としての誇りからか、忍びに屈しなかったのかもしれない。
要人の誰もが残念がるだろう、あの糸がなくては反物を織る事は出来ない、着物を仕立てる事も。
この国では大津家の夢美様が、一番嘆かれるだろう。 ワタシ達はそれに代わるモノを作らなければ。
その前にせめてあの糸を愛する方々の為に。 そうすれば残念な報告も、少しは和らぐと思うから。
夢美様は本当に価値のあるモノを見分けられる方、商人がこんな事をするのは間違いかもしれないが。
「あの・・・・ 任務依頼をお願いしたいのですが・・・・・。」
「ようこそ、木の葉の里へ。 鏡屋・・・・ あの鏡屋さんですか? 呉服問屋の?!」
「はい、ですがこれは個人的な依頼でして・・・・・ 書にお目を通して下さい。」
「・・・・・・・なるほど、お任せを。 すぐに吉報をご報告できるかと。」
さすが木の葉の里だ、思い切って訪ねて良かった。 織の国は蚕村、そこを襲撃した忍びの暗殺。
夢美様に残念なご報告をする時、鏡屋が仇を討っておきましたと告げれば。 ますますの御贔屓を。
それは他国の要人に対しても、信頼と信用を頂ける事。 そしてワタシは、村に対しての敬意から。
すぐに吉報とは。 なんとも力強い言葉だ。 きっと大旦那様もお喜びになるに違いない。
「恐れ入ります、ぜひ木の葉に頼みたいと、書簡を預かってまいりました。」
「ようこそ木の葉の里へ。 これは・・・・ 大津家の・・・ 夢美様から?!」
「どうしても弔ってやりたいからと。 早ければ早いだけ、報酬を上乗せするそうです。」
「・・・・・お任せを。 明日には伝令を出せるかと。」
お着物が大好きな夢美様。 他国であっても、織の国の服飾情報は、いつも勉強していらっしゃる。
そこへ飛び込んで来た蚕村の襲撃事件。 夢美様のお気に入りのお着物が、そこで紡がれた糸らしい。
忍びが相手、なんの抵抗も出来なかっただろう村人達を憐れんで、他国に刺客をやる決意をされた。
小さいながらも、あんなに素晴らしい糸を生産できる所は他にないと、他国の村人の為に弔いを。
私達大津の城の者は皆、美しく、けれど人を見かけで判断しない姫、そんな夢美様が大の自慢。
私のようなたかが下働きの女中にも、こんな大役を任せて下さった。 木の葉隠れへの暗殺依頼を。
さすが木の葉の里だわ。 明日には結果を出せるだなんて、夢美様もさぞお喜びになることでしょう。
「三代目、謀らずとも “嘘から出たまこと” になりましたね。 しかもダブルで。」
「うむ。 緒方に細工をさせるか。 さすがのワシも、双方から依頼が来るとは思わなんだ。」
「ところで任務報酬はどちらから? 夢美様? それとも鏡屋ですか??」
「双方からに決まっておる。 トリプルじゃよ、雲とも良い取引が出来るでの。」
「・・・・・・さすが三代目。 一人勝ちですね?」
「馬鹿を申せ、これも全ては里の為。 活動資金がなければ忍びは食ってはいけんからの。」
「ふふふ。 では俺は緒方上忍を呼んで来ます。 元相方を。」
「ほほほほ。 頼んだぞ、イルカ。」
「はい! お任せを!」
「さて・・・・ カカシ、テンゾウ、おるか?」
「「お呼びですか、三代目。」」
「雲との取引は任せたぞ?」
「「御意。」」
・・・・もう、この恥ずかしい人達、なんとかして!(爆) 別名、発情期イルカとも言います。(苦笑) 聖